◇38 烈火に参上
いよいよ二章が始まりました。
ついに、烈火がやって来るぞ!
一ヶ月って早い。
気が付けば五月になっていて、私はこの数週間、ずっとCUで遊んできた。
そのせいかな? 少しずつだけど毎日が成長している。
もちろん、楽しい方に動いてくれていて、まさしく私のライフワークになっている。
「へぇ、楽しそうじゃん」
「うん、楽しいよ」
「私がいなくても楽しんでるね。なーんか妬けちゃうな」
私は通学路で烈火と一緒になった。
幽幻の居城:シャンベリーの出来事を纏めて楽しく話す。
すると烈火は頬をプクッと膨らます。
もしかして、嫉妬かな?
私はそう思うと、烈火のことを宥める。
「烈火、早く来てよね。一緒に冒険しよ!」
「うん、そのつもりだよー」
烈火は肩に掛けたテニスラケット・ケースの紐をギュッとの握った。
そんな素振りと顔色を見る。
私には伝わった。烈火は楽しんでいる。そう、これから楽しくなる証拠だ。
「烈火、もしかして一緒に遊べるの?」
「もっちろん! ようやく抽選予約していたVRドライブが届くからさー、これで一緒に遊べるね」
「本当!? それじゃあ楽しまないとね。待ってるから」
「うんうん。ちゃんとリードしてよねー。じゃないと私、いつもみたいにハッチャケちゃうよー」
確かに烈火は何でもかんでも楽しめる。
そのせいかな? 無尽蔵の体力を前に、どんなことをするか分からない。
まあ、流石に烈火もモラルが無い訳じゃない。
それでもきっと振り回されちゃうなと思い、今から覚悟を決めてみた。
「あっ、そうだ! 烈火、私パーティーを組んだんだ。その子と一緒でもいい?」
「おっ、オンラインゲームの良い所出てるねー。もちろん私はいいよ。あっ、でもさー」
「分かってるよ。烈火の性格に乗れるかだよね?」
「うーん、難しいかなー? きっと面倒な奴って思われるんだろうけどさー」
「あはは、そうだね。でも大丈夫。私も蒼伊も変わり者だから」
私は烈火を安心させる。
いや、きっと私自身が安心するためだ。
なんだか心の余裕が取り留められると、寧ろ好奇心の方が増す。
これからどんな冒険が待っているのかな? 私は放課後が楽しみになった。
「はっ、アキラの友達?」
「うん。今日からログインするみたいなんだけど、一緒に遊ぼうって約束したんだけど、ダメかな?」
私はCUにログインすると、Nightと待ち合わせをしていた。
スタットの噴水広場でベンチを一つ占領。
私は右端に座り、対してNightは左端。
手にはさっき買って来たらしいコーヒーの入ったカップを握り、ストローに口を付けて飲んでいた。
「どうしてそんなことを私に訊くんだ?」
「だって、Nightは群れるの嫌いでしょ?」
「確かに嫌いだが、勝手に決めつけられても困るな。私も他者が嫌いな訳じゃない。自分と相性の悪い相手と一緒につるむのが苦手なだけだ」
それって、人嫌いってことじゃないのかな?
そもそも、完璧に相性の合う人なんてそういない。
私はNightの性格を加味してそう思うと、Nightは私の友達に付いて訊ねる。
「なぁ、お前の友達ってどんな奴だ?」
「元気な女の子だよ」
「……よし、分かった。もう少し具体的に訊こうか」
Nightは私が真面目に答えたのに頭を悩ませる。
額を摘まむと、ムッとした顔を浮かべる。
どうしてだろう? 私はちゃんと答えたのに変なの。
「お前の友達ってことは、美桜高校の奴だな?」
「そうだよ」
烈火は当然、私と同じ高校の生徒だ。
御鷹市立美桜高等学校の一年生。しかも同じクラス。
「Nightは来栖学園だっけ?」
「それがどうした?」
「ううん、進学校なんて、Nightらしいって思っただけだよ」
「話を逸らすな」
対してNightの通うのは私立の高校。私立来栖学園。エスカレーター式の、進学校だ。
つまり頭が良い。制服もブレザーでキッチリしている。
そんな制服事情を軽く摘まんだ私は、話を元に戻した。
「おまえの友達はどんな性格なんだ?」
「あっ、それ訊いちゃうの?」
「訊いたらマズいのか?」
「いや、そのね、マズくは無いんだけど……烈火って、アグレッシブでポジティブでフレンドリーだから。Nightとの相性は絶妙に悪い気がするんだけど……」
「……最悪だな。帰る」
「あっ、帰っちゃダメだよ」
Nightはそそくさとベンチから立ち去ろうとする。
私は腕を押さえてなんとか待って貰う。
しかしNightの顔色はとっても、いや、かなーり悪い。
相当面倒な様子で、渋い表情を浮かべている。
「どうして私の相性最悪な奴が友達にいるんだ」
「そんなこと言われても、中学生の時からの親友だから」
「親友……か」
「? もしかして今、嫉妬した?」
「はっ!?」
私が“親友”って言葉を使うと、Nightの顔色がくすんだ。
表情に曇りが出て、何処かよそよそしい空気を立ち込めさせる。
ポーカーフェイスが上手い筈なのに、なんだか私には手に取るように分かっちゃう。
「そんなもの、私にあると思うか?」
「あるよ、人間だもん」
「何処かの詩人みたいな言葉を使うな……うわぁ!」
「? 別に何もしてないけど」
「こいつ……」
私は本当に変なことはしていない。
Nightの髪にゴミが付いていたから取ってあげようとしただけだ。
それなのに体をのけ反られてしまい、私には訳が分からない。
首を捻ると、何故だかNightの機嫌が悪くなる。
「まあいい。とにかくそいつ……えっと?」
「烈火だよ。加竜烈火!」
「その烈火って奴が来るってことだな、まあパーティーを組むのは構わないが、それよりも組むべきは……ん、今加竜って言ったか?」
「うん、言ったけど……なに?」
何か引っ掛かる所でもあったのかな?
私には分からなかったけど、Nightのセンサーに反応したらしい。
それからNightは顎に手を当てると、考える素振りを見せた。
思考をグルグルと掻き混ぜると、Nightは思い起こした。
「まさか、加竜ってあの!」
「私がどうかしたのかなー?」
思いだしたNightに言葉を重ねた。
だけどそれは私でも無ければ、Nightでもない。
ソウラさんとも違う、一体誰が何処から?
そう思ったのも束の間、噴水広場には明らかに初心者な格好をしたプレイヤーが居た。
「あっ、烈火」
「お前が加竜……」
「そうだよ! でも今は違うかな? 私は加竜烈火、だけどここでは烈火の如く燃え上がる、獄炎が参上、インフェルノだよ!」
全然言葉に意味が無い。繋がってもいない。
自分の世界を展開し、周りを巻き込むハイテンションなその姿。
私は知っている。間違いない、目の前に居る赤髪の少女こそ、加竜烈火なのだ。
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