◇27 タダより怖いものは無いんです!
実際そう!
私はNightと友達になった。
それで一夜明ける前、私は面倒ごとの処理に来た。
そう、Deep Skyでお買い物だ。
「……ってことがあったんですけど」
「それはまた大変だったわね」
「はい、凄く大変で……」
私はソウラさんにここまで起きたことを聞いて貰った。
その過程で欲しいものも大体伝わったらしい。
そのせいか、その過程のおかげか、ソウラさんは私のことを心配してくれる。
「それで、欲しいのは聖水?」
「はい。できるだけたくさん欲しくて」
正直、如何してたくさん必要なのか分かってない。
私にはNightの考えを読み切るなんて真似出来っこない。
だけど必要ってことは、きっと何かに使うんだ。
「それで売って欲しいんですけど」
「いいわよ。なんケース?」
「ケース? ケース買いですか!?」
「ええ、そうよ。実は聖水が余っていて。丁度困っていたのよ。本当、かなり品質の良い物なんだけどね」
それはごもっともです。
私とNightは直にその効果を目の当たりにしたから、聖水の効能は折り紙付き。
色んな人に絶賛したい程で、アンデッド系モンスターには抜群だった。
「それで、なんケース? 今ならおまけも付けるけど?」
「あの、ソウラさん。実は私、お金そんなに持ってなくて」
「えっ?」
「一つ幾らですか? 今の手持ちから差し引いて考えます」
正直、手持ちが心許ない。
だからこんな良い品質の聖水を大量購入なんてできない。
私は板挟みにあってしまうも、ソウラさんはニコリと微笑んだ。
「それじゃあ無償でいいわよ」
「ええっ!? どういうことですか」
私は目を見張った。
ソウラさんがそんなことを言うなんて思わなかった。
だってここはアイテム屋。アイテムを売るのがメインの生産職プレイヤーのお店だ。
「そんなことしちゃったら、ただの赤字ですよね?」
「そうね。でも、無駄に在庫スペースを食っても意味が無いでしょ?」
「そうだとしても……」
それは商売をしている人の考え方だ。
買う側からしてみれば、ちょっと怖い。
そこから厄介ごとに発展するんじゃないかと思い、私は普通にビビってしまう。
「いいのよ、その代わりにお願いしたいことがあるから」
「お願いですか?」
なんだろう、とっても怖い。
私は震えてしまうも、先にソウラさんに聖水の入った瓶を手渡される。
いわゆる賄賂だ。もう逃げられない。
「なんでもいいの。なにか上質な素材が手に入ったら、うちに売りに来て。それで清算してあげるわ」
ソウラさんの目が妙に怖かった。
完全に逃がしてくれる様子が一切無い。
私の腕をギュッと掴むと、ニッコリ微笑む。
「そんな保証できないこと、流石にしちゃダメですよ」
「そう? それじゃあ私の方から依頼でも出すけど」
「えっと、頑張ってきます」
「うん、シャンベリーはまだ誰も攻略したことが無いダンジョンだから、貴重な素材がたくさん眠っているかもしれないわね。楽しみね、アキラ」
こっちは楽しみなんて言ってられなかった。
むしろ緊張感の方が高まっちゃって、私は胸を押さえる。
「はぁ、なんだか大変なことになっちゃった」
「ふふっ。それじゃあ聖水、引き取ってね」
「は、はい……ええっ?」
カウンターテーブルの上に、ソウラさんは木箱を置いた。
全部重そうで、ズシンと音を立てる。
その木箱の数は尋常ではなく、なんと十ケースもあった。
「えっ、嘘ですよね?」
「ふふっ、買い過ぎちゃった子がいるのよ」
「ええー」
私は呆れてしまった。
一体幾ら分になるのか、値段を見たくない。
私は呆気に取られてしまうも、木箱をインベントリの中に全部収納した。
「一杯になっちゃった……」
インベントリの容量が満タンになっちゃった。
なんだか損した気分だよ。
私は絶対に得した筈なのに、変な気持ちになっちゃうと、笑みを浮かべて期待しているソウラさんに圧を掛けられちゃうのだった。
更に次の日、私はシャンベリ盆地にやって来た。
約束通りなら、きっとここに来れば、Nightが居るはずだ。
「流石にいないなんてこと無いよね? もしそうだと、私が借金しただけ……ううっ、Nightー」
私はシャンベリ盆地の森の中で彷徨っていた。
何処にもNightの姿が無い。
真っ黒な服を着ているせいで、目を凝らさないと見つけられないのかと思った。
けど、そんな幽霊的なことは無かった。
「騒ぐな、夜は静かにしろ」
「うわぁ、ビックリした!?」
私が振り返ると、木の幹に背中を預ける少女の姿があった。
もちろんNightで、オッドアイの瞳と白髪が揺れている。
しかも腕を組んだまま私に罵声を浴びせた。
こんなことするのは、多分Nightくらいだと思う。
「いつからそこにいたの?」
「ずっといた。それで、ちゃんと持って来たんだろうな?」
Nightは早速私に訊ねる。
もちろん言われた通り、聖水はたくさん買い込んできた。
と言うか、借金してきたことを正直に伝えると、まるで愚痴の様になりながらも、Nightは最後まで聞いてくれた。
「Nightせいで大変だったんだよ。借金になっちゃったよ」
「借金だと!? そうか、それは悪かったな」
「あ、あれ? そこは「はっ、知るかよ」とか言うんじゃないの?」
「私はそこまでは薄情じゃない。……そうか、引き返す道は無くなったんだな」
Nightも少なからず責任を感じていた。
なんだかそんな顔されると、私の方が悪い子みたいに見えちゃう。
表情を歪めると、頭の中で意識を変えた。そんなことを言っても始まらない。
ちゃんと聖水を使って、その分清算できる素材を集めるだけだ。
「それじゃあNight、シャンベリーに行こう」
「分かっている。私達はそのためにここに来た」
「そうだよね……ところでNight」
私は今更なことを訊こうとした。
Nightは私の方をチラッと見ると逆に言い返す。
「なんだ? 今更怖気づいたのか?」
「ううん、そうじゃなくて……」
むしろ心強かった。
Nightが居てくれたら、きっとなんとかなる気がする。
私は胸の高鳴りで期待すると、別のことを訊ねた。
「どうやってシャンベリーに行けばいいの?」
「はっ、なに言ってるんだ」
「えっと、本当なんだけど……」
「……お前はどうやってシャンベリーに行ったんだ。ちゃんと法則性があるんだぞ」
「法則性? えっと、私が偶然で……」
そう言うと、Nightは呆れ顔を浮かべる。
ポカンとした顔で首をカクンと落とした。
“なんだコイツ”とか言いたそうで、私は頬を掻く。
「お前、パラメータ関係無しに運がいいんだな」
なんだろう。正直に褒められている気がしない。
私はどんな顔をすればいいのか分からなかったけど、Nightは額に手を当て、項垂れていた。
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