◇45 モンスターは生物
”命”
「上手く行ったかな?」
「さぁねー。でもあれだけ大口叩いてたんだから、なんとかなってるんじゃないのー?」
「あはは、厳しいね、フェルノ」
「そっかなー? 私、理論とか全然興味無いからねー」
私とフェルノは森の中をトボトボ歩いていた。
約束の待ち合わせ場所はこの先だ。
まさかアルミラージ一羽にこれだけ苦戦するとは思わなかった。
だけど山の中、森の隅々を走り回ると、やっぱり楽しい。
いい気分転換になったと思うけど、結果はまだ知らない。
Nightなら上手く行ってると思うけど、少し不安だ。
「大丈夫だよね、Night」
心配になりながら森の中を進んだ。
すると小さな人影が見えてくる。
黒いマントを纏い、存在感を露わにすると、背中から見えないオーラを感じる。
「うーん、どっちー?」
「どっちだろ。おーい、Night。上手く行った?」
私はNightに声を掛ける。
するとNightは気怠そうに振り返る。
その視線の先、私とフェルノに気が付くと、成果を見せつけるように、その場を開けた。
「「あっ!」」
「二人共よくやったな。お手柄だ」
木の枝にワイヤーが通されている。
その先、丁度宙ぶらりんにされている白い塊がある。
あまりにも可哀そうに映るけど、それは確かにアルミラージ。
角を切り飛ばされ、完全に絶命しているけれど、上手く絞められているおかげか、粒子にならずに済んでいた。
「うわぁ、本当に捕まえちゃったよー。私達、全員凄くない?」
「そうか?」
「Night、上手く行ったんだから、素直に喜ぼうよ」
「そうなのか?」
あまり達成感を感じていなかった。
どうしてだろう? もしかして、Nightは楽しくなかったのかな?
私は不安になるものの、Nightに言葉を掛けた。
「Night、こんなに頑張ったんだから」
「だが経験値はほとんど入っていないぞ。本来の十分の一も無い」
「うっ、確かに倒して無いからね……」
残念ながら、捕獲だと経験値はほとんど入らない。
だから私たち三人の内、誰もレべルアップしていない。
おまけに私の固有スキル、【キメラハント】も新しいスキルを獲得できてない。
だって捕獲だから。奪うとか奪わないの話でも無い。
本当に難しいスキルだなと思いつつも、無事に成功してなによりだ。
「Night-!」
「うわぁ、なんだフェルノ!?」
そんな中、フェルノはNightの腕を掴んだ。
そのままブランブラーンと上げ下げさせる。
突然のことに驚く中、フェルノは続けた。
「Nightの作戦、私は最初、成功しないと思ってたんだー」
「だろうな」
「だろうなか―。でもね、ちゃんと成功した時、面白かったんだよねー。ワクワクしたっていうかー、みんな違ってみんな良いって感じでさー。あはは」
「なにが言いたいのかよく分からないんだが」
確かにフェルノのテンション的に上手く伝わらない。
だけどフェルノは楽しそうだ。
ここに間を挟むのはヤバいと思い、私は、助けを求めるNightを放置。
フェルノの気が済むまでお人形になって貰うことにした。
「イェーイ、イェーイ!」
「腕が疲れる……」
「やったね、やったね、でさでさ、これからどうするのー?」
「後は納品だ。欲しがっていたのは、こっちじゃなくて、こっちだからな」
そういうNightの手には、アルミラージから切り飛ばした角が握られている。
今回納品するのは、この角じゃない。
本当はこの角の方が価値があるらしいけど、今回欲しがっているのは、アルミラージのお肉だった。
「ねぇ、Night。アルミラージのお肉ってどうするの?」
「食べるに決まっているだろ」
「た、食べるの!?」
「当り前だ。アルミラージはウサギだからな。普通に食べることができる」
確かに今回の依頼だと、アルミラージを欲しがっていたのはプレイヤー。
しかもお肉を必用としている人だった。
ってことは、調理して食べるんだ。なんだろう、モンスターを食べるのって……
「モンスターは生物だ」
「えっ?」
「モンスターは生物だ。この世界のNPC達は、モンスターを食すことで生きている。それは私達が、牛や豚、魚や野菜を食べるのと同じことだ。生物を食べることで、私達は生きている。だからなにも問題にはならない」
確かに生きるってそういうことだ。
私達は他の生物を食べて生きている。
それがこの世界だとモンスターが代替になっていて、私はそんな世界の都合を意識する。
「そうだよね。それじゃあ、美味しく食べて貰わないとね」
「そう言うことだ。……で、いつまで私はバンザイをさせられるんだ?」
フェルノに絡まれ、いつまでもお人形にされているNight。
その顔色は面倒そうで、腕が疲れて来ていた。
それでもフェルノは無尽蔵な体力を見せると、ハキハキとした笑顔を剥きだす。
「えっ、それは聞かない約束でしょ?」
「そんな約束してないだろ。アキラ、コイツを止めろ」
「あはは、ごめんね、Night。それは無理かも」
「はっ? 無理ってなんだ!」
いや、こうなったフェルノは止められない。
だってフェルノの行動原理は単純だ。
自分が楽しいと思ったことに真っ直ぐ正面から向かっていく。
そんなフェルノを無理に止めるなんて真似なかなかできないので、私はNightに犠牲になって貰うことにした。
「頑張って、Night」
「お前な!」
私はNightにキレられる。
正直、拳銃を突き付けられそうだ。
だけど良かった。フェルノに腕を拘束され、手出しができないNightは、本当にお人形にみたいで可愛いかった。
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