◇63 絡まれないように気を付けてね
今回は繋ぎ回です。
「それではこれで依頼は完了になります。お疲れさまでした」
ミーNaさんから報酬を受け取った私達。
それぞれに分配して分け合うと、そこそこ潤う。
やっぱり報酬を貰えるのは嬉しい。
達成感があるけれど、Nightは渋い表情を浮かべた。
「うーん」
「どうしたの、Night?」
「元気無いねー」
私とフェルノは声を掛けた。
するとNightはポツリと呟く。
「ランクが上がらないな」
「「えっ、ランク?」」
そう言えばそうだ。
今日までで三つは依頼をこなしたけれど、Eランクに上がって以降、何の変化も無い。
ギルドが次のランクに上がるためのポイントは、少しずつでも溜まっている筈。
けれど目に見えた変化が無いので、正直定かではない。
「ランクを上げたいのー?」
「ランクを上げればそれだけ高難易度の依頼を受理できるようになるからな」
今私達のランクはE。
おかげでFとEランクの依頼を受理できる。
けれど、それでは報酬も頭打ち。
よい素材を獲得するには、ギルド関係無しでダンジョンに行かないといけない。
一石二鳥が全然無く、コストも掛かるだけだった。
「それじゃあさー、ランクを上げればもっともーっと、強いモンスターと戦えるの?」
「あはは、フェルノはいつもそれだね」
「だって戦うの好きなんだもーん」
フェルノは拳を突き出した。一人でシャドーボクシングを始める。
私は適宜避けつつ、Nightに訊ねた。
「ランクを上げるには、ギルドに認められるしか無いんだよね?」
「ああ。ポイントを溜めるだけじゃなくて、ギルド全体に貢献度を示す。その上で、ギルドにランクアップを認めさせる必要があるな」
「この前みたいな、イレギュラーは無いってこと?」
「望み薄だな」
メタクロベアーの一件は、同じ依頼を受けていたプレイヤーがいたおかげで、真偽が証明された。
そのおかげもあってか、一気にランクアップすることができたのだ。
けれどもあれは偶然。私達の実力は、まだ霞の中だった。
「とにかく、ランクアップは今後の目標にも繋がる。とは言え、今日はもう解散だ」
「えー、解散?」
「当り前だ。依頼も終えて戻って来たんだ。二度も三度も街の外に出るのは面倒だろ」
今日は近場のダンジョンで、依頼を達成した。
採取系の依頼だったからか、フェルノは不満そうだった。
それでも無事に依頼も終えたので、ここからは自由時間。
私達は解放されるも、ギルド会館を出る前に、ミーNaさんに声を掛けられた。
「あっ、〈《継ぎ接ぎの絆》〉の皆さん、待ってください」
「「「ん?」」ミーNaさん?」
私達は立ち止まり、クルンと振り返る。
するとミーNaさんの顔がある。
何か忠告でもする様子で、顔に張り付いている。
「どうしたんですか、ミーNaさん? なにか忠告でもしたさそうに見えますけど」
「えっ!? どうして分かりましたか?」
「ってことは、合ってるんですね。あの、なにかしちゃいましたか?」
真っ先に自分達を疑った。
するとNightとフェスタの視線がぶつかる。
「「おいおい」」
「だって、ギルド職員さんが声を掛けて来るってことは、なにかしたって思うでしょ?」
「それはそうだが……私達には非は無いぞ」
「そうだよね。あのミーNaさん、もしかして私達……」
私は不安そうに訊ねる。
しかしミーNaさんは瞬きを二度すると、首を横に振る。
「いいえ、違いますよ。むしろ、皆さんには注意喚起をお願いしたく、声を掛けさせていただきました」
「「「注意喚起?」」」
明らかにヤバそうなニオイがした。
けれどミーNaさんの口は止まらない。
スパッと口走ると、ミーNaさんは、この間のことを思い起こさせる。
「この間、〈《継ぎ接ぎの絆》〉の皆さんと口論になり、当ギルド会館から強制的に退去していただきました、プレイヤーの皆さんを覚えておられますか?」
「それって、あの男達のことか? もちろん覚えているぞ」
「あー、アキラが軽くあしらった」
「フェルノ、余計なこと言わないでよ。変な噂が立ったらどうするの?」
私はフェルノに耳打ちをする。
すると「ごめーん」と平謝りをした。
頭をポリポリ掻く中で、まるで信用にならない。
「あの人達がどうかしたんですか?」
「はい。Nightさんは既にご存じかと思いますが」
「最近、他プレイヤーやNPC相手に難癖を付けて、騒ぎになっている連中だな。ギルドにも目を付けられたか、と言うことは?」
「はい。管理者やその従、当ギルドを始めとした、治安部隊も動きつつあります」
「鎮圧が早いな。とは言え、それなら心配する余地も無いだろ」
NightとミーNaさんの間だけで、話が展開している。
私とフェルノは置いてけぼりを喰らう。
けれど、あの男性プレイヤー達が、何やら悪さをしたらしい。
そのせいもあってか、注意を促されている。
「という訳で、くれぐれもお気をつけてくださいね。ギルドの外の出来事となると、表沙汰には動けませんから」
「あはは、大丈夫だと思いますよ」
「そうだよねー。だってさ、あれだけこっぴどくやられたのに、今更ねー」
私とフェルノは高を括っていた。
けれどNightはそんな余裕を許してくれない。
むしろキリッとしたオッドアイの瞳が、私達を射抜く。
「下手なフラグを立てずに、警戒はしておけ。これは注意であり、忠告だぞ」
「「ううっ、はい」」
私とフェルノは大人しく従う。
一気に肩が落ち、背中が丸くなると、ミーNaさんはもう一度念押しした。
「では、くれぐれもお気を付けくださいね」
「分かりました、ミーNaさん」
「それでは、気を付けて」
私達はミーNaさんに見送られる。
何故かミーNaさんは私達のことを、特別良くしてくれている。
そのおかげか、そのせいか、目を付けられそうで怖い。
そんな内心を抱きつつ、私達は一度街へと戻った。
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