◇31 鎧騎士が降って来た!?
少女に託された想いを胸に、アキラたちは……
少女が目の前から消えてしまった。
代わりに私は新しいスキルを手に入れた。
しかもユニークスキルと言うらしい。
何が違うのか、私にさっぱり分からなかったけど、確信を持って言えることがある。
「ありがとう、大切に使うね」
私はソッと目を閉じると、胸に手を当てる。
私の【キメラハント】の中に新しいスキルが獲得されると、私はスキルを確認しようとした。
しかしNightが先に私に声を掛ける。
「消えたな」
「う、うん。そうだね」
「どうやらさっきの子供がこの城、シャンベリーの本当の主人だったらしい。けれど……」
「モンスターに襲われて、みんな死んじゃったんだね。Night、私……」
勝手な約束をしちゃった。
これは全部私の責任だ。
Nightを巻き込む必要は無い。にもかかわらず、Nightは私の肩に手を伸ばす。
「まあ、仕方ないな。取り付けた約束だ。今は無理だろうが、叶えてやるしかない」
「Night、協力してくれるの?」
「ふん、今更引き下がれないだろ。それに、見返りはあった筈だ……そうだろ、アキラ」
Nightは鋭い眼光で私のことを睨んだ。
もしかして、聡明な頭脳で全部見破っちゃったのかな?
それって凄い、私に隠し事が効かないのと同じで、Nightも大概ぶっ飛んでた。
「なんだ、その目は。人を化物とでも思っているようにしか見えないぞ」
「えっ、そんなこと無いよ?」
「嘘だな。それで、お前はなにを貰ったんだ?」
Nightは私に詰め寄って来る。
この流れ、説明しないとマズいよね?
でも、ちゃんと説明して受け入れてくれるのかな?
正直、私だったら「なにそれ?」とか言っちゃうと思った。
「理解できないかもしれないけど、落ち着いて聞いてね」
「ああ、大抵のことは理解してやる」
「それじゃあ簡単に説明するね。私の固有スキル、【キメラハント】はね、スキルを獲得できるんだよ。倒したモンスターとか、さっきみたいにNPCから貰ったりして……ねっ」
「ふーん、凄いスキルだな。つまりお前は際限なく無制限に強くなり続けるってことだな。使い方さえ間違えなければ、強スキル以外の何物でもないか……どうした?」
「いや、なんでもないよ?」
驚いちゃった。まさか普通にスルーされちゃうなんて思わなかった。
私的に、もっと驚かれたり、感心して貰えると思っていた。
だけどNightの頭脳の前にはただの情報でしかなく、普通に受け入れてしまった。
だからだろうか。私も平静を装っちゃった。
「お前のスキルが強力なことは分かった。それよりこれからどうする?」
「どうするって?」
「このまま探索を続けるかどうかだ」
「……私は止めた方がいいと思うけど」
Nightの意識はシャンベリー探索に向いていた。
だけど私的に、今日はもうお腹一杯。
ソウラさんへの借金返済は難しいけど、なんだか嫌な予感がする。
だって、あの子の顔を見ていたら、下手に探索しちゃダメな気がするんだ。少なくとも今はまだ、レベルも何もかもが足りないから、危険すぎる。
「それはレベル的にか? 確かにレベルではここは隠しダンジョンだからな。モンスターの強さも搭載している成長AIもお墨付きだろう」
「だよね。それじゃあ帰った方が……」
「とは言え、このゲームじゃそれは普通だ。モンスターの方が強い、それが仕様だからな」
あんまり聞きたくなかった情報だ。
私の顔色が悪くなると、Nightは落ち着けようとする。
「とは言えあれだ。このゲームに置いてレベル差なんてものは合ってないようなものだ」
「それって励ましてる?」
「どう受け取っても構わない。が、レベル差を覆せるのがこのゲームの自由度の高さだ。ログインする度に、その日の体調をAIが自動的に測定し、ステータスのパラメータを変更する」
「えっ?」
なんだろう、それ。完全に初耳だ。
私はステータスを見た時の謎が少しだけ解かれる。
だけど全然嬉しくない。だって、私みたいなゲーム初心者にはよく分からないものだからだ。
「それになにより、自由度の高さは発想の転換だ。どれだけ相手が強かろうが。大抵の場合はどうにでもなる」
「ううっ、それは慣れてる人の考えだよ」
「そうだな。とは言え、このゲームの旨味の一つだ。それだけは覚えておけ。と言うわけだ、とっとと行くぞ」
「ううっ……分かったよ」
Nightはお城の探索を続けようとする。
私も上手い具合に丸め込まれると、背中を丸めて付いて行く。
その瞬間、私の背筋が凍った。なんだか嫌な感触がしたからだ。
「Night、待って!」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
「そうじゃなくて、なんだか嫌な予感が……」
「ん? 根拠もない野生の勘かなにかか? 私はそう言ったものは……」
絶対に信じないのは分かってる。
だけどちょっと待って欲しかった。
目で合図を送ると、Nightは「はぁ」と溜息を付き、一歩立ち止まる。
するとその拍子に、頭上のシャンデリアから何かが落ちた。
ゴトーン!
「「えっ?」」
ふと振り返ってしまった。
あと一歩進んでいたら、私かNightにどちらかの頭に直撃していた位置。
そこに丸い何かが落ちて来ると、硬い金属質の何かが転がっていた。
「なにか落ちて来たな。しかも私達に進路だぞ」
「危なかったね。止まって良かったよね?」
「そうだな。とは言え、これは一体……ヘルムか?」
「ヘルム? それって西洋の兜だよね? どうしてそんな物が落ちて来たの?」
Nightは落ちて来たヘルムを手に取ると、警戒しながら調べる。
私も如何してそんなものが落ちて来たのか気になる。
だって、丁度頃合いを見ていたみたいで薄気味悪いからだ。
「さぁな。少なくとも状況を考えても、狙っていたのはまず確実だな」
「ね、狙ってた? なにを?」
「決まっているだろ。私達の命だ」
Nightの言葉を聞いてハッとなる。
そう言えばもなにも、ここは隠しダンジョン。
小序やその家族を殺し、今もこのお城の中を徘徊する怪物がわんさか居る。
その刺客が襲って来たとすれば、私達は既に狙われていることになった。
「マズいよ、Night! 流石に今のままじゃ」
「そうだな。流石に行動が早い。一旦体勢を立て直した方がいいかもな」
Nightは前言撤回。判断も行動も早かった。
素早く切り替え、ヘルムを床に返し、シャンベリーから出ようとするので、私も背中を追う。
けれど軽快な足取りを邪魔するように、私達の目の前に何か落ちて来た。
グサッ!
「うわぁ、今度は槍?」
「随分と攻撃的なモンスターだな」
「感心してる場合じゃないよね? 急いで逃げ……」
「いや、それはもう不可能だ。既に私達は……」
Nightの言葉が止まった。
その直後、背中を刺すような感触がじんわりと打つ。
私達の足を止めるには明らかに充分で、滲んだ汗が頬を流れる。
「Night、背後になにかいるよね?」
「いるだろうな」
「振り返る?」
「その必要は無い。私達は帰るだけだ」
そう言うと、Nightは扉に向かって歩いて行く。
しかしその手は腰の拳銃を握っていた。
いつでも反撃できる用意をしていて、私も短剣を握っていた。
「そうだよね。戦う気は無いもんね」
「ああ、私達にはな」
そう言うと、急に威圧感を感じ取る。
金属が擦れる音と共に、何かが走って来る音がする。
ゾクリとする感触と共にもはや殺気に変わると、私達は振り返った。
「「やっぱり来るよね」よな」
私とNightは同時に攻撃に転じた。
けれど私は驚いてしまって、一瞬だけ判断が遅れる。
と言うのも、目の前に居るそれは私の思っていたモンスターじゃない。
見た目は想像通り騎士。
所謂人型モンスターで、素手で攻撃を仕掛けていた。
だけど肝心の頭が無い。ヘルムを着けているとかじゃなくて、完全に“中身が無かった”のだ。
「な、なにこのモンスター!?」
「鎧騎士、しかも中身が無いと来たか。これは流石にマズそうだ」
Nightの口調が変わった。
それもその筈、頭上に目を凝らすと名前と一緒にレベルが表示される。
鎧騎士:レベル13と来た。うん、全然勝てる気がしないんだけどな、私は無理だと悟ってしまった。
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