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◇68 最適化:optimization

あまりにも大事な話です。

あからさまな伏線をご覧あれ!

 私はモノクロちゃんを連れて、いつもの噴水広場にやって来た。

 その間もモノクロちゃんは私の胸に顔を埋めている。

 ジッと黙っていて、なんだか不安になる。


「モノクロちゃん、大丈夫? なにか飲む?」

「それではカフェオレをお願いします」

「カフェオレ?」


 カフェオレ……ああ、白と黒だ。

 モノクロ調になっているものを優先的に選ぶのかな?

 私は納得すると、噴水広場でやっていた、露店に足を運んだ。


「すみません、カフェオレください」

「カフェオレ一つ? ちょっと待ってね」


 テキパキとした慣れた手付きで、露店を広げていた女性は、カップにコーヒーとミルクを注ぐ。

 完全に目分量で、もはや感覚の領域だ。

 若干コーヒーの方が強い気が……なんて口答えができる雰囲気ではなく、気が付くと、カップには蓋とストローが突き刺さっていて、私に手渡す。


「カフェオレ一つになります」

「ありがとうございます」


 私はお金を支払うと、代わりにカップを受け取る。

 モノクロちゃんを抱きかかえたまま、近くのいつも開いている不人気ベンチに向かう。

 腰を落ち着かせ、モノクロちゃんに手渡した。


「はい、モノクロちゃん」

「ありがとうございます、アキラ様」


 私はモノクロちゃんに手渡した。

 けれど中々受け取ってくれない。

 目を瞑ったままピクリともしない。疲れちゃったのかな? 私はモノクロちゃんの頭を撫でた。


「くすぐったいです、アキラ様」

「ああ、ごめんね!」

「でも、大丈夫です。むしろありがとうございます」


 頭を優しく撫でた。

 するとモノクロちゃんの体が震え、私はすぐさま手を離す。

 けれどモノクロちゃんは私に撫でさせてくれて、むしろ喜んでくれた。


「モノクロちゃん、可愛いね」

「ありがとうございます、アキラ様。……あの、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?

「なに?」

「アキラ様は、どうしてそんなに”強いオーラ”を持っているのですか?」


・・・何を言っているのかな? さっぱり見えない。

 私はあまりにも漠然とした質問をされた。

 そのせいで困惑すると、ピタリと会話が止まる。


「私が強い? なんのこと」

「このゲームをプレイされるプレイヤー様の中には、何人もの強いオーラを持ったプレイヤー様がいます」

「め、メタ発言?」


一瞬にして世界観を壊す。

もはや特権のような権限を持った言葉に、アキラは慄く。


「その中でもアキラ様は群を抜いています。私のようなNPCに対する対応もそうですが、まるで全てを見通すあの人(・・・・・・・・・)のような調和性(・・・・・・・)を兼ねているみたいで」

「む、難しい言葉だね」


 モノクロちゃんの言葉は難しい。

 多分誰かを重ね合わせているんだろうけど、残念ながら、私はそんなに強くない。

 全部をどうにかできるような人じゃないし、完璧生真面目人間でもない。

 ただ私は……


「私は、強くなんて無いよ。ただビビッと来たものを信じているだけ」

「ビビット?」

「ビビットじゃなくて、ビビッとだよ。こう、心の奥底? アニメ的に言えば、魂的ななにかかな? そんな分からないものを信じているだけ。その方が、なんだか相手と繋がれる気がするんだ。えへへ、変でしょ?」

「はい、確かに変わっていると思います」

「うっ、そう言われると傷付くな」


 私は自分で言っておきながら傷付いた。

 それだけ思い一撃で、心に槍が突き刺さる。

 それでも私は私を変えない。私は強くないから、周りを頼る。

 そのためにも頼りになる何かを信じる。そんな気持ちが多様性を生む。私は信じていた、そんな漠然とした何かを。


「ですが、素晴らしいと思います。だからこそ、私を信じてくれたのですね」

「うん。モノクロちゃんは悪い子じゃないし、なんだか畏まってるから」

「それはアキラ様も同じでは?」

「そうかもね。でも今は対等だよ」

「対等……なるほど、それがアキラ様の……」


 モノクロちゃんはブツブツ呪文を唱える。

 まるでお経で、もはや私じゃ聴き取れない。

 電波みたいな声がモノクロちゃんの中でグルリと一蹴すると、急に私にも分かる声で言った。


「optimization」

「な、なに?」

「最適化が完了しただけです。アキラ様、【ユニゾンハート】を信じてみてください。アキラ様が危機に瀕した時、きっと全てを引っ繰り返してくれる筈です」


 あまりにも的を射ていない。

 突然引き合いに出されたのは私のスキル、【ユニゾンハート】。

 何故か二つ目のスキルを持っている私が、今まで使えて来なかった、分印されしスキル。

 それを今口にするって何か関係が? 私はモノクロちゃんに訊ねた。


「モノクロちゃん、どう言うこと? 【ユニゾンハート】になにかあるの?」

「きっと大変な筈です。ですが私が最適化をしたので、ある程度は使えると思います。まだその力を存分に発揮することはできなくても、恐らくいつかは」

「さっぱり分からない」


 今度は話が飛躍している。

 もはや私じゃ付いて行けない。

 どんな高次元の会話なのかと頭を悩まされると、モノクロちゃんは私の胸に手を当てる。


「【ユニゾンハート】は信じる心です。繋がりが深ければ、絆は爆増します」

「信じる心?」

「はい。ですので……!?」


 モノクロちゃんがそこまで口にした瞬間、急にピタリ止まった。

 グルンと振り返り、空の彼方を睨む。

 如何したのかな? 私はベンチから立ち上がると、黒い点が降って来た。


「あれは……モノクロちゃん!」


 ドンドンこちらに近付いて来る。

 初めは点の筈だったけど、噴水広場に近付くと、その形ははっきりとする。

 完全に人。私がそう気が付いた頃には、噴水広場中央の巨大な噴水の中にボチャンと落ちた。


 バッシャーン!!


 とてつもなく大きな水飛沫が上がった。

 それも一つじゃない。

 連続で黒い点が落ちて来ると、噴水の中に全て収まり、三つの巨大な波を生んだ。


 バッシャ、バッシャーン!!


「な、なにが起きたの?」


 私はモノクロちゃんを庇って前に出ていた。

幸い水飛沫は掛からなかったけれど、噴水の中にはプカプカと三つの影が浮かんでいる。

周りの人達も臆しているみたいで、私は首を伸ばして覗き込む。


「なにが落ちてきて……ええっ!?」


 ついつい変な声が出てしまった。

 まさかとは思ったけれど、本当に噴水に落ちて来たのは人間。

 しかも三つの影の正体は、全て人で、私はその人達を知っていた。


「あれは……」

「ボレオさん達だ。一体なにが起きたの?」


 突然人が飛んで来るなんてありえない。

 しかもそれがボレオさん達なんて、一体どんな偶然?

 私はポカンと口を開けてしまうが、これが偶然では必然だったらと意識が切り替わる。

 怯える私はモノクロちゃんを抱き寄せたまま、しばしの間動けなかった。

 そう、ボレオさん達を吹き飛ばした張本人が現れるまで、ベンチの近くに立ち尽くして。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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