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◇75 【ユニゾンハート】

主人公のもう一つの固有スキル解放。

※少し過激な表現が描写されますが、ご拝読いただけると幸いです。

 私は【キメラハント】以外の、もう一つのスキルを発動させた。

 その名は【ユニゾンハート】。

 発動できたのはいいけれど、一体どんなスキルなのか。

 私は知らないので、早速確認を素早く取る。



固有スキル:【ユニゾンハート】

条件:自身の能力を最大限に発揮し、強い絆を持つ者の固有能力を使用できる。

説明:感情エネルギーが100%以上になった時、ユニゾンハートの掛け声で発動する。自分自身の能力を最大限以上に発揮し、際限なく成長させ、絆で結ばれた仲間の固有能力を使用することができるようになる。



 今まで鎖でロックされていたスキルが確認できるようになっていた。

 しかもかなり詳しいし、条件が厳しい。

 おまけに書いてあることが全く分からず、とにかく言えるのは一つだけだった。


「つ、強そう……」

「なに言ってるでゲスか。どんなスキルでも、小生達には関係ないでゲス」


 悠長にスキルを確認していると、ヘドロさんは体をヘドロ化させる。

 クールタイムが終わったらしく、液状にしたヘドロが流れてくる。


「このヘドロに触れたら、飲み込まれる。それなら!」


 私は地面を素早く蹴り上げる。

 ヘドロに触れないように、たった一歩で距離を詰める。


「な、なんでゲスか!?」


 あまりにも常軌を逸した動きだ。

 たった一歩で生み出した三十メートル程の空間を埋める。

 目の前にやって来た私を見て、ヘドロさんは恐怖した。


「ゴレイム!」

「んがっ!」


 当然ゴレイムさんもスタンバイしていた。

 腕を振り上げ、私のことを殴りつけようとする。

 当たれば間違いなく大ダメージ必死だ。私は全力で止めようと。片手を突き出す。


「な、なに?」

「ふぅ……助かった」


 私は胸を撫で下ろした。

 あまりにもバカなことだとは思う。

 だけど私はやり切った。左手を突き出すと、ゴレイムさんのパンチを、片手で受け止めてしまった。


「なっ!? ゴレイムのパンチを片手で受け止めるでゲスか!」

「受け止めただけ」

「そうですね。でも、これならどうですか!」


 私は体を捩じって膝蹴りを喰らわせる。

 ゴレイムさんの腕間接に直撃。激痛を与えると、ゴレイムさんは悶絶する。


「んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ゴレイム!? その脚を離すでゲス」


 私はゴレイムさんの腕を関節技で抑え込んでいた。

 悶絶が轟き、絶叫に変わると、私の目の色も変わる。

 それが嬉々としていたらしく、ヘドロさんは危険を感じ取り、ゴレイムさんを助けようとした。


 体を槍のように伸ばし、私のことを背後から狙う。

 間違いなく、これも当たれば貫通する。

 そんなことで負けたくない。痛いのはたくさんだ。

 

私は何か良いものは無いかと頭の中で考える。

ヘドロを一網打尽にして、叩きのめせるもの。

動きを封じれる物って何か無いかなと模索すると、突然HPの総量が減る。


「えっ、なんでHPが」

「……あの減少、まさか!」

「まさかって?」


 観客の中で応援してくれていたNightとフェルノが驚く。

 私にはその姿だけが見えると、右手の中に何かが生まれた。

 それは大きな袋で、肌理が細かく、穴すら開いていない。


「なんで私の手の中に袋が!? でもこれなら」


 ここは発想の転換だ。なんで袋が現れたのかはさておき、ヘドロさんの体が槍として完全構築させる前に包み込む。

 いくらヘドロ状にしても、ヘドロさんはヘドロさん。

 体の一部だけじゃなくて、全体七割を袋の中に収められれば、身動きは取れないのだ。


「よっと」

「んがっ!?」


 ゴレイムさんから離れると、私はヘドロさんの体を袋に閉じ込める。

 突然のことで判断ができなかったらしい。

 驚いてスキルを解除する前に、私はヘドロさんの体を袋に閉じ込めると、口を縛ってしまった。


「これでよし」

「な、なんでゲスか、これは!? くっ、ここから出すでゲス」


 袋が一人でに暴れ出す。まるでイソギンチャクみたいにウネウネする。

 中でヘドロさんが暴れている証拠で、今なら余裕で倒せそうだ。


「降参してください、ヘドロさん」

「降参? 流石にしないでゲス。出られないのなら、スキルを解除して」

「させません!」


 私は袋を思いっきり踏み付けた。

 するとスキルを解除中だったのか、ヘドロじゃない、硬い何かに足の裏が触れる。


「うがぁ、い、痛いでゲスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 ヘドロさんの絶叫。

 悶絶した声が悲鳴のように上がると、ゴレイムさんや周りに居る観客達の目が変わる。


「な、な。止めろ!」

「はい、止めますよ!」


 私は袋を蹴り上げる。

 全力で止めに入ろうとしていたゴレイムさんの拳が袋を伝う。

 声無き絶叫が木霊すると、耳の奥深くをモスキート音が伝う。


 ボキッ!


 骨が砕けるような音がした。

 同時に、袋の中から粒子が飛び散る。

 縛っていた口が軽くなると、袋は重さを失って、地面に落ちた。


「なっ、え、ヘドロ、しょ、うさ?」

「ふぅ、まずは一人」


 流石に卑怯だった。だけどその理性は、体の動きを超越していた。

 一切の躊躇が無く、気が付けば私はヘドロさんを蹴り上げていて、残りはゴレイムさんただ一人になる。


「許さない!」

「許して貰わなくて大丈夫です。私だって、同じくらい怖かったんですから!」


 もう容赦の“よの字”も無い。

 ゴレイムさんの破壊的な拳が私のことを眼前に狙う。

 動きは遅い。だけど拳から伝わる威圧が私を動けなくさせた。


「これで、終わり!」

「そうですね。これで、終わりです!」


 私はゴレイムさんの腕を使った。

 伸ばして腕を道に使い、ゴレイムさんの顎を蹴り上げる。

 靴の爪先でゴツンとされた顎は上を向き、私は容赦なくて、右手を顔にあてがう。


「んがっ?」

「ごめんなさい」


 もう止まらない。止められない。

 私は本気で爪を立てると、指が蟀谷に突き刺さる。

 プロレス技のアイアンクローの比じゃない。

 穴を開けるくらいの勢いで突き立てると、ゴレイムさんの巨体は仰向けで地面に落ちた。


「んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 あまりにも勝負は呆気ないもの。

 私がゴレイムさんの後頭部を地面に叩き付けると、運悪くゴレイムさんのHPとMPが〇になる。

 すると全身が粒子に変わり、その場から消え、私一人だけが勇ましく……も無く残った。


「終わった、よね?」


 場が静まり返っている。

 だけど勝負は決したことを、アナウンスが伝える。


——PvP・スタンダード・ルール。MPブレイクにより、対戦者:ヘドロ少佐・ゴレイムは強制ログアウトされました。よって……Winner:アキラ!!——


 高らかなファンファーレが私の勝利を祝う。

 嬉しい……訳じゃないけれど、体の奥から湧き上がるとてつもないエネルギーに体が翻弄される。


 油断したら勝手に体が動いてしまいそう。

 それぐらいバグのような動きを見せると、私はスキルを強制解除。

 

「【キメラハント】は誰かの強さ。【ユニゾンハート】は想いの強さ。私の力を最大限に発揮して、みんなの想いを手繰り寄せる……か。凄いかも、このスキル」


 私は勝利の余韻に浸ると共に、手を握った。

 とんでもないスキルだと思うと共に、自分が自分で無いみたいだった。

 その証拠に、ヘドロさんとゴレイムさんの姿が無い。恐怖心が膨れ、私は小さくなる。


「私、やっぱりやり過ぎちゃったかな? それに……」


 ヘドロさんとゴレイムさんの恐怖に歪んだ顔。

 今でも離れてくれない上に、周囲の声が聞こえなくなる。


「あ、あの……」

「「「ひやっ!?」」」


 私の戦いを最後まで見ていた観客達は、全員絶句していた。

 目に生気が無く、何故か青白い。

 相当堪えているようで、腰が引けていた。


「あ、あの……どうでしたか?」


 バリアも解けたので、私は話を聞いてみようと思う。

 なにせ、客観的に見えた私のせいで、こんな顔になっているんだ。

 気になって仕方が無く、一歩近付こうとすると、男性が叫んだ。


「ば、化物!」

「ば、化物?」


 確かに私は【キメラハント】が使えるけれど、化物は流石に傷付く。

 表情が落ち込むと、男性は怯えた様子を見せた。


「ああ、ごめんな。えーっと、じゃあな!」

「あっ、待って。えっと、皆さんは……」


 今度は他の人達の顔を覗く。

 すると男性と似たような反応を見せ、怯えた様子で震える。

 体をブルブル強張らせると、私のことをこう呼んだ。


「「「《合成獣(キメラ)》!?」」」


 恐怖に震え、叫んで逃げてしまった。

 全員がバタバタしていたわけじゃないけれど、大抵のプレイヤーやNPCは広場から姿を消す。


「どうして? もしかして、そんなに怖かったのかな?」


 私は独り自問自答をした。

 腕を組んで、恐怖に歪んだ、リボルグさん達の顔。

 もしかして、私が思っていた以上に……自分がゾッとする。


「アキラー」

「フェルノ?」


 そんな私にフェルノは気軽に声を掛ける。

 まるでいつもの私に挨拶するみたいで、ニコッと笑みを浮かべた。


「凄いね、勝っちゃったじゃんかー」

「あっ、うん。一応ね」

「今のスキルはなんだ? どうして私達のスキルを使えた」

「それはその……えっと、ね?」

「「答えて!」ろ!」


 私はフェルノとNightに詰め寄られる。

 なんだろう、別に二人に変化はない。

 もしかして慣れてる? それともわざと? 私は息が詰まりそうになる中、二人の対応に追われた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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