◇6 キャラメイクの時間3
キャラメイク編最後です。
このゲームでは使えるスキルはたったの二つだけ。
それをどう活かすかは使い手次第です。
「それでは次の固有スキルですが、アバターのキャラメイクと並行して行います」
「おっ、効率的だね」
「はい。流石に時間も掛かり過ぎていますので」
「ごめんね、最初に余計な話ししちゃって」
「気にしないでください。それでは始めます」
モノクロちゃんはそう言うと、私に配慮してくれた。
正直まだまだ集中力は持つ。
けれどあまりにも単調な説明が続くので、モノクロちゃんなりに高速化してくれたのだ。
「キャラメイクってどうやって……うわぁ!」
戸惑う私だったが、突然目の前に姿見が現れてビックリした。
しかも宙に浮いていて、まるで魔法みたい。
まじまじと見つめると、姿見に私の姿が映し出され、目の前に操作パットが浮かんだ。
「わ、私が映ってる? って鏡だから当たり前だよね……これを操作したらいいの?」
「はい。ですが、キャラメイクに関しましては何点か注意がございます」
「何点もあるの?」
「まず、キャラメイクで自由に操作できるのは、元となっている自分の姿に限定されます。例えば目や髪の色、体色などです。性別の変更や、身長体重などは、変更できません」
「そうなの? どうして」
「現実との齟齬を極力避けるためです」
モノクロちゃんはそう説明した。
と言うのも、このCUと言うゲームは、とんでもないリアリティを誇る。
そのせいもあり、少しでも現実とのズレが起きれば、システム的に処理が大変になるらしい。
おまけに現実との差が大きくなればなるほど、何らかの関係悪化が懸念されることもあり、ある程度制限が設けられているそうだ。
「へぇー、意外に大変なんだね」
「はい。ですが身長や体重、ステータスに関しましては、現実との健康状態、精神状態に寄り、適宜変化致しますので、ご心配は無く」
「そうなんだ……えっ、今なにか凄い重要なこと言わなかった?」
「気にしないでください」
「気にするよ!」
私は声を荒げてしまった。
しかしモノクロちゃんは首を捻ると、話を上手く躱してしまう。
私は唖然とする中、モノクロちゃんはそれ所ではなかった。
「<ヒューマン>の種族スキルは【適応力】。それから固有スキルは……えっ!?」
「どうしたの!」
モノクロちゃんは口元に手を当てて声を上げる。
驚いてしまったらしく、何に驚いたのかは分からないけれど、目を見開いている。
私は不安になり、また変なことしちゃったのかなと思ったが、本当に変なことが起こったらしい。
「モノクロちゃん?」
「本当に珍しいことが起こりましたね。アキラ様の固有スキルは二つ。【キメラハント】と【ユニゾンハート】です」
「ん? 固有、なに? キメラ……ハート? なんのこと言ってるの?」
私にはさっぱり分からなかった。
ゲームの仕様なんだと思うけど、初めから情報量が多い。
とりあえず意識を切り替え、一旦キャラメイクに映ると、私は自分のキャラをイジった。
「うーん、ほとんどイジれないんだよね? それじゃあ目とか髪の色を変えるくらいにして……どうしよう?」
私は腕を組んで考え込む。
正直何にも思い付いていない。
いっそのこと、全部そのままにしてしまおうかと思ったが、流石にそれはモノクロちゃんに止められる。
ランダムにしてしまうのも面白い。
だけどそんな危険なこと、私にはできない。
冒険できなかった自分を少しだけ責めるも、ふと頭の中にイメージが湧いた。
「……桜?」
あたまりにも繋がりが無かった。
何から連想したわけじゃないのに、頭の中に“桜”という言葉が出てくる。
もしかすると、いや、もしかしなくても、エルさんと話した言葉が記憶から呼び起されたのだ。
「桜、ちょっといいかも。そうだ、髪の色と目の色は合わせて、薄い白を基調にしたピンク、ううん、桜色にして……後は胸を盛って……はいいかな?」
「できましたか?」
「うん、できたよモノクロちゃん。どうかな?」
私はモノクロちゃんに確認を取る。
何処か変なことが無いかと見て貰ったが、モノクロちゃんは真顔のまま。
むしろ神妙な顔をすると、私のことを交互に見る。
「平凡ですね」
「それって、私のこと!?」
「センスがです。ですが、その平凡さが、貪欲なまでのスキルを呼んだんですね」
「あっ、そうだよ、それ! さっき言ってた、スキルってなに? まだ説明……」
「あっ、そろそろ時間です」
「モノクロちゃん!」
なんだろう。話すのが面倒だと思われた気分だ。
私は頬を膨らましてムッとすると、モノクロちゃんは笑みを浮かべる。
ニコリ微笑んで、クスリと笑うと、何だか私も笑顔になる。
「ふふっ、なんで笑ってるの?」
「いえ、頑張って欲しいプレイヤー様だと思ったまでです」
「それって私のこと? ありがとう、頑張るの意味が解らないけど、頑張ってみるね!」
「期待していますよ、私はアキラ様の内なる可能性を」
何だか壮大な言葉だった。
私は困惑するも、それさえ意識を切り替えて笑って誤魔化す。
正直、スキルに付いて教えてくれる雰囲気じゃない。
これは自分で調べるか。そう思ったのも束の間、私の体を青白い光が円になって包み込む。
「うわぁ、な、なにこれ!」
「アキラ様、いよいよです。Creatures Unionの世界をお楽しみください。それと……」
「それと?」
「次ぎ、私と出会った時も今のように付き合ってくれますか?」
「もちろんだよ!」
「ありがとうございます。それでは、どうぞお楽しみください、それから可能性を信じて、思う存分突き進んでください」
モノクロちゃんに見送られ、私の体が青白い炎に包まれる。
もうモノクロちゃんの顔も見えない。
ボヤけてしまうが最後まで丁寧な会話をしてくれたモノクロちゃんに感謝すると、私は背中を押された気分で楽しむのだった。
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