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◇3 謎の配達物

ちょっと長めです。

だけど初期案より詳しめです。

 土曜日のお昼。

 私はキッチンで野菜炒めを作っていた。


「ふふーん」


 慣れた箸捌きでフライパンの中のニンジン、モヤシ、しなしなのキャベツ、きくらげ、豚肉を掻き混ぜる。

 そこに塩コショウを少々かけ、味を軽く整えると、食欲を誘う香りがした。


「休日の内にいっぱい作っておかないと」


 私は休日と言うことで、学校のある日はできない諸々の雑務に追われていた。

 けれど速やかに片づけると、少し余裕も出ていた。

 あくまでもいつも通り。私は休日をいつも通り淡々と消化していた。


 ピンポーン!


 そんな中、インタホーンが鳴った。

 こんな時間に誰だろう? 私は不思議の思いテレビモニターを覗き込む。

 そこには誰もおらず、代わりに玄関先にほどほどサイズの段ボール箱がぽつんと置かれていた。


「置き配? それにしても、配送業者の人、いなくなるの早くない?」


 私は少しだけ不気味に感じてしまった。

 と言うのも、こんな時間に配達があるのが珍しい。

 おまけに私はなにも注文していないので、謎に荷物が届くのが怪しい。


 おまけに配送業者の人がいなくなるのが早すぎる。

 もしかして悪戯? そんな風に思ったけれど、受け取らない訳にも行かない。

 私は野菜炒めもほどほどに仕上げ、玄関先へと向かった。


 ガチャ!


 玄関先までやって来ると、扉の前に段ボール箱が置いてある。

 ふと目を離すと、目の前の道路にトラックの姿は無い。ましてや足跡も無い。

 私の住んでいるのは一軒家。今は私しか住んでいないし、住宅地の外れなので、人気も少ない。ましてや休日とは言えこの時間だ。私は非常に怪しむも、とりあえず段ボール箱を取る。


「怪しい所は、無いみたいだけど……なんで、家に届いたんだろう?」


 私は怖がりながらも段ボール箱を手にした。

 重さは……正直軽い。

 訝しい表情を浮かべながらも、段ボール箱からは変な感じはしない。

 ふと送り主を見て見ると、私は首を捻った。


「株式会社エルエスタ・コーポレーション? あれ、この会社、昨日烈火と話してた……なんで?」


 送り主が何故かエルエスタ・コーポレーションになっている。

 この会社はマルチに色んな事業を積極的に執り行っている。

 つまり凄い会社なのだが、別に私とは無関係だ。


「もしかして、お母さんにかな? 空輸で送っても、帰って来ちゃうから……あれ?」


 私はきっとお母さん宛だと思った。

 そうに違いない。だって私には関係が無い。

 そう思ったのも束の間。宛先を見ると、何故か〔立花明輝様〕と書かれている。

 私は驚いてしまい、ついつい腰を抜かしかけた。


「な、なんで? なんで私宛なの? 私、なにも買ってないし、なにも懸賞なんて送ってない……ちょっと怖い」


 私は不気味を通り越して完全に恐怖を感じていた。

 全身に鳥肌が立つと、ブルブルと震え、急いで段ボール箱を手放したくなる。

 しかしこのまま家の前に捨てると大変だ。

 一応中身を確認してから何ゴミか検討しよう。そう思い、一旦扉を閉めた。



「うーん、開けてみるしかないよね」


 私は悩みながらも段ボール箱を開ける決意をした。

 正直、怪しいものならすぐに閉めるつもりだった。

 段ボール箱の養生テープから封を切り、中身を確認してみる。

 まず出て来たのはプチプチした包装と、大量の紙屑。壊れ物注意なのかと思ったがそんな印は一切無く、私は更に中身を探ると、中に入っていたのは真っ黒な四角い箱だった。


「真っ黒な四角い箱……怖いよ」


 私は震えが止まらない。

 と言うのも現れた真っ黒な四角い箱には、黄金色の文字がプリントされている。

 けれど達筆な筆記体過ぎてなにか分からない。

 ましてや説明もなにも無いので怪しむも、もう一つ四角い板が入っていることに気が付く。


「こ、こっちは? ……あれ」


 私が手に取ると、その板はプラスチックの板だった。

 何かのケースのようだが、表面を見ると、私はあることに気が付く。

 このパッケージ、形的にも色合い的にも、完全にゲームのパッケージ。

 だけどダウンロード版のようで、中にはコードが入っているタイプだった。


「VRMMO? あれ、VRゲームってことはもしかして……タイトルは、Creatures Union!?」


 私はまたまた驚いてしまった。

 と言うのも、あまりにもタイミングが良すぎる品物だった。

 今私が手にしているゲームソフト。それは烈火が昨日話してくれていたゲームで、今大人気で再販待ちの代物だった。


「なんでこのゲームがここに入ってるの? 私、VRドライブなんて持ってないのに……って、まさか!」


 私の中である程度の確信が持てた。

 と言うのも、VRドライブ専用ゲームとなると、この箱の正体は一つしか考えられない。

 なにせ、他に何も入っていないのだ。


「やっぱり……えっ、なにこれ?」


 黒い箱の中身を確認した。

 パカッと開けてみると、白い台座の上に何か乗っている。

 置き方が完全に腕時計。否、本当に入っていたのは時計で、スマートウォッチだった。


「これってスマート……じゃない、腕時計型のVRドライブ!? 凄い、こんなの見たことない」


 正直、VRドライブに付いてもテレビやネットで出ている限りしか知らない。

 だけど腕時計型ともなれば私の知識や知恵じゃさっぱり分からない。

 とは言え、腕時計型のVRドライブなんてものがあるのなら、きっと凄い。昨日もそうだけど、値段的にもヤバそうだった。


「ほ、本当に私宛だよね!? 開封しちゃったけど、大丈夫だよね?」


 私は今一度宛先を確認する。

 やっぱり私の名前が書かれている。

 と言うことは、このVRドライブと人気ゲームは何故か私宛に送られてきたものになる。

 怖い、怖すぎる。私は瞬きを何度もすると、頭を抱えてしまいそうだった。


「もう、怖いよ。なんで私の所に? 後で弁償しろなんてないよね? それにこのVRドライブの形、なんでベルトが分厚いの? しかも取れそうで……うわぁ!?」


 私はVRドライブのベルト部分を触る。

 すると少し分厚くなっていて気になったのが災いしたのか、ポロリと外れてしまった。


「ど、どうしよう……あれ、このベルト軽い。しかも開きそう、後留め具の形も丁度イヤホンみたいに見えるけど、もしかして……」


 私は何となく仕様が見えて来た。

 けれど勝手なことはできない。

 そう思ったのでソッと台座に戻そうとすると、私の指が液晶に触れてしまった。


——生体認証を確認しました。VRドライブ、起動します——


「えっ、嘘でしょ!?」


 私が液晶に触れると、急に液晶が光り出した。

 なにかと思い留めようにももう遅い。

 可愛らしい声でアナウンスが鳴ると、VRドライブが起動してしまう。


「き、起動しちゃった」


——生体認証を検出。本VRドライブは未だ所持者未登録の状態です。貴方が所有者であれば、所持者登録を完了してくださいね——


「と、登録?」


 何だか勝手に進行している気がする。

 しかも言葉遣いにムラがある。

 きっと大人でも子供でも、どちらにも対応するためだ。

 だけどあまりにも一方的で私は困り果てるも、アナウンスは再度続く。


——本VRドライブを装着してください——


「装着?」


——本VRドライブの形状は腕時計型になります。まずは利き手とは異なる腕に装着の上、ベルト型ゴーグルを装着してください——


「急に言わないでよ。と、とりあえず一回電源を落として……落とせない?」


 後でゆっくり登録しようとした。

 設定は後で見直しもできるはずだ。

 けれど何故かこのVRドライブ、不良品なのかは分からないけれど、電源を落とせない。

 もしかすると登録するまで電源は落とせない仕様なのかもしれない。


「そんな……付ければいいの?」


 私は仕方ないので腕時計を付ける。

 それからイヤホン部分を耳に当てると、閉じていたベルトが開く。

 盾に開閉すると、中から透明なモニターが現れた。あまりにも近未来の技術の結晶過ぎて、私は興奮する。


「凄い。映画みたい」


——映画でしたら、後で本VRドライブから視聴可能です。ゆっくり楽しみましょうね——


「ありがとう、って会話できるの!?」


 もしかするとこのアナウンス、超が付く程高性能なAIが搭載されているのかもしれない。

 下手なことは言えないぞと想い身を引き締めると、VRドライブのアナウンスが勝手に鳴った。


——網膜認証登録完了致しました。続いて血液を採取致します——


「えっ、血液!?」


 私が驚いていると、腕から血が出ていた。

 VRドライブの背面を私の血が垂れる。

 けれどほんの少しで痛みもない。

 技術の進歩ってやっぱり凄いと感じるも、逆に怖くなってしまった。


「血まで取ってどうするの?」


——血液認証登録を完了致しました。最後に個人情報の登録をお願い致しますね——


「ここまでで結構な個人情報の登録な気もするけど……えっと、マイカードでいいんだよね?」


 私は自分自身の個人情報が登録されたマイカードをスマホから取り出した。

 如何したらいいのか分からないけれど、特殊なコードを液晶画面に近付けると、勝手に登録される。

 ほんの三秒程度に完了してしまうと、私はきょどってしまった。


「は、早くない?」


——個人情報の登録を完了致しました。それでは最後に、こちらの規約書をよく読んでからサインしてくださいね——


「えっ、規約書?」


 私が最大限困惑すると、謎の規約書は表示される。

 しかも何ページにも渡っている。

 明らかにヤバい臭いがするのだが、これにサインしない限り先には進めない。嫌らしい戦術だと思いつつ、私はザッと読んでからサインをすることにした。そうしないと先に進めないからだ。

 

——規約書にサインをしていただきありがとう」ございました。これにてVRドライブの所持者登録は完了になります。素敵なVRライフを送ってくださいね——


 アナウンスが鳴ると、それ以上喋らなかった。

 あまりにも突然で私は感情を吐露する。


「終わる時は突然なんだ」


 とは言えこれで登録は完了した。

 後、返品ができなくなってしまった。

 私は慣れない家電に首を捻るも、手元に転がるゲームソフトを手にした。


「ここまで来たら、ちょっと遊んでみようかな?」


 正直、VRドライブの登録も終わったら、ゲームも遊んでみたかった。

 だけど本当に遊んでもいいのかな?

 私は少しだけ怖くなるも、一応パッケージを開けた。


「あれ、なにか入ってる?」


 するとゲームソフトのパッケージの中になにか入っていた。

 桜の模様が施された一枚のカードで、ダウンロードコードとは別に用意されている。


「なんだろう、これ?」


 私はカードを手に取ると、そこに書いてある言葉に目を向ける。

 カードにはこう書いてあった。


[恐れながらもこのゲームを手に取ってくれてありがとう。これは貴女にとって、単なる暇潰し、贈り物として捉えてくれて構わない。けれど勇気を出してこのゲームを手に取った時、貴女はどんな未来を手にするのか、その可能性を見いだせるのは貴女だけだ。なにを選ぶのか、選ばないのか、その自由の先に待つより良い未来を、貴女自身で掴んで欲しい。健闘を祈るよ、良いゲームライフを]


「なにこれ?」


 背毛点滴にはちょっとイタい文章が長々と綴られていた。

 私も動じてしまうのだが、それでも心の残る温かさがある。

 理由は分からない。けれど無性に信じる気になると、私はゲームをダウンロードしていた。


「なんだろう、私、ビビッと来た」


 私は感情の赴くまま、完成の赴くまま、意識を切り替えこの文章に目を向ける。

 まるで手紙のように綴られたイタい文章も、今の私には見えて来ない。

 それでも確かな感性が突き動かすと、ダウンロードも終えていた。


「時間もあるから、ちょっとだけ遊んでみようかな?」


 烈火には悪いが、先に遊ばせて貰う。

 心の衝動が止まらないのだ。

 ワクワクした気持ちで一杯になると、早速私はゲームにログインしてみる。新しい挑戦、怖いけど、楽しむ気持ちを目一杯持つ。


「たしか、えっと、ゲームへのログインは……アクセスコード・Creatures Union。リンク・ゴー!」


 私は説明書通りにゲームにログインする。

 すると視界が真っ暗になって行き、段々と意識が離れる。

 体がフワリとする感覚。同時にゴーグルに映る無数の星空。

 私の気持ちが昂ると、そのままの流れでゲームの世界へと向かうのだった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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