◇5 キャラメイクの時間2
キャラメイク編は重要。
ここで主人公がこれを選ぶのが大事。
何だかモノクロちゃんは少しだけ楽しそう。
業務的ではなく、スラスラと手際の良さがある中、その中でも私にチラチラ視線を配ってくれる。本当に気遣ってくれるのが分かり、私はキャラメイクの続きをした。
「それでは次に種族を決めていただけますか?」
「ん、種族ってなに?」
「あれ、知らないのですか?」
モノクロちゃんは謎の単語を口走る。
種族ってなに? 私にはさっぱり分からない。
そう思ったのも束の間。烈火が観せてくれた動画を思い出すと……何も無かった。
「えっ、本当にどういうこと?」
「この世界ではプレイヤーは特定のクリーチャーの遺伝子を持っています」
「クリーチャーの遺伝子とは?」
「この世界ではプレイヤーが“クリーチャーになる”、または“クリーチャーの力を使う”ことで、本来味わえない冒険を可能にしてくれます」
「えーっと、よく分からないんだけど」
如何してだろう。こういう時だけ上手く飲み込めない。
首を捻りながら、モノクロちゃんの言葉を噛み砕く。
するとこのゲームの名前、Creatures Unionの意味が分かった。
特徴的な名称、Creaturesの正体は、つまり、プレイヤーがクリーチャーになれると言うことだ。
「凄い、面白い、えっ、それってどんなクリーチャーにでもなれるの?」
「いえ、厳密には不可能です」
「あ、あれ? そこがこのゲームの内じゃないの?」
「この世界でプレイヤー様が選べるクリーチャーはプレイヤー様に潜在的に合っているかどうか、高性能AIによって判断されます。そうして判断された無数に存在するクリーチャーの種族の中から選出され、一つを選ぶことが可能です」
「うわぁ、完全ランダムじゃなくて、その人個人なんだ……自由は無いんだね」
「すみません。そうしなければ、プレイヤー様の体に悪影響が出かねませんので」
サラッと怖いことをモノクロちゃんは口にした。
けれどこのゲーム最大の売り、クリーチャーになれる。
何だか聞いただけでも面白そうだけど、私の中にそれ以上ビビット来るものは無かった。
何故だろう。あまり魅力が感じられない。
「分かった。それじゃあ種族を教えて」
「分かりました。……それではこちらの表の中からお選びくだ……」
「早っ、えっ、もう決まるの?」
「アキラ様がこちらにお越しいただいた段階で、既にAIによる選定は完了していますので……これはっ!?」
「ええっ、なに? もしかして、なにかマズいことになったの!?」
私は困惑してしまい、すぐにパニックになった。
けれどモノクロちゃんの表情が、今まで見たことないものを見た様子。
私のことを見たり見なかったりしながらも、頭を抱え表を見せた。
「それではアキラ様、こちらの表の中からお選びください」
「一体何が起きて……多いよ!」
アキラの目の前に透明な板が表示される。
それはメニュー画面と呼ばれるもので、たくさんの名前が刻まれている。
その数は下にスライドするだけでも永遠に最下層に辿り着けない。
隣に適合率と相性で参照したパーセンテージが表示されるも、それでも無数過ぎて目が痛い。
「これ、どういうこと?」
「私にも分かりません。このようなことは異例です」
「異例、私、主人公みたい?」
「はい、チート転生系の主人公のようです」
「うわぁ、そこまで情報追ってるんだ。凄いな」
感心してしまう私だったが、そんなことを言ってられない。
モノクロちゃん曰く異例な数のクリーチャーが表示され、私は見るに堪えない。
もう何が書いてあるのかも分からず、全部同じように見えてしまった。
「うーん、このパーセンテージって……」
「適合率です」
「だよね。それはなんとなく……それじゃあこれでいいや」
私はもう選ぶのが面倒になった。
と言うのも、全然知らない種族が書かれている。
きっとこのゲームオリジナルのもので、何も想像が付かないこともあるので、ここは一番適合率の低いものを適当に選んだ。
「えいっ!」
「種族は選ばれたんですね。それでは……えっ、<ヒューマン>!? この種族を選ぶのですか?」
「う、うん。ダメかな?」
「ダメでは無いですが、面白みがなにもありませんよ。<ヒューマン>とは、すなわち人間です。種族に与えられた力、種族スキルを使用できませんよ?」
「種族スキルがなにか分からないけど、これが一番適合率高いよ?」
「それはプレイヤー様が人間だからです。……一度登録してしまった場合、後で変更はできませんよ? それでもよろしいですか?」
念押しして訊かれている。
きっと異例の出来事過ぎて、私のことを気にしてくれているのだ。
だけど私はもう迷っていない。何故なら<ヒューマン>を選んだ瞬間、頭の中にビビッと来た。
「大丈夫だよ。私、頑張ってみる。それにクリーチャーが一杯いる中で一人だけ<ヒューマン>だったら、主人公っぽいでしょ?」
「おかしなプレイヤー様ですね。それではアキラ様、種族は<ヒューマン>で登録させていただきます」
モノクロちゃんは戸惑っていた。
本気で大丈夫なのだろうかと心配してくれている。
そう言われると、私も心配だ。
だけどもう決めたしまった以上、変えることはできないらしい。
「それではこれ……」
「もう終わりなんだよね。それじゃあ」
「いえ、次は固有スキルとアバターのキャラメイクです」
「あ、あれ? ここまでのは……」
「ここからが本番です」
「そ、そんなぁー」
私は正直疲れてしまった。
ここまでで二十分以上が経過していた。
一体いつになったらキャラメイクが終わるのか。
私は途方に暮れてしまった。
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