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◇77 狩人の粛清者:反省会

短い話です。

だって、反省会だもん。

 俺はパソコンの前に座っていた。

 今起動しているのは、ビデオ通話ができるアプリだ。

 今日の参加者は四人。名前は、〔狩人の粛清者:反省会〕となっている。


「クソッ、なんであんなガキに負けなきゃならねぇんだよ!」


 男性が一人、ビール缶を叩き付ける。

 机にカツンと甲高い音と共に響くと、苛立った様子の男性が、画面越しに苛立ちを見せる。


「ゲースゲスゲスゲスゲス。そんなの知らないでゲスよ!」


 一方で、少し小柄かつミリタリー風な服装と背景で会話に参加する男性。

 ニヤついた笑いを浮かべるが、少々不服そう。

 それもその筈、同じような目に遭ったからだ。


「でも、負けは負け」


 その事実を突き付けるかのように、大柄で温和な男性が答える。

 その姿に、画面越しで目を鋭くし、額を詰めた。


「岩山、お前だって負けただろ」

「そうでゲス。もし、これが本気だったなら、絶対に勝っていたでゲス」

「それは……」


 言葉を失い、喉を詰まらせる。

 確かに何も言い返せない。

 今回はハンデ戦だった。あのハンデが無ければ、もっと上手く立ち回れていた筈。

 

「だが、負けは負けだろ」

「「「誰のせいだ!!!」」」


 俺の言葉が引っかかったらしい。

 画面越しに噛み付いて来るも、俺はワイングラス片手に軽くあしらう。


「そう、怒るな。別に子供に負けたからと言って、本気だったんだろ?」

「それはそうだがな……誰のせいでこんなことになったと思っているんだ!」

「俺のせいか?」

「そうでゲス。でも、別に悪い気はしないでゲス。ただ、悔しいは悔しい……というより、あの姿……本当にただのプレイヤーでゲスか? 性格が変わったみたいに恐ろしかったでゲス」


 誰一人として、負けたことには悔しくても、子供に負けたことを苦には思っていない。

 けれど、途中で戦闘スタイルが変わったことには疑問も出る。

 筋は良かった。それは元々だ。けれど、それを覆す程、一瞬で変化をもたらしていた。


「なんでゲスか、あの化物は!」

「共鳴者特有のものだな」

「「「共鳴者?」」でゲスか?」


 俺の口から出た言葉は、あまり有名(メジャー)ではない。

 けれど、少し調べれば出てくる言葉だ。

 脳科学や精神学において、その言葉は一般的(ポピュラー)ではないにしても、充分なものになる。


「共鳴者は一般のプレイヤーよりも、より電脳空間に馴染む特徴がある。つまり、アバターとの接続率も高まるから、それだけ強さが極まる」

「なんだよ、それ」

「しかもメンタルブレイクの可能性も上がるからな。気を付けた方がいいぞ」

「気を付けろって言われても、気にしてられないでゲス!」


 確かにそれもそうだ。

 共鳴者と呼ばれる存在は、見た目的には一般のプレイヤーと同じ。

 特徴的なものは薄く、根本から行って、断定が難しい。


「それじゃあズルい?」

「いや、ズルい訳じゃない。あくまでも特徴だ」

「それじゃあ、どうするんでゲスか? 排除するでゲス?」

「そんなことをすれば差別になる。それに共鳴者がいたからこそ、VRドライブやAIシステムは高い比率で進化を遂げたんだ。そんなことをすれば、今現存するインフラやAIシステム全て停止になるんだぞ」

「そ、それは……困るでゲスな」


 共鳴者とは非常に厳粛(シビア)なものだ。

 故に下手に囲うような真似や、非難するようなことはできない。

 むしろ共鳴者特有のDNAを讃えるべきだった。


「それに、メンタルブレイクされても、変な影響は出て無いんだろ?」

「ん? ああ、ログアウトした後に空虚な気持ちには一瞬なったが、嫌な感じはしなかったな。むしろ心地よかった?」

「それはそうでゲス。メンタルブレイク、もっと恐ろしいものだと思っていたでゲスが」

「んがぁ!」


 誰一人として、メンタルブレイクにより、悪い影響を受けていなかった。

 これはとても凄いことであり、好印象を与えたことになる。

 変化の具合はとても良い。俺はそう思うも共に、変化の有無を気にする。


(メンタルブレイクは、直接相手の精神を破壊し、精神間における印象を、一方的に与える。それが善意ならいいが、悪意なら……まあ、今回は影響が出ていない。あの人の……問題無いか)


 俺が独り自問自答していた。

 すると、画面の向こうから一人、鉤爪(かぎづめ)が口を開いた。


「まああのガキ……アキラのことはいい。それより(つばくろ)、ちゃんと礼は弾めよ」

「分かっている。ちゃんと報酬は払うぞ」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 三人の大喝采が聞こえた。

 ヘッドホン越しに伝わると、俺は眉間に皺を寄せた。

 眉根を細め、ウザい顔をする。


「このために悪役を買ってきたでゲス」

「バイト代、嬉しい」

「PvPまでしたんだぜ。臨時報酬も出せよ?」

「分かった。上に報告しておく」


 ここでネタバラシだ。

 鉤爪・内宇田・岩山の三人、〈《狩人の粛清者(ハンターズ・ロウ)》〉は、あくまでも依頼通り動いてくれていた。


 内容は単純だ。プレイヤーにPvPを仕掛け戦闘データと脳波を収集すること。

 それに加えて、問題を起こすプレイヤー相手に勝負を挑み、ペナルティを与えること。

 要は、運営側が調査・自警。両方を頼んでいたのだ。


(今回の共鳴者の騒乱で、多少は快適になるだろうな。後で報告しておかないと……今度は、俺も直接戦ってみたいな)


 浮かれる三人を尻目に、俺はそんな願いを抱く。

 ワイングラスに白ワインを注ぎ、一気に飲み干すと、未だに顔が赤く染まらない。

 肘を突きバカ騒ぎをする大学の旧友に笑みを浮かべると、俺も混ざろうと思った。

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