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◇58 VSメタクロベアー2

まさか強い個体に出遭うなんて……。

 メタクロベアー……強い。

 私は息を飲むと、草むら、薮の中、木の裏から、三人で覗き込む。


 まさかあんな簡単にし、しかも暴力的に、プレイヤーを倒すなんて。

 怖い、怖すぎる。

 私は、身震いしたけれど、少しでも動けば気が付かれるかもしれない。


 今は息をジッと殺すこと。

 身を隠し、隙を伺うこと。

 それが勝機の第一歩。そんな気がしてしまい、短剣をギュッと握る。


「うわぁ、ヤバいね、メタクロ」

「そうだな。しかもあの目を見てみろ」

「真っ赤だよね。もしかして、アレが強化個体?」

「そうだな。凶暴化している……が、特化しているのは、攻撃力だけか」


 なんだろう、Nightは余裕に考えている。

 正直、その余裕を分けて欲しい。

 私は緊張感が伝い、汗となって流れると、メタクロベーの動きを見定めた。


「グマァ、グマァ!」


 メタクロベアーは暴れている。

 もう敵は居ないのに、目の前の木を的にして、爪を叩き込む。

 フェルノでも壊せない、むしろ反動でダメージを喰らうような硬い気を、爪で引き裂いていた。


「うひょぉー、あんなの喰らったらひとたまりも無いねー」

「トラウマ必至だな」

「そんな相手と戦うんだね。緊張する」


 メタクロベアーの凶暴性は重々承知した。

 だけどここから如何戦うんだろう。

 とりあえず、Nightに視線を向けると、作戦を考えてくれていた。


「いいか、メタクロベアーはメタルクローの爪と、それを支える分厚くて、熱を通さない手が特徴だ。両方を噛み合わせることで、この森の木でさえ傷付けることができるんだ」


 Nightの言う通りだった。

 確かにメタクロベアーの攻撃力はとんでもなく高い。

 この森の木をバッタバッタと薙ぎ倒し、ましてや爪研ぎに使うなんて、恐ろしい以外の何物でも無い。


「それでも、勝たないとダメなんだよね?」

「そうだな。行くぞ」

「んじゃ、いっくよー、えいやっ!」


 真っ先に飛び出したのは、フェルノだった。

 両腕と両脚を、<ファイアドレイク>で武装。

 全身を真っ赤なドラゴンの鎧で覆うと、メタクロベアーを攻撃する。


「おい、まだ作戦を……まあいいか」

「Nightが諦めた!?」


 Nightは頭を掻き毟る。

 もはやフェルノの行動を止めることはできない。

 用意した作戦を放り投げ、戦いに参加……はしなかった。


「ええっ、戦わないの!?」

「私は準備をする。お前とフェルノで相手をしろ」

「ええっ、もう、勝手だよ!」


 本当に“継ぎ接ぎ”なメンバーだった。

 個性が絶えずぶつかり合うと、フェルノは攻撃一辺倒。

 対してNightは技術に走る。もはや間を補うくらいしか私にはできなくて、とにかく隙を作る。


「フェルノ、私に合わせて!」

「ん? いいよー、それっ」


 フェルノはメタクロベアーと戦っていた。

 一発でも喰らえばHPを半分以上失う攻撃を、動体視力で追いかけ、上手く躱す。

 そんな中、私のお願いを聞いてくれる。

 体を捻って対処すると、メタクロベアーの頭を蹴り上げた。


「そーれっ!」

「グマァ!?」


 フェルノの動きは硬かった。

 その分だけ、重たい一撃が加わる。

 ドラゴンの力を使うと、全身に重量感が加わって、パワーの代わりにスピードを失い、それにより、メタクロベアーを怯ませたのだ。


「今だよ、アキラ!」

「ありがとう、フェルノ。それっ!」


 短剣を武器に飛び出す。

 メタクロベアーの空いた胸を狙って突き刺そうとした。

 けれど、そんな攻撃、甘くて甘くて仕方が無かった。


「グマラァ!」


 メタクロベアーは、私の攻撃を喰らってもビクともしない。

 ましてや、短剣が突き刺さっても、余裕だった。

 

 HPも削れていない。むしろ近付いて来た私を凝視する。

 フェルノの攻撃を喰らって、一瞬怯んだにもかかわらず、それさえ無にする。


 私に自慢の爪を見せびらかす。

 一撃を振り下ろすと、私のことを切り裂こうとした。


「ヤバッ!?」

「ちょっと待って。それっ!」


 攻撃されそうになった私を助けるために、フェルノは動いた。

 メタクロベアーの背後を取り、頭を押さえる。

 回し蹴りを喰らわせると、一瞬だけ、時間が生まれた。


「あ、ありがとう。フェルノ!」

「どういたしましてっと! うわぁ、ちょっとこっちか!?」


 メタクロベアーの攻撃から、何とか私は抜け出した。

 だけど代わりにフェルノが狙われる。

 鋭い爪による攻撃が、フェルノに向かって注がれた。


「ちょ、流石に防御できないって-……重っ」

「フェルノ!?」


 フェルノは腕で×を作った。メタクロベアーの攻撃を、受け止めようとしたんだ。

 とは言え防御しようにも、攻撃力の高い一撃で、フェルノの体が吹き飛ぶ。

 まともに喰らった。フェルノは意識が吹き飛びそうになる。

 体も宙に浮き、勢いを受けて飛んで行く。


「がはっ!?」


 フェルノのHPが一気に減った。

 三分の一、それから半分。地面を転がる頃には、瀕死状態(レッドゾーン)を切っていた。


「フェルノ!」

「うっ……ヤッバっ、ぐへっ」


 フェルノはうつ伏せで倒れてしまった。

 体が動かなくなる。

 とんでもない一撃を貰ってしまったせいか、しばらく立ち上がれそうになく、スキルも解けてしまっていた。


「どうしよう。このままじゃ」


 次の狙いは確実に私だ。

 逃げ出したいけど、それもできない。

 ゴクリと喉を鳴らす中、背後から伝わる視線に気圧され、私は拳を握るしかなかった。


「ここは私が戦って、時間を稼ぐしかない」


 そう決めた。そう決めるしかなかった。

 振り返り、私がメタクロベアーを見た。

 するとその目は真っ赤に染まり、鋭い爪を剥きだし、私を側頭部に攻撃した。


「グマァ!」

(あっ……)


 もう声も出なかった。

 私は死んだと直感し、その直後には、私の視界は暗闇に染まる。

 メタクロベアーの両腕に攻撃され、鋭く尖った爪に挟み込まれてしまった。

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