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◇30 青い炎の少女

新キャラ登場!

この子はプレイヤーじゃないよ。

 私とNightの前に現れた炎は少女の姿に化けた。

 流石に驚いてしまい、お互いに黙り込んでしまう。

 それもその筈、目の前の炎はモンスターでもなければ、盗み聞きしていたプレイヤーでもない。まさかのNPC判定が出ていた。しかも友好的だ。


「NPC?」

「そうだな」


 とは言えNPCだからと言って対応は変らない。

 なにせこのゲームのNPCはちゃんと自我を持っている。

 しかも高性能なAIを積んでいて、この世界で生きている。

 そこをNPCだからと言って差別なんてしたらもっての外だった。


「どうしたの? なにかあった?」


 まずは優しく声を掛けてみる。

 見た所私達よりも小さい子。

 多分イメージ的には中学生かな?

 それくらいの見た目と容姿をしていて、私はソッと近付いた。


「出て来たってことは、なにか意図があるんだな。早く答えろ」

「Night、そんな言い方ダメだよ。ごめんね、私の友達が」

「チッ、私が悪者みたいにするな」

「今のはNightが悪いよ。ねぇ、貴女名前は?」


 私はまず、友好的に接する。

 自分よりも年下の子に合わせるように、腰も少し折る。

 すると少女は私の方をジッと見る。瞳がしっかりとしていて、全身が青い炎の包まれている意外じゃ、普通に大人しそうな女の子にしか見えない。


『お姉さん達、ここは危険だよ。早く帰って』

「えっと、危険ってこのお城だよね? やっぱり罠が多いから?」

『うん』


 危険ってやっぱり罠の量だった。

 確かに少しでも気を緩めたら一発ゲームオーバーもあり得る。

 だけどそれは承知の上だった。


「問題無い。私達が罠如きでやれると思うな」

「威勢は良いけど、その口調……」


 私も疲れてきちゃった。

 Nightはどんな相手にも高圧的で、決して曲げようとしない。

 完全に目上に立っていて、謙虚に努めようとする意思を感じなかった。


「ごめんね。でも私達はちゃんと罠を避けるから大丈夫だよ。教えてくれてありがとう」


 私は優しく声を掛け、頭を撫でようとした。

 その瞬間、青い高温の炎が、私のジャケットに引火しそうになる。

 普通に熱い。一体この子は何者? そう思った矢先、少女の目が私と合う。


『お姉さん、このお城には罠以外にも怖いものがたくさんあるんだよ』

「怖いもの? モンスターとか?」

『うん。私もそれで死んじゃった』

「……えっ?」


 NPCから衝撃発言が飛んだ。

 多分、所謂、そうあれだ。設定って奴だ。

 だけど、それでもかな? 例えNPCから出た言葉でもしっかりと重みがあって、私の胸をグサッと打つ。


「モンスターに襲われて死んじゃったの?」

『うん。このお城にはね、絶対に解いちゃいけない怪物がいるの』

「怪物? ちなみにどんな形をしてるの?」

『ごめんなさい。思いだせなくて……』


 少女は悲しそうに俯いた。

 これが本当に偽物なのか。本当に目の前に人間がいるんじゃないのかな。

 私の目にはそう映り、なんだか同情したくなる。


 だけどそれで折れちゃダメだ。

 私は強い精神を持ってる。持ちたいと思ってる。

 誰かの悲しみを受けても、それで悲しんじゃっても、絶対に折れない。悲しんで同情しちゃったら、きっともっと辛くさせるからだ。

 だからこそ、想い込みを強く抱き、私はもう一度少女の頭に手を置く。


「おい、アキラ!?」

「大丈夫だよ、危険なことはしないから。でも、今は無理かもしれないけど、いつか貴女を殺した化物も私達が倒すから」

『えっ?』


 きっとこの子はこのお城に囚われているんだ。

 強い感情があるからこそ、炎も青く力強い。

 それは恨みとかそんな悲しいものじゃなくて、次にこのお城に立ち入って、バカみたいにモンスターに挑んで無残に殺されないように忠告するため。優しいからこそ、こうしてここに残ってくれているんだ。そんなの、優しい子じゃないと無理な話だった。


「だから安心して。私達はちゃんと忠告も聞くし、ちゃんと注意するから。だから、もういいんだよ。このお城は私達が解放するから」

『どうして、そこまでしてくれるの?』

「うーん、私がそうしたいから? あっ、でもでも、今じゃないからね。今は無理だからね」


 私は少女の肩を掴むような姿勢を取ると、挙動不審な態度を取る。

 と言うのも、そんな約束まだできない。なにせ圧倒的にレベルが足りない。

 今の私のレベルはグレーウルフを倒してから成長していない。

 なんとレベル3で隠しダンジョンに来てしまった人だった。


「お前な、できもしない約束をするな」

「えっ、でもいつかこのダンジョンは攻略するでしょ? そうしたら、この子も解放されて……あれ!?」


 私はふと視線を外してしまった。

 だけど少女に視線を戻すと、何故だか炎が揺ら揺ら動いている。

 それだけじゃない。少女の姿が徐々に薄くなっていき、なんだか透明感が強まっていた。


「ど、ど、ど、どうしたの!? 急に体が透けて……」

『お姉さん、ありがとう。初めてこのお城に来てくれて、そんなこと言ってくれるなんて、思わなくて……私、嬉しくて』

「ええっ、私達が初めてなの!?」


 それじゃあずっとこの子はこのお城に居たんだ。

 誰にも会えず、誰にも言葉を交わせず、凄く寂しい思いをしていたんだ。

 私は気持ちを受け取ると、胸をソッと抑えると、少女と目を合わせる。


「安心して、私達は本当に大丈夫だから」

「その言い方、大丈夫じゃない奴だぞ」

「Night、ちょっと黙って。ねっ、あんな風に言ってるけど、私もNightもなんとかできるから。だから信じて」

『うん……お姉さんにならこのお城のことも、私達を殺したあの怪物達も、私の唯一の能力も託せるから……』

「ん? 託すって、なに」


 不思議な言葉を受け取った。

 私は首を捻ってしまうと、少女が私の手をギュッと握ってくれる。


 その瞬間、一瞬だけ冷たい体温を感じた。

 だけど徐々に温まると、少女の体を燃やす青い炎がより一層強く燃えた。


「どうしたの、急にさっきより燃えて……しかも、ドンドン透けてる」

「おい、まさか消えるんじゃないよな? まだお前には訊きたい話が……」


 少女の体がドンドン薄くなっていく。

 今にも消えてしまいそうで、まるで透明人間だ。

 もしかして、いや、もしかしなくても時間が無い。

 私は目の前で消えてしまいそうな女の子がNPCであっても引き止めたい。

 それが人間の性、この世界のNPCは生きているんだ。


「待って、消えちゃダメ!」

『私の能力、お姉さんに託すね。私の、私だけのスキル……』

「なに言ってるの? スキルがなんって……あっ!」

『お願いします、お姉さん。シャンベリーの小さな主人として』

「……消えちゃった」


 そう言い残すと、少女は目の前から消えてなくなった。

 一瞬にしていなくなった訳じゃない。

 私が手を伸ばしても、何も触れることができず、代わりに少女の体をすり抜けてしまった。


「ふぅ、消えたか」

「私、どうしたらよかったのか? あれでよかったのかな?」

「さぁな、私には分からない」

「気休めだよね。あれじゃあ……」


 私は根拠も無いことを言っちゃった。

 それで安心したのか、少女は私の目の前からいなくなった。

 如何しよう。本当にこれが正しかったのかな?

 私には分からなかったけど、それでも自信を持つことにした。


「それしか今の私にはできないもんね」

「そうだな……ん?」


 Nightは唸った。私の手が止まったからだ。

 それもその筈、私の目の前に文字列が出る。

 ゲームの仕様と言うか、システムだった。



——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——

——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、××:ユニーク・スキル【幽体化】を追加しました——



 私は少女に託されてしまった。

 これはあの子の、シャンベリーの小さな主人のスキル。

 私だから受け取ることができた特別なもので、これこそが【キメラハント】の境地、譲渡を垣間見るのでした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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