◇72 PvPが終わらない
リメイク前で適当だった部分を詳しくしました。
「今のは……まさかな」
アキラとリボルグ。二人のPvPを最後まで俺は見届けていた。
もちろん、隠れて見ていたので、確かなことは言えない。
けれど、アキラとリボルグ。二人の戦いは、最終的に呆気なく終わった。
(リボルグが負けた……嘘だろ)
正直、リボルグが負けるとは思わなかった。
お互いに死力を尽くしていたのは分かる。それでも、勝利はアキラがもぎ取った。
けれど、アキラの攻撃。あの“技”。俺は胸騒ぎがした。
「もし、あの技が本物だとすれば……あの人の親友の……少し、引っ掛けてみるか」
俺はあまりよろしくない行為をした。
戦いが終わり、周囲からの冷淡な視線にさらされるアキラを脇目に、怪しい行動を続けた。
そう、手元にキーボードを用意すると、カタカタとキーを打ち込んだ。
「えっと、終わっていいんだよね?」
私はリボルグさんを無事に倒した。
だけど気持ちの良い倒した方じゃない。
リボルグさんの倒され方も、本気で命の危機を感じてしまい、見ていた観客達の視線も、少し冷たく感じた。
「やったね、アキラ!」
そんな中、フェルノが親指を立てた。
笑顔で私の勝利を讃えてくれると、少しだけホッとする。
隣に立つNightの目が気持ち悪かったけど、私は気にせずに傍に寄ろうとした。
「おい、アキラ。今のはなんだったんだ?」
「今のって?」
「あの男を、リボルグを一発でKOした技だ。なんだ、なにか隠していたスキルか?」
「ううん、違うよ。アレは普通に……あれ?」
私は異変を感じ取った。
それもその筈、Nightとフェルノ。二人の下に戻ろうとするも、未だにバリアが消えていない。
首を捻り、気にせずに出ようとするが、私はバリアの外に出ることができず、見えている障壁にぶつかった。
「うわぁ!?」
バリアに鼻先をぶつけた。
普通に痛い。壁に激突したみたいで、鼻先が真っ赤になる。
目から小さい涙が流れると、私はグスンと鼻を鳴らす。
「い、痛いよ……」
「どうなってるんだ? どうしてPvPが終わったのに」
「このバリアって、消えないの?」
「いや、消える筈だ。だが、これは一体……」
外からもバリアに触ることができた。
このバリア―・フィールドは、特定のフィールドを仕切るために使われる。
例えばPvPだ。外部の関係の無いプレイヤーやNPCに被害が出ないようにするため、PvPの際には展開された。
「消えないな」
「ええ、それじゃあ私、閉じ込められちゃったの!? そんなの困るよ」
「私に言うな。うーん、運営側が修正してくれるのを待つか。まあ、そこまで気にしなくていいバグだろうから、とりあえず報告だけするぞ」
「私のとっては一大事なんだけど!」
Nightが余りにも冷静過ぎて怖い。
もちろん私にそんな達観した姿勢はできないし、慌てふためく様子から、見ていたプレイヤーやNPCもざわつく。
「おい、マジで大丈夫か?」
「このままってヤバくない?」
「な、なんとかしてあげないと」
「おーい、嬢ちゃん。大丈夫か!」
私が一撃でリボルグさんを倒した時は、全員静まり返っていた。
ヤバい奴を見る目をされ、怖がられてしまった。
けれど今は凄く優しくて、私はホッとする。
でも、如何したらいいのかな? 早く助けて欲しいと、誰かにお願いする。
「あっ、そう言えば……あの!」
こうなってしまった以上、暇を潰すしかない。
そう思った私は、リボルグさんの仲間に声を掛けた。
「な、なんでゲスか?」
「リボルグさんのこと、ごめんなさい。まさか、あんなことになっちゃうなんて思わなくて。……大丈夫ですよね?」
私はリボルグさんを痛めつけた? つまりは無いけど、やり過ぎてしまったことを反省する。
するとリボルグさんの仲間は奇妙な笑いを浮かべた。
「ゲースゲスゲスゲス。大丈夫でゲスよ。MPが〇になっても、早々死ぬことは無いでゲス」
「んが。死なない……筈」
「は、筈?」
「まあ、死んだとしても、アキラのせいじゃないでゲスよ。最初の契約書に書いてあるでゲスから」
なんだか怖い話をしていた。
私は全身が身震いし、自分の保身も考える。
まさか私、人殺しになっちゃう? 捕まっちゃう? 色々想像するけど、心配しても仕方が無い。ここは信じてみよう……誰に? 自問自答が行き過ぎて、震えが止まらなかった。
「それにしても大変でゲスね」
「はい。あの、これからどうしたら」
「そうでゲスな。とりあえずリボルグには後で謝らせに行くでゲス。それでいいでゲスか?」
「わ、私は大丈夫です」
なんだ、凄くいい人達だ。
リボルグさんもそうだったけど、別に卑怯な人達じゃない。
雰囲気と化言葉遣いとか、たまたま私と意見が合わなくて衝突しただけ。
どちらも正義を持っていると分かると、心が柔らかくなる。
「ゴレイム、これからどうするでゲス?」
「んがっ? とりあえず、このバリアを……なんか来た?」
「ゲス? これは……なんでゲスか!?」
すると急にリボルグさんの仲間達は慌てた。
簡単な雑談をしていたのだが、突然目を見開く。
何かあったのかな? 私は声を掛けようとするが、二人はバリアの内側に入って来た。
「仕方ないでゲスね」
「……乗らない」
「仕方ないでゲスよ。ちょっと交渉してみるでゲス」
バリアの中に足を踏み入れると、私は腰を抜かしそうになる。
もちろん周りに居た人達全員もだ。
普通、外からバリアの中に入ることはできない。弾かれてしまって、吹き飛ばされる。
とは言え、完全に入れない訳じゃない。
バリアの中にいる人が許可したり、外から強引なパワープレイでバリアを破壊することだってできる。
けれどそんな真似、普通しない。
私はなにが起きているのか分かっていないが、“交渉”の意味を考える。
「あの、なにかありましたか?」
「あったでゲスよ。面倒でゲスが、小生達とも戦ってもらえないでゲスか?」
「んがっ!」
「ええっ。な、なんでですか!?」
「それは小生達が訊きたいでゲス。ただ、このバリアが消えない原因は、ソイツのせいでゲス」
「そ、ソイツ? もしかして運営の人……」
何故かリボルグさんの仲間とも戦う羽目になってしまう。
私は別けも分からないのだが、リボルグさんの仲間も分かっていない。
理由は定かではない。だけど、もっと別の視点から、私達が戦うことを義務にしているみたいだ。
「運営の人説は合っているかもでゲス」
「本当ですか!? でもなんで私が……」
「さぁなでゲス。それに、小生達も巻き込まれた側でゲス」
「んがっ」
「そうですよね。あの、ルールは?」
お互いに乗り気ではなかった。
とは言え、運営陣の悪ノリだとすれば、ここで適当なことをすると、後で大変なことになりそう。
厳正なルールを決めることにしたのだが、やっぱり二対一は不利すぎる。
「スタンダードでいいでゲスよ」
「ハンデも付ける」
「ハンデ付けてくれるんですか!?」
「当然でゲス。小生達も、鬼じゃないでゲスよ。そうでゲスな、HP半分でどうでゲス?」
「固有スキルも使わない」
「ええっ、そんなハンデいいんですか!」
あまりにもハンデがハンデすぎた。
私はあまりにも状況が一変し、不利が無くなった……訳じゃない。
少なくとも二対一なのは変わらないので、私は如何しようかと思ったけど、もうやるしかない。
「分かりました、それでお願いします」
「ゲースゲスゲスゲスゲス。楽しむでゲスよ」
「は、はい!」
私はハキハキとしたいい返事をする。
するとNightとフェルノは、私に叫んだ。
「アキラ、やるのか!?」
「だって、やるしかないでしょ?」
「頑張ってねー、アキラー」
「うん。さっきみたいにやってみるよ」
そう上手く行くかは分からない。
少なくとも、油断しちゃダメだ。
私は頬をパンと叩き、気合を入れ直すと、目の前の二人が恐ろしく見えた。
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