表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/230

◇34 VS鎧騎士3

この改変前との差。

これは何なのか、私にも分からないのだが……

 Nightは両手に剣を構えていた。

 だけどその形状はとても特徴的。

 なんたって、形が十字架そっくり。おまけにNightよりも大きな剣だ。

それこそ全長が二メートルを優に超えていた。


 おまけに凄く重そうだ。

 Nightの腕が今にも折れてしまいそう。

 腕がへたって、切っ先が床に付いている。


「はぁはぁ……クソッ、重いなこの剣」

「それは、そうだね」


 アキラはようやく囮役から解放された。

 だけどNightの頼りなさを見ると、少しだけ不安になる。

 なにせ、鎧騎士の関節部を抑え込んでいる紐はワイヤーで、全てがNightの剣に繋がれていた。


「Night、色々準備してそれでおしまい?」

「おしまいだと? このワイヤー量産に、どれだけ掛かったと思っているんだ」

「えっと、それは知らないけど……それでどうするの?」


 私はNightに訊ねた。

 するとNightは表情を濁しながら、私に言った。


「このワイヤーを使って鎧騎士をバラす」

「ば、バラす?」


 なに言ってるんだろう。どうやってバラすんだろう。

 ワイヤーを何本も何本も使って、それを剣に紐付けてどうするのかな?

 そう思ったのも束の間、鎧騎士は冷静になってしまった。


 ガシン!


 軽く腕を動かすと、Nightは引き寄せられる。

 フラッと足がもつれると、そのまま床に転びそうになる。

 その瞬間、私は咄嗟に鎧騎士を蹴り込むと、Nightは引き寄せられた体重の動きが軽く成ったので、なんとか立っていられた。


「大丈夫、Night!?」

「あ、危なかった……クソッ。やっぱり私には、この役回りは不可能か」


 そう言うと、早々に作戦を変える。

 ここまで用意した時間は何だったのか。

 そう思わせられてしまい、剣の代わりに拳銃を手にする。


「今度は拳銃で撃つの!?」

「最初からそのつもりだ」

「どういうこと?」


 私は困惑してしまった。

 だけどNightは拳銃を手にすると、引き金を引く。

 弾を撃ちだすと、鎧騎士の背中にカツンと当たる。


「やっぱり弾かれた」

「いや、そうじゃないぞ。私に狙いは……」


 Nightの考えていることがさっぱり分からなかった。

 なんたって、鎧騎士に拳銃を使って幾ら攻撃してもダメージが無い。

 なんたって中身が無いからで、HPが減る様子もない。


 しかしNightは残った弾倉を全て消費する勢いで引き金を引き続ける。

 それこそ残りを全部使う勢いだ。

 私はおかしくなったのかなと思ったけど、Nightのオッドアイは確信していた。


 バン!


 そのうちの一発は放たれる。

 撃ち出された瞬間、鎧騎士は面倒に思ったのか振り返る。

 するとワイヤーが捻じれて絡まると、腕と足がギュッと引き寄せられた。


 ガチャン!


「嘘っ!?」

「これが一つ目だ」


 鎧騎士の体がギュッと引き寄せられると、ワイヤーに巻き付かれた。

 腕と足がくっ付くと、金属の体が擦れ合う。

 ギシギシと軋む音を立てると、鎧騎士は苦しそうで動けなくなった。


「どういうこと!? さっきまであんなに苦戦してたのに」

「私はなにもしていない。やったのは、鎧騎士自身だ」


 確かにNightの言ってることは本当だ。

 ワイヤーを関節部に絡みつかせると、鎧騎士が半回転してワイヤーが全身を縛り上げただけ。

 これは全部鎧騎士だけで完結していて、Nightはあくまでもきっかけを作っただけだった。


「そして次にやるべきは……こうだ」


 そう言うと、Nightは拳銃を構える。

 残っている弾の数には当然限りがある。

 見れば拳銃も変えていて、威力の高い回転式拳銃から、弾数の多い自動拳銃に変えている。


「ええっ、捕まえたのに撃っちゃうの?」

「当り前だ。逸れに本当にやるべきはここからだがな」


 そう言うと引き金を引き、銃口から弾が撃たれた。

 その射線は的確だった。回転しながら鎧騎士の関節部に命中していく。


 カツン、カツン、カツン!


「き、効いてないけど!?」

「それも承知の上だ」


 あまりにもなにしているのか分からなかった。

 多分、Nightには既に勝ち筋が見えているんだと思う。

 そうじゃないと、こんな無駄にも思えることしないから。


 バン、バン!

 カツン、カツン!


 バン、バン、バン!!

 カツン、カツン、カツッ!?


「音が変わった!?」

「この瞬間を待っていた」


 Nightは鎧騎士の関節部だけを狙い続けていた。

 すると金属の音が少しだけ変わる。

 キュッと鳴り、鎧騎士の腕がダラーンとなりそうだ。


「後は鎧騎士の出方次第だが……来たぞ!」

「うわぁ、向かってきた。こっち来るよ!」


 鎧騎士は流石に分が悪いと感じたのか、状況を一変させようとした。

 そう、普通に走って来た。

 槍を手にし、私達に近付いたら勝てると判断したんだ。


 だけどその瞬間、Nightはほくそ笑む。

 まるで予想していたみたいで怖い。

 

「なに考えてるの?」

「今に分かる。アキラ、私と一緒に剣を引け!」

「えっ?」


 剣を引くってなに? 具体的に物理でってことかな?

 私は困惑するも、Nightの武器、十字架状の剣=〈十字架の剣(クロス・ブレード)〉を引っ張った。


「せーのっ!」


 思いっきり体重を後ろに掛ける。

 Nightも非力ながら頑張ってくれている。

 すると繋がれたワイヤーがギュルンと音を出し、鎧騎士の関節部に巻き付いていたワイヤーがグルグルと回転を始めると、そのまま……


 パキン、ガッシャ―ン!!


 鎧騎士の体がバラバラになった。

 私は目を丸くしてしまい、一瞬黙る。

 何が起きたの? 正直訳が分からない。


「本当にバラしちゃった?」

「思った通りだ。よく稼働する関節部はそれだけ消耗しやすいからな。弾を撃ち込み続けていれば、いつかは外れる。おまけにワイヤーも絡んでいたからな。予定より早く済んだ」

「これ、全部計画的ってこと?」

「当り前だ。とは言え、現実でそう上手く行かせるためには、細工が必要だが、なっ!」


 鎧騎士の体が更にバラバラになる。

 Nightがワイヤー本体を引っ張ったからで、絡まっていた足まで外れてしまう。

 この調子で全部外れれば。そう思ったけど、まだ頭と胸が繋がっている。


「嘘でしょ!? こんなにバラしたのに」

「やはり肝心の本体は頭か。アキラ、お前が叩け!」

「わ、私!?」

「お前のスキルなら倒せる。頭を飛ばして、息の根を止めてやれ」


 果たして止める息があるのだろうか。

 そんなくだらないツッコミは置いておく。

 代わりに私は地面を蹴り上げると、丁度クールタイムが開けたスキルたちを解放した。


「【キメラハント】+【甲蟲】+【灰爪】……うわぁ!」


 だけどスキルを使う前に、鎧騎士は最後の抵抗を見せる。

 手にしていた槍を、腕が外される前に投げつけて来た。

 流石にスキル発動に間に合わない。腕を振る時間が無い。


「お願い、私に力を貸して! 【キメラハント】+【幽体化】!」


 私は少女に託されたスキルを使う。

 すると突然体から力が抜けた。

 一瞬意識が覚醒すると、すぐさま異変に気が付いた。

 Nightの声が上がったからだ。


「アキラが消えた!? おい、何処に行った」


 何処にいったもなにもここに居る。

 私はおかしなことを言うなと思ったけど、飛んで来た槍も私の体を素通りする。

 あれ? もしかして本当にいなくなってるのかな? 私、ここに居ない扱いなのかな?


「もしかして、【幽体化】って“幽霊になる”ってこと?」


 そう思った瞬間、合点が行ってしまう。

 私の姿が消えたのは、肉体が無いから見えないせい。

 攻撃がすり抜けたのはそもそも物理的な干渉が無いから。

 身震いして怖くなるも、私はできることした。この状態で近付くだけ近付く。


「今が最大のチャンス! せーのっ、あれ?」


 私は幽霊になった状態で鎧騎士に近付く。

 この状態で攻撃すれば一発だ。

 不意打ちの一撃を喰らわせようと拳を振るうが、攻撃は鎧騎士を貫通し、すり抜けてしまう。当然ダメージは無かった。


「あっ、そっか。私が幽霊だから、いくら攻撃しても意味無いんだ」


 こんなカッコいい場面で私はドジった。

 だけどそれならやり方を変えればいい。

 そう、この最大の防御スキルを最大の奇襲攻撃スキルにしてしまう。


「【幽体化】解除。からの、【甲蟲】!」


 私は鎧騎士の側頭部目掛けて拳を振るった。

 突然現れた私のパンチを鎧騎士は反射的抜捉える。

 だけど私の方が速い。いくら動けても止められる筈がない。

 その予想通り、私のパンチが確実にヒットすると、鎧騎士の頭はヘルム事外れて吹き飛ばされた。


 ボーン!

 ゴトン、ゴトン、ゴトン、コロッ!!


 床に打ち付けられたヘルムは、最終的に動かなくなる。

 だけど私は復活されても困るので、ヘルムに最後の一撃を加える。

 ここまで怖い目に遭ったお返しのつもりだ。


「ごめんね。それっ!」


 ズドン!


 【甲蟲】で強化された拳の攻撃がヘルムに最後の一撃を加えた。

 金属は凹み、装飾は剥がれ、無残な姿にされてしまう。

 そのまま潰されてヘルムの機能を失うと、鎧騎士は姿もろとも消えてしまった。


「た、おせた?」

「ああ、無事に倒せた。とは言え、流石は隠しダンジョンだな。私も疲れた」

「あはは、そうだよね」


 私もNightも疲労が溜まっていた。

 流石に今のレベルと人数じゃ隠しダンジョンは無理。

 そう判断すると、床に座り込んで力を失った。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ