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【リメイク版】VRMMOのキメラさん〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!?  作者: 水定ゆう
6ー1:温泉の華が咲く

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◇232 結局びしょ濡れ

熱いし寒いし本当散々。

「ううっ、最悪だよ」


 私達はびしょ濡れになっていた。

 何とか噴き出た温泉の勢いから逃れた私達。

 とりあえず安全圏まで逃げたけれど、全身がヒリヒリしていて痛い。おまけに濡れていて重たい。


「でも面白かったねー」

「はい。皆さんが無事でなによりです」


 確かに普通だと絶対に味わえない体験だった。

 普通に考えたら、百%死ぬ筈だった。

 だけどそれを免れたのは、ここがゲームだからだ。


 それに何より、三人とも無事だった。

 私の判断は間違っていたかもしれない。

 それでも助かっただけ御の字だって思うしかない。


「みんなごめんね、危険な目に遭わせちゃって」


 私は二人に謝った。

 流石に私の想像力が足りなかったせいで、こんな目に遭ったんだ。

 きっと怒っている筈。私はシュンとなって、肩を落とす。


「なに言ってるのさー、全然いいよー」

「はい。間違いは誰にでもありますから」

「で、でも……」


 二人共優しかった。

 落ち込む私を支えてくれると、笑顔で答えてくれる。

 それが眩しくて、より一層私は自分が許せない。


「でもではありませんよ。皆さんが無事、それでいい筈です」

「そうそう。それにさー、見てよー」


 フェルノは私の背中を押した。

 少し高い位置から見下ろしている。

 すると源泉が元通り、湯の華に覆われていなかった。


「源泉が、元通りになってる?」

「あはは、そうだねー」

「はい。コレもアキラさんの想像力の賜物です。誇るべきです。私達は、それに自分の意志で付き合っただけですから、何も気負う必要はありませんよ」


 雷斬は私を必死に励ましてくれる。何だろう、凄く嬉しいけど、凄く悲しい。

 確かに私の無茶に付き合わせちゃった。それで二人を危険な目に遭わせちゃったけれど、なんてことない顔をされてしまう。

 どうしてだろう。涙が溢れて情けなくなる。


「ごめんね、フェルノ、雷斬」

「あはは、泣かなくてもいいってばー」

「そうですよ、アキラさん。顔を上げて、涙を拭いて、Nightさんとベルの下に帰りましょう」


 フェルノと雷斬は全く責めなかった。

 凄く寛容的で、私のことを慰めてくれる。

 そんな温かい炎と雷を浴びると、私は自信を間違いを見つめつつも、正しさを取り戻せた。


「う、うん」


 私は何だか成長できた気がする。

 これも二人が手伝ってくれたおかげだ。

 私は前を向くと、意識を切り替えて、首を縦に振るのだった。




「で、この有様か」

「「「うん」」」


 私達がびしょ濡れのまま下山した。

 何とか温泉は避けながら、登山の時よりも二倍以上時間を掛けた。

 とにかく安全を心掛けたんだけど、先に下山し終えていたNightとベルにとっては、全然安全でもない。寧ろ掛け離れていた。


「本当、なにがあったのよ?」

「ですので、温泉の流れが強くて、飲み込まれてしまったんです」

「それは聞いたわ。でも意味が分からないの!」


 私達はちゃんと説明した。

 説明したつもりなんだけど、状況が状況だけに上手く伝わらない。

 ましてやベルは困惑していて、何度も聞き返していた。


「あはは、結晶華の中に、アレだけ温泉が入ってるなんて知らなかったなー」

「う、うん。ちょっと引っ張ったら割れちゃって」


 正直、間欠泉なんだから、温泉の湯は蒸発しきっていると思ってた。

 だけど中は空洞で、時間経過で間欠泉が出続けていた。

 そのせいかな? 内側も脆くて、それを一気に力を加えたせいで、結晶華が砕け散った。

 本当、ウインチのパワーだけでアレは酷いよ。


「はぁ。どうせそんな所だと思っていた」


 Nightは最初から分かっていたみたい。

 それならもっと強めに止めてくれればよかったのに。


「どうして止めてくれなかったの?」

「可能性や発想力を遮ると、また怒られるからな」


 いつもいつもNightの作戦は現実味が強過ぎる。

 だから面白くなくて、毎回ムッとした顔をしていた。

 だからこそ、今回は自由度を上げてくれたみたい。

 でも自由な発想過ぎて、失敗しちゃったんだよね。本末転倒ってこと?


「でも、源泉は元通りになったよ!」

「その代わりに地形が変化したんだろ?」

「うっ……」


 確かに源泉は無事に元通り。

 だけど周囲の地形はグニャグニャに変形しちゃった。

 そのせいかな? 結果的には上手く言ったけど、全てが丸く収まった訳じゃないんだよね。


「あはは、これって成功?」

「失敗とも言えないでしょ?」

「そうですね。ですが目的は果たされましたよ」

「果たした割には、被害が大きいがな」


 成功なのかな? それとも失敗なのかな?

 みんなはどう思う? 私は漠然とした。

 個人的には一応目的は果たせたのかな? でも全然誇れない。

 胸を張れなくて、正直クロユリさんに報告するのが怖い。


「なんだろう、報告したくないね」

「そうだな……そもそも、どうして爆弾を使ったんだ?」


 Nightはそこに帰着した。

 爆弾を使わなかったら、こんな目には遭っていない。

 そんな訳ないけれど、少しでも被害は減らせたはずだと言いたそうにする。


「それはNightが渡したからで」

「正しい使い方をしたのか?」

「た、正しいよ! ちゃんと結晶華を壊したから」


 私はついムキになっちゃった。

 責任の押し付け合い何てみっともないよね。

 でも私だって頑張ったんだから仕方ないよと割り切る。


「お前、安全性を考慮しなかったのか?」

「えっ?」

「それに、私が作ったものとはいえ、威力には制限を掛けていた筈だ。この規模の火薬があれば、結晶華を“内側”から破壊することができる。そう設定していたんだぞ」


 Nightはガチで萎えていた。おまけに厳しく説教をする。

 確かにNightの作るものは正確で、正しく使えば間違いない。

 だけど正しく使わなかったからこうなったんだ。


 私は非難を受ける中、それでも違和感を覚えた。

 だけど私の耳はシッカリと聞き逃していない。

 今、凄く大事なキーワードを言った気がする。


「ちょっと待って、Night。今、内側って言った?」

「当たり前だ。それが正しい使い方だ。そうでもしなければ、被害が外にも出るだろ」


 Nightはマジレスをした。

 それを言われたらお終いだけど、確かに爆弾を使う時は、近くに誰も居ない。

 そもそも居ないことを確認してから使うもので、大体破壊するものの内側に仕込んで、外側から安全に爆破させる……あれ?


「私、やってなかった?」

「あはは、そうだねー」

「確かに投げていましたが……」


 フェルノと雷斬の流れ弾が私に当たる。

 確かに咄嗟に爆弾を投げたのは私。

 でもああなるとは思わなかった……いや、少し考えれば分かったとか?


「それじゃあ自業自得ってこと!?」

「そうなるな」


 私は自分のせいだと気が付かされる。

 頭を抱え、困惑してしまうと、言葉も出て来ない。

 原因を作ったのは私、それだけでオーバーキルだよ。


「ど、ど、ど、どうしよう!」

「どうしようもないだろ」

「そ、そんな……」


 あたふたしてしまう私に、Nightは慰めの一つも無い。

 寧ろ完全に割り切っていた。

 薄情だよ! とは流石に言えない。だって大事だから。


「とは言え、なにもお咎めも無しだ。それで充分だろ」

「そ、そうかもしれないけど……ううっ」


 確かにペナルティは付けられていない。

 ましてや警察NPCが動いている訳でもない。

 つまり仕様の範疇になるみたいだけど、それでも私は傷付いた。


「はぁー、散々だったな」

「あはは、そうだね」


 久々に本当の意味で散々を味わった。

 まさかこんな目に遭うなんて信じたくなかった。

 だけど仕方がない。ちゃんと説明しよう。

 そう思った私達は、今日の所は帰ることにした。

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