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◇23 ゾンビ来ちゃったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

もうこれっきゃないでしょ!

「急になにを言いだすんだ。一瞬脳がフリーズしたぞ」

「ごめんなさい。でも、ともだちになるくらいダメかな?」

「ダメに決まっているだろ」

「ど、どうして?」


 Nightは私のことを突き離した。

 ただ私は友達になりたいだけなのに、Nightは頑なな態度を取る。

 と言うよりも私のことを信用していない様子で、表情を訝しめていた。


「どうしても無いだろ。初対面の奴と、友達になるバカがいるか」

「あっ、私のこと?」

「当り前だ。悪いが私も暇じゃない。とっとと行け。次は無い」


 そう言うとNightは私を邪険に扱った。

 だけどそれも分かってしまう。

 今のは完全に私の方がヤバい奴で、Nightの方が何倍も正しかった。


「待ってよ! それじゃあどうして助けてくれたの?」

「それとこれとは話が違うだろ」

「そうだとしても、私をここまで助けてくれたのは、なにか理由があるんじゃないの?」


 こんな所では引き下がれない。

 私はNightにしつこいと思われるくらい食らい付く。

 するとNightは墓穴でも掘ったのか、一瞬足を止める。

 考える素振りを見せ、私のことをジッと睨んだ。


「……助けることに理由でもいるのか?」

「えっ?」

「私だって薄情じゃないだけだ。もういいか、いいならとっとと……はっ、おい、こっちに来い!」


 私はNightのとんでもないカッコよ発言に驚いた。

 だけど感心する間もなかった。

 Nightは私の背後に何か見つけてしまったみたいで、固まった後、迷わず私に手を伸ばした。


「えっ、どういうこと?」

「いいからこっちに来い。来てるぞ」

「来てるってなにが……ひやっ!?」


 私は一瞬だけ振り返ってしまった。

 すると視線の先に大量の人影が写り込む。

 あれは一体……目を凝らしてみたけれど、そんなことをする必要無かった。

 私は腐臭を放つそれに驚愕し、急いでNightの腕を掴む。


「ゾンビが、ゾンビが来ちゃったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「そんなことは分かっている」


 私は大絶叫を上げてしまった。

 なにせさっき必死に撒いた筈のゾンビの大群が押し寄せてきていた。

 きっともたもたしていたからだ。私は起こってしまったことをクヨクヨしたけど、すぐさま意識を切り替えて、Nightの腕を掴むと、何をすればいいのか考える。


「Night、どうしよう?」

「どうするもなにも、ゾンビを倒すアイテムは持ってきているんだろうな」

「ゾンビを倒すアイテム?」


 そんなこと言われても、用意している訳がない。

 だってゾンビが居るなんて、私知らなかった。

 何も持って来ていないことを知ると、Nightは軽く舌打ちをし、インベントリを素早く操作した。


「クソ。だったら、これだ!」


 Nightはインベントリの中から大量のアイテムを取り出す。

 瓶のようだけど、中には何か入ってる。

 青い液体。私はそれを知っていた。


「その液体、ソウラさんに貰った……」

「ソウラ? 誰かは知らないが、これは聖水だ」

「聖水?」

「アンデッド系のモンスターに効果抜群なアイテムだ。とりあえず手持ちの分を使うとするが……お前はこれでも持っておけ」


 Nightの手には同じ大きさの瓶が幾つも握られている。

 けれど一つ一つの大きさは小さく、中に入っている液体の量も限られる。

 しかも軽く握れば割れてしまうような繊細なガラスで、Nightはタイミングを見計らっている。


 その傍ら、Nightは私に何か手渡す。

 急いで受け取ると、それは銀でできた十字架で、ズッシリ重い。

 これって装飾品って奴かな? 私は十字架を首から下げると、Nightを応援した。

 だって、今の私にできることは何も無いから。


「ゾンガァ!」

「ゾンガァ!!」

「ゾンガァ!!!」


 ゾンビ達は唸り声を上げると、私達に手を伸ばす。

 腐臭を撒き散らし、まるで助けを求めているようで実はそんなことない。

 ただゾンビとしての本能で、動くものに反応している……気がする。


「クソッ! 全然数が減らない。爆破するか?」

「物騒なこと言わないでよ。もしかして、Nightってヤバい人?」


 私はNightのことを勘違いしていたらしい。

 もしかしても、いや、もしかしなくてもヤバい性格をしていた。

 短絡的、とまでは行かないが、物騒な言葉を吐くんだ。

 そのせいで怖くなってしまい、私はNightの服の袖を掴んだ。


「私は同時に思考しているんだ。この数のゾンビを同時に相手するにはそれも一つの手と言うことだ」

「それじゃあ別の案は無いの?」

「あるにはあるが……私が非力だからな」

「ひ、非力?」


 それはそれは、とんでもない理由だ。

 確かにNightの体付きを見るとかなり細い。

 背丈は少し小さめ、体がとにかく白くて日光を知らないみたいで、更には痩せ細っている。筋肉の“き”の字も無さそうで、私はドン引きした。


「おい、引いてる場合じゃないだろ。なにか持ってないか?」

「な、なにかって?」

「スキルでもいい。もしくはソウラって奴から貰った物を出せ」

「ちょ、ちょっと待って。はい、これ」


 私はNightに急かされ、慌ててソウラさんから貰った物を取り出す。

 インベントリから取り出すと、Nightは強引に私からそれを奪い取った。

 すると目を見開き、ニヤリと笑みを浮かべる。如何にもこうにもなんかいい感じだ。


「かなりいい聖水だな。使うぞ」

「うん、いいよ。このゾンビをどうにかできるなら」

「そうか……だったら私に従え。このゾンビの群れを一瞬だけ退かせる。それから逃げるぞ!」

「に、逃げる? この状況でどうやって」


 正直眼下は地獄絵図だった。

 私はNightに助けて貰って、今お墓の上に乗っている。

 ここから一歩でも下りたらゾンビの群れに襲われるのは確定で、Nightが投げてくれた聖水のおかげで、ゾンビ達が苦しみ、時間を稼げているような状況だった。


「絶対に無理だよ」

無理なことは無い(・・・・・・・・)この世界にはな(・・・・・・・)


 そう言うと、Nightは不可能を可能にする。

 私から奪った聖水を宙に放り投げる。

 その瞬間、まるで時間が止まったような感覚がした。

 宙をクルクルと回転する聖水の入った瓶が地面に落ちて行くよりも早く、Nightの腕が動いていた。


 Nightの左腕がいつのまにか腰に当てられていた。

 そこから何か取り出すと、黒い塊が握られる。

 一体なんだろう。私がボーッと眺めていると、突然耳を劈く音と、赤い閃光が上がった。


 バン!


「うっ……」


 耳を塞ぐ時間も無かった。だけどその音は確かに私の鼓膜にまで響くと、宙に投げられた聖水の入った瓶を割った。

 音で割ったんじゃない。丸っこいシイノミみたいな何かが放出され、瓶がバラバラに破壊されたんだ。


「今のってもしかして……」

「気にするな、行くぞ」

「えっ、ちょっと待ってよ。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 お墓の上から私とNightは飛んだ。

 正直Nightの飛び方は酷かった。

 完全に身を投げ出した飛び方で、私はNightを庇うように受け身を取る。


「くっ、やっぱり私の身体能力だと……」

「Night、しっかり掴まってて」

「なにをする気だ?」

「なにって……もう逃げるんだよね」


 私はNightを体に抱き寄せる。

 受け身を取るのは慣れっ子だ。昔お母さんに散々叩き込まれた。

 そのおかげか、私は器用に受け身を取ると、Nightも無事、私も無事に済んだ。


「痛くない……な、なんなんだ、お前は!」

「ほら立ってNight!」

「あ、ああ……それより行くぞ。今日は撤収だ」

「ちょ、ちょっと待ってよ。うわぁ、い、痛い痛い痛い……もう、加減もなんにもない……」


 Nightは私の腕を掴むと、痛いくらいに掴んだ。

 もう加減を完全に知らない。

 涙目になる……程でも無いんだけど、私はもう闇雲に、Nightに連れられシャンベリーを駆けるのだった。

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