◇52 私達は:〈《継ぎ接ぎの絆》〉
さぁ、ここからがショータイムだ。
「さてと、ここまでで全部埋めたけど……一つ以外」
「結局思い付かなかったねー」
「うん。どうしよう、ギルド名」
私達はギルド登録のため、一つ一つ丁寧に書いて行った。
途中詰まる部分もあったけど、何とかクリア。
その結果、結局最初に躓いた所に戻って来ていた。
「どうしよう、ギルド名」
「結局決まってないから……もう、無しってことでよくない?」
フェルノはもう怠くなってきていた。
そのせいかな? 足をブランブランしている。
「フェルノ、そう言うのやめようよ」
「えっ、なにが?」
「うっ、やっぱりみんな変ってるよ」
もはや言い逃れさえできない始末だ。
本当に変り者過ぎる。と言うか、変過ぎる。
それは、誰だってできること、できないことはある。
けれど、こう、なんと言ったらいいのか分からない、常人じゃない部分で、欠けていた。
「もういっそのこと、変り者達とか、変人ズとかでもいいかな?」
「いやいや、それは無いでしょー」
「だって……」
「だってじゃなくて、カッコよくない! 反対反対、私は絶対に反対!」
そういうのなら、案くらい出して欲しい。
プツンと怒りが込み上がってしまった。
だけど上手く抑え込むと、頭の中を切り替える。
何かいいアイデアは無いかな? そう思って周囲を見回すと、ここまで黙っている人が居た。
「Night、どうしたの? お腹でも痛いの?」
ここまでの長い間Nightは黙っていた。
フリーズでもしているみたいにピクリともしない。
腕を組んだまま俯き、目線も合わせてくれないのだ。
「それともお腹でも空いたー? この後なんか食べる?」
「確かに疲れちゃったもんね」
ゲーム内とは言え、良くできている。
そのせいで、普通にお腹が空く。
空腹ゲージみたいな便利なものは無いけど、お腹の空いた時は、リアルと全く同じだった。
「いや、大丈夫だ」
「「Night!?」」
急にNightが喋り出した。
あまりにも満を持して過ぎてビックリする。
普通に大きな声を出すと、周りからの視線が凄い。
会釈をしながら平謝りし、小声になって話し掛ける。
「もう、急に喋り出さないでよ」
「なんだ?」
「なんだじゃないよ。話、ちゃんと聞いてた?」
「聞いていた。と言うよりも、私は考え事をしていただけで、一度も落ちてはいないぞ」
まさかの意図的に黙っていた!?
そんなの有りって思ったけど、確かに回線落ちはしていない。
実際、復帰とかのレベルじゃなくて、普通に喋り出したのだ。
「それじゃあ、なんで黙ってたの?」
「考え事をしていただけだ。ここに揃った三人が変り者と言うこともあるからな。不本意だが、それを念頭に入れて考案した」
考案? ってことはずっと頭の中で想像を働かせていた!?
考えを巡らせた結果、何か思いついたらしい。
これは有無を言わさず採用レベルだ。
私はフェルノと視線を共有すると、早速訊ねた。
「ねぇNight、どんな名前?」
「カッコいいんだよね!?」
「さぁな。ただ私が考えた名前は私らしくは無い。……笑うなよ」
それは難しい相談だ。
もしかしたら吹き出すかもしれない。
それ覚悟で訊かれたので、一瞬迷うけど、コクリと縦に振る。
「〈《継ぎ接ぎな絆》〉」
「「〈《継ぎ接ぎな絆》〉?」」
私とフェルノは互いに顔を見合わせる。
瞬きをしながらNightに視線を戻す。
本当にNightっぽくないせいか、ついつい本音を言ってしまった。
「本当にNightらしくないね」
「うんうん、なーんか、それっぽくない」
「お前ら、人がせっかくくだらないことに頭を使ってやったんだぞ」
「「くだらなくはなくない?」」
「はぁ、面倒だ」
ギルド名は大事だ。なのにNightは面倒なんていう。
流石に苦情を出すと、Nightは怠そうにあしらう。
本気で考えてくれたのは伝わったけど、態度が態度で、分かり難い。
「で、どうなんだ?」
「どうなんだって言われても……ねぇ?」
「よく分かんなーい」
「お前ら……はぁ、怒る気も無いか」
本気で呆れられてしまった。
なんだろう。これじゃあ私達がダメみたいに見える。
ムッとした表情になると、Nightに理由を訊ねた。
「ねぇ、どうして〈《継ぎ接ぎな絆》〉なの?」
「ん? 決まっているだろ。私達が、“継ぎ接ぎ”だからだ」
「「継ぎ接ぎとは?」」
一体何が“継ぎ接ぎ”なんだろう。
私がついつい考えてしまうと、やっぱり”変り者”と言うワードに辿り着く。
もしかして、いや、もしかしなくても、Nightはここからインスピレーションを貰ったんだ。
「私達が変わり者だから?」
「それが一番だな。一つ一つがバラバラで、まとまりのようなものは残念ながら無い。だがしかし、それらの糸が上手く絡み合って、一つの作品を作り出している。それこそ、継ぎ接ぎで作られた衣服のようにな」
私とフェルノはそれを聞いて、なんだかポカンとしてしまった。
もちろん理解はできる。凄くできる。
だけどそれを抜きにしても、声を大にして言いたい。
「な、なんだ? なにか言え」
「「凄く良いよ! なんだかそれっぽい」」
私もフェルノも大賛成だった。
もうこれ以上にいい案は出ない。
今、私とフェルノの脳が直列繋ぎされたみたいに、言葉無しで理解し合うと、Nightの考えてくれた名前を採用する。
「お、おい。流石に早計じゃないのか?」
「ううん。凄く良いよ。これしかないって、まとまりを感じる」
「だよねだよねー。っていうか、もう考えるの面倒だもんねー」
「ねぇー」
「ねぇ、じゃない! はぁ、こんなのでいいのか。本当に、継ぎ接ぎだな」
Nightは完全に呆れてしまった。
そんな姿を横目に、私は少しだけ手直しをする。
〈《継ぎ接ぎな絆》〉は何だか言い辛い。そこでこう書き直す。
「〈《継ぎ接ぎの絆》〉、よし。完成」
私は用紙に名前を書き起こした。
今日から私達はギルド、〈《継ぎ接ぎの絆》〉だ。
みんな違ってみんないい。そんな詩があるけれど、まさしく全員違って、だからこら全員が良いんだ。これからどんな絆を紡いでいくのかな? なんだかワクワクする名前に胸が高鳴り躍った。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




