◇29 シャンベリーを探索したけど?
この城ではなにかが起きる……
だって隠しダンジョンだから……
「ふぅ、とりあえずゾンビの群れは去ったな」
「そうだね。えっと、これからどうするの?」
「決まっているだろ、残りの時間を使って城の中を調べる。クソッ、弾数がもう無いか……」
私達はなんとかゾンビの群れをやり過ごした。
門の向こう側が静かになるのを確認してから胸を撫でると、今度はいよいよお城の中を探索だ。
と意気込むものの、Nightの顔色はあまり芳しくない。
と言うよりも渋い顔をしている。
さっき使った拳銃(回転式拳銃)の弾倉を確認すると、残った弾数を確認していた。
「もしかして、武器それしかないの?」
「こっちは後五発だな。こっちの自動拳銃は九発だな」
「そうじゃなくて、他の武器は無いの? もっとファンタジーっぽい奴」
「あるにはあるが……使いたくないな」
「えー、そっちの方がぽいよね?」
「CUは自由度の高いゲームなんだ。私だって非常時には使う。それより、さっさと行くぞ、休憩は終わりだ」
一番疲れているのはそういうNightだった。
だけど私に茶化されたせいか、少しムキになっている。
そんなに怒らなくてもいいのにと思ったが、とりあえずお城の中に入ってみることにした。
ギシィ―!
私とNightは一生懸命引いて、お城の扉を開いた。
すると中は真っ暗で、たくさんの豪華な装飾品が飾られている。
イメージの中にある西洋のお城。
私は目を奪われるが、Nightは興味無さそうに、むしろ間取りを把握し始める。
「エントランスがあって、階段が二つ、高さを考えて三階建て……しかもあちこちの壁に突起物が出ている。意図的な造り……おまけに目の前の壁には謎の文様……明らかに迷宮だな」
「迷宮? ここはお城でしょ?」
「仕掛けが施された城ってことだ。勝手に触るなよ、死にたくなかったらな」
Nightは怖くなるようなことを、平然と口走る。
私は一瞬ビビるけど、すぐに慣れちゃった。
Nightはそんな私を放り出し、警戒しながら壁に近付く。
優しく触ると、明らかに警戒しているのが伝わった。
「そこになにかあるの?」
「ここにスイッチがあるな。多分押すと仕掛けが作動するんだろう……おそらく頭上だな」
「頭上? うーん、なにも無いように見える?」
「いいや、真上に奇妙に取り付けられた照明。しかも消えている……と言うことは、アキラ少し下がれ」
私はNightに体を使って押された。
だけど全く動かない。だから私はゆっくり後ろに下がると、Nightはインベントリの中から石ころを取り出す。
「それっ!」
Nightは石ころと投げた。
すると的確に突起の部分に当たると、カチッ! と音がする。
本当にスイッチみたいだったけど、一体なにが起こるのかな?
期待してしまうと、突然軋む音を立てて何かが落ちる。
ズサーン!
「うわぁ!?」
「やっぱり槍だったか」
本当に頭上の小さな照明。蝋燭の炎のような形をしていた。
それが急に長い棒と一緒に落ちて来ると、さっきまでNightが立っていた辺りに落ちてくる。
その形状は完全に槍その物で、蝋燭の炎の形をしていた部分は、金属製の鋭いものだった。
つまり、当たっていたら即死。全く、恐ろしい罠が仕掛けられているダンジョンだと思い、私の体が一瞬硬直する。
「こ、怖いね。こんなのまともに喰らったら、ひとたまりもないよ」
「間違いなく即死だろうな」
「そ、即!? ……怖い」
私は身震いして、たじたじになる。
一歩足が竦んで、後ろに下がった。
その瞬間、Nightは怖いことを言う。
「そこのタイルは踏むなよ。罠だからな」
「ええっ!?」
私は丁度真後ろにあったタイルを踏みかけた。
だけど何とか踵で耐え抜くと、私はホッと胸を撫でる。
「Night、もう少し早く言ってよ!」
「ふん、踏む前に止めてやったんだ。ありがたいと思え」
Nightはサバサバしていた。
私が怒っても知らないといった具合で、むしろ感謝を要求される。
本当上から目線で敵を作りそうだなと思ったけど、Nightは全く気にしない。
むしろ丁寧に罠を避けながら、調べ物を進めて行く。
「例えばそこにある螺旋階段。三段目だけが妙に膨らんでいる。恐らく、避けて上った証拠だろうな」
「つまり罠ってこと?」
「そう言うことだ。後、反対側の壁。丁度もたれかかれる高さにある凹凸部分。逸れもスイッチだ。きっと目の前から鋭い槍が伸びて、串刺しになるんだろう」
「串刺し!?」
「まぁ、見極めながら適宜避ければ怖くは無いが……」
そう言うと、Nightは的確にステップを踏みながら、目の前の壁に辿り着く。
そこには奇妙な紋様が描かれている。
「それにしてもこの紋様の絵柄……明らかになにかあるな」
Nightの見ている壁には何か書いてある。
ヤギの化物みたいな絵が描かれ、その周りを三つの黒い丸が三角形で囲っている。
おまけに凹凸になっていて、何か嵌め込めそう。
分かりやすい謎が広がるが、Nightは真相を暴こうとするが、唸り声を上げる。
「う~ん。これは……」
「どうしたの、Night?」
「いや、なんでもない。とは言え、この壁は仕掛け扉になっているのは確かだ」
「うん、それはなんとなく想像できるよ」
明らかに何かできそうで、一番ベタなのが“壁が開く”だった。
だけど仕掛けを解くためのアイテムを何も持っていない。
これは探索が必要かも。そう思った瞬間、私とNightは奇妙な声を聞く。
「それじゃあ、もう少し探索してみる?
『ダメ』
「そうだな。とりあえず上の階を見て……」
『行っちゃダメ』
「「……なにか言った?」か?」
お互いに顔を見合わせる。
ポツポツと口走った問答に誰かが勝手に答えたんだ。
もちろんそれは私でもNightでもない。
一体誰? もしかして他に誰か居る? 警戒しながら周囲を見回した。
「もしかして、誰かいるの?」
「その可能性は高いな。警戒しろ」
「警戒って……そんな感じしなかったけど……」
『このお城は危険だから、早く帰って』
「「また!?」」
今度ははっきりと聞こえた。
しかも私とNightの丁度間。
お互いの視線が交差し合うも、そこには当然なにも無い。
虚空から聞こえた謎の声に動揺するも、Nightはズケズケと踏み込んだ。
「誰だ、お前は。正体を現せ!」
そう言うと、拳銃を構えた。
その射線には私も居るのにと思うが、そんなことは見ていない。
見ているんじゃない、見られている。そんな漠然とした気配だけが漂う中、それは姿を現す。
『ここは危険。だから早く帰って、お願い……』
再び声で警告する。同時に私とNightの間を青白い何かが揺らめいた。
まるで炎のようなそれは、揺ら揺らと震えている。
形は最初は塊だった。だけど徐々に人の形を模していくと、次第に少女に化けるのだった。
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