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◇229 せーのっ、で、倒そう!

結局最後は人力。

「それじゃあ早速始めよっか」


 私はみんなに号令を出した。

 とは言え、号令を出しても、私は何もできない。

 だってこれからやる作業は、本当に精神をすり減らすからだ。


「みんな、くれぐれも怪我はしないようにね」

「分かってるよー」

「安全が第一ですからね」


 フェルノと雷斬は分かってくれた。

 きっとこういうのを、物分かりがいいって言うんだろうね。

 何だか子供っぽくていいかも。そう思ったのも束の間、雷斬は刀を鞘から抜いた。


「それでは始めましょうか」


 雷斬の目付きが変わった。

 ガスマスク越しだからよく見えないけれど、キリッとしている気がする。

 まさか本当にやるの? 私の突飛を叶えようとしてくれる。


「雷斬、やってくれるの?」

「もちろんですよ。それでは、危ないので、少し離れてくださいね」


 雷斬は完全にお姉さんだった。

 私達のことを、少し離させると、安全圏まで出す。

 その状態で、雷斬はふと息を整えた。一番危険な場所を請け負ってくれる。


「本当に気を付けて、雷斬」

「承知しています。では、行きますね」


 もしかすると、先に温泉が噴き出るかもしれない。

 そんな恐怖を抱えつつ、雷斬を心配する私。

 だけど雷斬は刀を手にすると、早速技を繰り出す。


「雷流剣術—氷柱突き」


 雷斬は刀を構えた。

 だけどいつもとは持ち方が少し違う。

 突きに重点を置いているせいかな? 何処となく握り方が変わる。


「はっ!」


 そんな状態でも雷斬は見事だった。

 カッカッカッカッ! と軽快で小刻みよい音。

 目の前の結晶華を少しずつ削ると、簡単にくの字の切れ込みを入れた。


「こんな所ですね」

「凄いよ、雷斬。完璧だよ」

「ありがとうございます。反対側にも用意しますね」


 あっという間に受け口を用意してしまった。

 その状態で今度は追い口を作る。

 だけどこっちはもっと大変。水平に線を入れないといけないんだ。


「大丈夫、できる?」

「問題ありませんよ。雷流剣術—水輪」


 心配する私をよそに、雷斬は早速切り込んだ。

 すると巨大な結晶華に、簡単に切り込みを用意する。

 この間、シェルダーウッドを丸太にした時と同じ技だ。


「す、凄い……綺麗に、途中で止めてある」

「あはは、いいねいいねー。後は倒すだけー?」

「そうですね。それでは、ワイヤーを掛けましょうか」


 雷斬は人仕事を終えた。

 刀を鞘に納めると、今度はワイヤーを手にしている。

 本当に仕事人で、私は目を奪われるけれど、その手にはワイヤーを握っていた。


「どのようにして巻き付けましょうか?」

「えっと、ウインチで引っ張るから、捻りを考慮して……こっちかな」


 私はNightみたいに計算が得意じゃない。

 だけどできるだけイメージを膨らませると、ワイヤーの巻き方を考える。

 簡単にだけど指示を出すと、二人は速やかに動いてくれる。


「こんな感じかなー?」

「フェルノさん、その角度だと危ないですよ」

「そうなのー?」

「はい。ウインチの位置と追い口の方向を見ましょうね」


 雷斬が上手くフェルノを導く。

 適当な巻き方をしていたが、雷斬のおかげで綺麗に巻かれる。

 それにしても地面をひたすらグルグル歩いていると、ワイヤーを掛けられる範囲も決まっちゃうよね。


「もう少し、上にワイヤーを引っ掛けたいね」

「それは難しいですね」


 流石に位置が悪い。結晶華は高くて、下の方にしかワイヤーを巻き付けられない。

 そのせいかな? 正直ウインチの意味があるのかさえ定かじゃなかった。

 雷斬も私と同じものを見ているみたいで、難しそうな顔をする。


「だよね」

「私のスキルを使えば、上まで行けるかもしれませんが……」


 雷斬は自信満々だった。

 何故だろう、雷斬にしては珍しい気がする。

 私はふと視線を飛ばすと、普通に興奮する。


「えっ、そんなことできるの!?」

「はい。ですが、既に不安定になっている結晶華を目の前にすると、難しいですね。その前に、切ってしまうかもしれません」


 私は普通に驚いちゃった。

 一体どんなスキルなんだろう、未だに私達は、雷斬の固有スキルを見たことがない。


 名前だけは聞いているけれど、どんな形で発動するのかな?

 楽しみにしたけれど、今は使えないみたい。

 目の前の結晶華を切ってしまうって、一体何? 私はポカンとする。


「い、いやいいよ。とりあえず、これで試してみよう」

「そうですね。では、そうしましょうか」


 私は慌てて雷斬を止める。

 これ以上の無茶をわざわざする必要は無い。

 それを汲んでくれたおかげか、雷斬はギリギリで踏み止まってくれる。

 本当にヒヤヒヤした私は、ガスマスク越しに額を拭く。


「はいはーい、巻き終わったよー」


 気が付くと、フェルノがグルグルとワイヤーを巻き終えていた。

 おかげで私はほとんど何もしていない。

 何だか悪い気がしたけれど、問題はこれから。いよいよ倒す時が来た。


「アキラさん、準備ができたみたいですよ」

「うん。二人共ありがとう。後はこれを……」


 フェルノと雷斬の活躍で、ここまでは順調。

 上手く行ってくれたので、今度は私……じゃなくて、ウインチの番。

 自動で巻き取ってくれるので、私は上部のボタン状のスイッチを押した。

 本当ファンタジーをぶち壊しているけれど、今回は助けて貰うね。


「えいっ!」


 私はスイッチを押した。

 すると大量に並べられたウインチがワイヤーを巻き取り始める。


 計算は完璧。上手く行けば倒れる筈。

 私達は少しだけ距離を取ると、結晶華を見守る。

 流石に機械のパワーには敵わない筈だ。そう思ったけれど、異変が起きた。


「あ、あれ?」

「倒せませんね」

「おーい、動いてよー」


 ウインチは散々ワイヤーを巻き取っている。

 凄く頑丈で、ジリジリと鈍い音を立てながら、ちゃんと回収していた。

 もちろん、結晶華からワイヤーは外れていない。だけどあまりにも頑丈で、ビクともしなかった。


「もしかして、失敗かな?」


 正直、成功でもないし失敗でもない。

 どちらとも言えない、歯がゆい状況に、私達は困惑。

 上手く行っている筈なのに、全然上手く行かない。とりあえず、ワイヤーを引っ張ってみようかな? それくらいしか、私達にはできないけれど、それは目に見えている情報だけだった。

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