◇226 それって爆弾!?
爆弾は悪いものではない。
使い方による。使う人による。
と、私は思いました。
結局手出しができなかった。
私達は困り顔を浮かべると、Nightの判断に任せる。
「それでNight、どうするの?」
「そうだな。仕方がないか」
一体何が仕方がないのかな?
正直この状況、絶対によくない。
だって、間欠泉を普通に壊したら、私達に熱湯が噴きかかる。
きっと現実の私達の心に、影響が出るんだろうね。
「仕方がないじゃないわよ」
「怒る必要は無いだろ。必ずしも、依頼を全うする必要は無い」
ベルが少しだけムキになってしまった。
何せ目の前の結晶華を壊せば、温泉が再び出る。
それができないから困っているのに、Nightはあまりにも消極的だ。
「実際、私達が引き受けたのは、正式な依頼でもない。ましてや、報酬も定かでは無いんだ」
確かに、完全に口約束だった。
もちろん、この依頼を引き受けたくて引き受けた訳じゃない。
クロユリさんのスキルに無理やり従わされただけだ。
そのせいもあってか、Nightはかなりて厳しい。
正式な依頼書もない。報酬もあやふや。そんな依頼を真面目に引き受ける必要性は皆無だと判断したんだ。
「それはそうだけど……」
「更に厳密に指摘するとすれば、依頼された内容だな」
「「「内容?」」」
私は少しだけ落ち込んでしまった。
Nightの言い分は確かに正しい。
だけどあまりにも厳密と言うよりも、厳格だった。
「そうだ。よく思い出してみろ。私達の無理やり引き受けさせられた依頼。その内容は確か、[源泉を調査して来て欲しい]。簡潔にまとめるならば、こうだろう?」
Nightの言っていることは何も間違っていなかった。
確かにクロユリさんにお願いされたのは、まさしく原潜の調査。
これの何所に付け入る隙があるのかな?
私はポカンとするけれど、意識を切り替えたらすぐに見つかった。
「あっ、もしかして、あくまでも“調査”だから?」
「そうだ。今回の依頼はあくまでも“調査”。それ以上でも無ければ以下でもない。この時点で、私達のやるべきことは当に済んでいる」
Night、ちゃんと考えて行動していたんだ。
確かに私達は源泉の調査をした。つまり解決することが目的じゃない。
後のことは専門の人に任せればいい。
そう言いた気で、私達は息を飲むことになる。
「それって卑怯じゃないのー?」
「卑怯? 一体なにがだ」
「だって、そんな中途半端なの、許されるのかなー?」
いつも適当な素振りを見せるフェルノでさえ悩んでいた。
けれどNightはこの場面で強みを活かす。
「なにも問題ではない。そもそも論だが、私達はあくまでも一介のプレイヤー。源泉を調査することさえ本来は烏滸がましい行動だ。危険を顧みずに人様のために……違うな。なによりもまずは自分達の存在意義。それを遵守する必要がある。見誤った時点で、使い捨ての道具以下だぞ」
厳しい言葉を浴びせるNight。
今更だけど、今回の依頼に関して、クロユリさんは何も安全を考えてくれていない。
使えるものは何でも使う。その精神は凄いけれど、いつか痛い目を見そう。
何となくだけど、私は心配になってしまった。
「アキラ、あまり考えすぎるなよ」
「分かってるよ。それじゃあ、今日はもうお終い?」
「そうだな。お終いにしてもいいぞ」
あまりにも続きがありそうな、含みを持たせた言葉だった。
私は切れ目を見つけると、Nightに歩み寄る。
もちろん行動じゃなくて、言葉で近付いた。
「Night、なにかあるの?」
「ふん、あるにはある……が、それをする必要は無い」
待ってよ、普通に気になるんだけど。
一体なにをする気なのかな?
一応だけど、万が一に備えて聞いてみた。
「ちなみにNightが真面目にこの結晶華? と壊すとしたら、どうするの?」
私はチラリと健在な結晶華を見た。
するとNightは溜めることの一つもしない。
インベントリを開くと、何やら物騒なものを取り出す。
いや、なんでかな。普通にアルミホイルの筒みたいなんだけど、凄く嫌なニオイがする。
変な線が出ていて、まるで導火線だった。
「なにそれ?」
「爆弾だ」
「「「ば、爆弾!?」」」
Nightはサラッと物騒な言葉を口にした。
色んな物を見て来たけれど、直接的にヤバいものだ。
私達は全員声を揃えて絶句すると、Nightは補足する。
「残念だが、時限式は作れなかった」
「そんなのどうでもいいよ!」
私は代表してツッコミを入れる。
いや、ツッコんだ所でもうボケが強過ぎる。
どんなツッコミも真面目なボケには付いて行けない。
「えっと、ソレって本物?」
「私のスキルを舐めるなよ」
「だよね……」
もう言葉を失うしかなかった。
まさかの本物を作り上げちゃうなんて、用意していたのかな?
それならマジで怖いんだけど。私はゾッとする。
全身に鳥肌が立つと、体をソッと寄せた。
「いやいやいやいや、ダメだって!」
「何故ダメなんだ?」
私は全力で拒否した。
だけどNightは理解してくれない。
「ダメだよ。そんな危ないもの、使えないよ!」
「お前、なにか勘違いしているな」
「か、勘違い?」
私が一体何を勘違いしているんだろう。
普通に考えて、爆弾なんて危ないもの、使っちゃダメだよね?
色んな危険が交錯する中、Nightはハッキリと伝える。
「いいか。爆弾……今回の場合はダイナマイトだが、本来はトンネル工事のような、硬い岩盤を破壊するための用いる道具だぞ。だから使い道としては適している。想像力を一辺倒にし過ぎるな」
もちろん、ある程度の使い道は分かっている。
元々ダイナマイトが、トンネル工事とか、作業を便利にするために使うものだってこと。
それらが色んな時代を経て、色んな形になったこと。
善と悪が両立してしまっていることは、百も承知だった。
「それは……そうだけど」
「理解ができたなら、使っても損は無いだろ」
もちろん理解しているのとしていないでは雲泥の差がある。
ここにはNightもいるから、必要が無くても知識が入る。
だけど私は口をモゴモゴさせていた。
「で、でも……」
「なにが不満なんだ?」
「あ、危ないでしょ? 爆弾なんだから、下手に使ったら……」
「ドッカ―ンだね」
フェルノが全然気を遣ってくれない。
ましてや空気を一瞬でぶっ壊してしまった。
私達は言葉を失うけれど、Nightは溜息を付く。
「はぁ……そんなもの、使い方次第だろ」
「使い方って言われても……」
「私が簡単に教えてやる。それで文句は無いな」
いやいやいやいや、文句はあるよ。
よく考えたら、Nightが爆弾の使い方を知っているのも変。
何て事今更言えなかったが、流石に爆弾を使うのは無しかなって思った。
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