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◇42 全中三連覇ってヤバくない?

まぁ、この時代の話ですから。

 フェルノがジャイアント・トードを倒した。

 そんな勇ましい姿を、傾斜の上から私とNightは確認する。


「あっ、よかった~」

「なんとか倒したな」


 私とNightは胸を撫で下ろした。

 だって、フェルノってば、ヒヤヒヤする戦いっぷりだったから。

 一瞬でも気を抜いたら多分やられてた。

 フェルノの並外れた反応速度だから何とかなったけど、あれがもし、一秒でも遅れてたら、フェルノは強制ログアウトだった。


「それにしてもあの姿。遠くて良く見えないが……」

「カッコよかったね」

「そうだな。一般的にドラゴンにはカッコいい印象がある。とは言え、加竜烈火か……“加竜”だけに“ドラゴン”か。なるほどな」


 今の、冗談で言ったんだよね?

 Nightがギャグなんて言わないもんね。

 私は驚いちゃったけど、Nightが一番らしくないのか、耳の先まで真っ赤になっている。

 きっと恥ずかしいんだ。私は分かってあげよう。うん、分かってあげた方がいい。


「Night、頑張ったね。偉い偉い」

「子供扱いするな。死にたいのか?」

「Nightはそんなことしないでしょ? ……うおっ!」


 Nightはいきなり拳銃を突き付けて来た。

 引き金に指を掛けていて、いつでも撃てるようにしている。


「もしかして本気?」

「どう捉えても構わない。だが、これだけは覚えておけ。私を子供扱いするな」


 Nightは威圧してきた。

 だけど私は動じない。

 代わりにフェルノを迎えに行くことを提案する。


「それよりNight、フェルノの所に行こうよ」

「話を逸らすな! だがまあ、その方がいいな」


 そう言うと、Nightも分かってくれる。

 拳銃をホルスターに戻すと、傾斜を滑り、フェルノの下へと向かう。

 その後を私も傾斜を滑り降りて付いて行く。

 だけど私は気付いてた。Nightは拳銃にストッパーを掛けていたこと。

 最初から撃つ気なんて無かったこと。それが余計に可愛くて、私は揶揄いたかった。




「ふぅ。あー、楽しいなー。もっと暴れたいよー」


 私達がフェルノの下へ駆け寄ると、フェルノはまだまだ暴れ足りなかった。

 腕をブンブン振り回すと、鋭い爪を剥き出しにする。

 宙に絵でも描くみたいで、ちょっと危ないけど、動物の赤ちゃんみたいで可愛かった。


「フェルノ、お疲れ様」

「あー、アキラにNight。お疲れー」

「そうだな。無事に倒したみたいでなによりだ」


 フェルノの近くにはジャイアント・トードが転がっている。

 白目を剥いて息絶えていて、今粒子になりかけている。

 消滅も時間の問題。本当に一人で倒しちゃうなんて、カッコよすぎだ。


「ありがとー。でもまだまだ暴れ足りないよー」

「あはは、部活で散々走ったり素振りしたでしょ?」

「それとこれとは全然違うよー」


 フェルノの体力は本当に無尽蔵。

 テニス部のそんなにキツくない部活終わりでも、無敵に元気いっぱい。

 私は呆れて笑っちゃったけど、フェルノからしてみれば、まだまだ足りなかった。


「少しは落ち着け」

「えー、せっかくのCU初日なんだからさ、少しは大目に見てよー」

「はっ。ところでNight、お前はあの加竜烈火だよな?」

「ん? そうだよ、私、加竜烈火。イェーイ!」

「そういうのは要らない。ってことは、あの全中三連覇のか?」

「ん? 全中三連覇……ああ、テニス!」


 フェルノはすっかり忘れていた。

 一瞬記憶の中から拾い上げる時間が発生。

 だけど何とか思いだすと、華々しい結果を披露した。


「凄いよねー。うちの中学、軟式テニスの総体で、まさかの三連覇しちゃうんだもんねー」

「その立役者が、お前、加竜烈火だとしてもか?」

「そっかなー? 私は目の前に来たボールを返して、最後まで相手とラリーを続けて、楽しく楽しく遊んでただけだよー?」

「あ、遊んでたか。そうか、だからお前は強いのか」

「ん? どゆこと?」


 フェルノはポカンとしていた。

 だけど、私もNightも気が付いてる。

 フェルノの強さ。それは自分を鼓舞するパッションセンスだ。

 本人がなんで気が付いていないのかは分からないけど、なにはともあれ、全中三連覇は凄い。


「あーあ、もっと強いモンスターいないかなー」


 フェルノは本当につまらなそうだった。

 まだまだ暴れ足りないだけじゃない。何処か、システム的な要因に囚われている気がする。


「ねぇ、Night。どうしてフェルノのテンションが高いの?」

「ん? いつもこうなんじゃないのか?」

「まぁ、確かに一回ボルテージが上がったらこうなることもあるけど……なんだか荒々しいよ?」

「そうだな。恐らくは“竜の力”が原因だろう。フェルノ、お前の種族はなんだ?」


 Nightはフェルノに訊ねる。

 するとポカンとしていたフェルノの顔付きが変わる。

 今にも吠えそうなポーズを取ると、フェルノは答えた。


「私の種族は、<ファイアドレイク>だよ! カッコいいドラゴン。凄いでしょー」

「ああ、凄いな。とはいえ<ファイアドレイク>か。想像通りだな」

「えっ、想像通りってどういうこと?」


 私には全然分からなかった。

 だけどNightだけが勝手に理解している。

 これ、訊いた方がいいよね? 私はNightに訊ね返す。


「Night、<ファイアドレイク>って?」

「炎を吸う竜と書いて、別名吸炎竜と呼ばれる、ドラゴン系のクリーチャーだ」

「凄い! なんか、カッコいいね」

「でしょでしょー。やっぱり竜ってカッコいいよね?」

「そうだな。とは言え、お前があの激レア種族を引き当てたのか、世の中意味が分からないな」

「ん? 私、これしか出なかったけど」

「もっと偶然だな。本当に意味が分からない」


 Nightは頭を抱えてしまった。

 如何してそんな顔をするんだろう。もしかして悔しいのかな?

 私はフォローしようと思って、Nightに言葉を掛けた。


「Nightの種族もカッコいいよ。<ヴァンパイア>でしょ?」

「そういうお前は……」

「私? 私は<ヒューマン>だけど?」

「「はっ!?」」


 な、なに? なにが起こっているの?

 急に詰め寄られた挙句、凄い険しい顔をされた。

 私、なにかやっちゃったかな?

 慌てて弁解すると、私はNightとフェルノに訊ねた。


「ど、どうしたの、二人共?」

「アキラってさ、昔から主人公キャラ好きだよねー」

「う、うん。嫌いじゃないけど?」

「だからと言って、このゲームで一番つまらないとされるハズレキャラ、<ヒューマン>を選ぶなんてな。はぁ、やっぱり変わり者だ」

「そうそう、アキラが一番変だよねー」


 なんで私が一番の変わり者認定されるんだろう。

 私は唇を尖らせると、不服な気持ちになってしまう。

 それでもここは冷静に意識を切り替える。

 そうすると、心を穏やかにさせた。


「二人共、ちょっと酷いよ?」

「「そうか」なー?」

「うん、怒っては無いけど、怒っちゃうかもしれないからね? 私、好きでこの種族選んだからね」

「好き好んで選ぶなんてな。やっぱり変わり者だ」

「そうそう、変わり者変わり者」


 何度も何度も煽られた。

 もうそれでいいや。

 私のテンションが若干下がると、全身が気怠くなる。

 だけどとりあえずジャイアント・トード戦は上手く行った。それだけは伝わると、私達はスタットへと戻るのだった。


「はぁ、なんで<ヒューマン>選んだらダメなんだろ?」


 私は帰り道もブツブツ唱えていた。

 その陰のオーラはNightやフェルノにも伝わる。

 だけど理由を教えてくれない。きっと私が傷付くからだ。

 とは言えもう傷付いている。これ以上深くなる筈ないと、私は分かっていたのに、全然教えてくれない。今更なと思いつつも、私は二人の優しさを受けて、敢えて訊かないことにしたのだった。

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