◇35 あー、奇襲されるんだー
このフラグは確実に回収しますよ。
鎧騎士を倒した余韻を味わっていた私達。
と言いたいけど、単純に疲れただけ。
五分も座り込んでいて、私はNightにチラチラ視線を向ける。
「Night、それがNightの本当の武器?」
「ああ。だが見ての通りだ」
「〈十字架の剣〉だっけ? カッコいいよね」
「何処がだ。この剣を偶々手に入れたはいいが、重くて長いから使い勝手が悪い。私には性に合ってない」
「あはは、そうなんだ……」
Nightの口からは愚痴しか出なかった。
しかも自分のメインウェポンに対してだ。
私は苦笑いを浮かべると、Nightは剣をインベントリに強制転送すると、身軽になったので立ち上がる。
「よし、もう少し探索を続けるぞ」
「ええっ!? ちょっと待ってよ。あんなに苦戦したんだよ?」
正直、今日はもういい。
と言うより、しばらくはもういい。
私はステータスを確認して、レベルアップしたから満足したのに、Nightがまだ探索を続けようとするので、全力で止める。
「鎧騎士だけでこんなに苦戦したのに、まだ探索したいの?」
「したいわけじゃない。むしろここから外に出ればゾンビの群れに飛び込むことになるぞ」
「あっ……」
確かにこのまま外に出たら、せっかくお墓に消えたゾンビ達が、また出てきちゃう。
そんなことになったら、疲労した私達じゃ、逃げる間もない。
回復ポーションもほとんど飲み干してしまって、私は苦汁を舐めた。
「それじゃあ探索する?」
「最低限、ここから一発で外に出る方法を探すのがいいな」
「そんな方法あるの?」
「一応あるにはある。とは言え、一番有名な転移用の転送場は隠しダンジョンにあるとは思えないが……」
なんだろう。とても肝心なことを言っている気がした。
だけどNightは気にせずに階段の方に向かってしまう。
私も一人にされるのは困るので、Nightの背中を追った。
「待ってよ、Night!」
私は罠が仕掛けられた階段の段差を上手く飛ばす。
とりあえず胸を撫で下ろした私は、Nightの隣を歩いた。
「Nightはこのお城のことどう思う?」
「どうとは?」
「あの子が言ってたよね。怪物がいるって。さっき倒した鎧騎士って、怪物なのかな?」
正直、私の認識の違いだけど、鎧騎士は怪物じゃない。
怪物って、もっと具体的なモンスターだと思う。
考えすぎなのかな? そう思ったけど、Nightは怖いことを言う。
「恐らくは、鎧騎士は一端に過ぎない」
「一端?」
「つまり、怪物と呼ばれたモンスターの余波だろうな。完全に、雑魚の部類だろ」
「えっ? あれで雑魚なの。それじゃあ怪物って、どれだけ強いんだろう?」
正直、今の私達じゃ勝てる未来が見えない。
だって、鎧騎士一人にあれだけ苦労したんだ。
私は不安になるも、気にしちゃダメだ。
ここは良い風に意識を切り替えると、私はNightに訊ねる。
「私達でこのお城を解放しようね」
「ふん、ここまで来たんだ。そのつもりだ」
Nightは否定するかと思った。
だけどさっきと同じで、Nightはやる気を見せてくれる。
私は嬉しくなると、ついつい別のことを訊こうとした。
「そう言えばNightの固有スキルって凄いよね?」
「ん?」
「拳銃を作ったの、Nightの固有スキルだよね? どんな名前なの?」
「そんな物を訊いてどうする?」
「どうもしないけど?」
「なっ、はぁ!?」
Nightは一度立ち止まり、私の顔を覗き込む。
額に皺を寄せると、怪訝な表情を浮かべていた。
なんだろう、もしかして私何かしちゃった?
気を悪くしたのかと思ったけれど、Nightはそんなこと無いらしい。
むしろ、Nightは頭を抱えてしまった。
もしかしなくても、私が変なこと訊いちゃったからかな?
悪いとは思ったけれど、Nightは淡々と呟いた。
「少しは興味を持て」
「興味は持ってるよ? だけど話したくないのかなって」
「そんなことはない。私の固有スキルは【ライフ・オブ・メイク】」
「ライフ・なに?」
「一時的にHPの最大値を消費することで、ファンタジー世界には存在しない、私の脳内に蓄積された情報を基に生み出すことができる。とは言え、作れるものには限りがあるがな」
「……凄い。怖いくらい凄い」
私はNightの固有スキルを訊いてビックリした。
私の【キメラハント】も大概だけど、Nightの固有スキルも普通じゃない。
ゴクリと喉を鳴らすと、Nightって……
「Nightって、ファンタジー無視してるよね」
「お前な!」
階段を上りながら、Nightは私に怒鳴り声を上げる。
もしかして恥ずかしかったのかな?
自分でも分っているせいか、耳まで真っ赤になると、ムキになってしまう。
「あはは、ごめんね」
「まあ私も分かっているが、私自身、ファンタジーよりもこっちの方が性に合ってる」
「やっぱりファンタジーじゃないよね?」
「だからそれは分かってい……はっ!?」
ガッシャ―ン!
その瞬間、Nightは私を押し退ける。
肩から拳銃の銃口を突き出す。
なにが起きたの? 私は振り返るも、視界が真っ暗闇に染まった。
少なくとも分かるのは、丁度螺旋階段を上る中で、窓があった。
その窓が何故か突き破られ、ガラス片が飛び散る。
突き破って来た何かも腐臭を漂わせていて、私とNightに襲い掛かった。
バン、バン!
「【キメラハント】+【甲蟲】……えっ!?」
「クソッ、こんな所で……」
私もNightも善戦した、つもりだった。
だけど全く間に合わない。
私とNightの体は、窓を突き破って来た何かによって引き裂かれ、意識が途絶えて行くのを感じる。
今の一瞬でHPを完全に〇にされた。
頭から下への感覚が薄れて行く。
もしかして、いや、もしかしなくても私とNightは……
「「ああ、負けちゃった」か」
完全に油断していた。
ここ、幽幻の居城:シャンベリーは怪物達の宝庫。
隠しダンジョンなんだから、どんな罠が仕掛けられていてもおかしくないのに、油断して奇襲されてしまった。完全にミスだと悟った頃には、私達はシャンベリーから、ううん。ゲームの中から強制ログアウトさせられていて、結局負けて帰ることになってしまった。
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