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223/230

◇223 災難な私達

ぶっちゃけ、危険なダンジョン。

 私達は源泉に向かって歩いていた。

 黒く変色したゲートを超えると、その先に待っていたのは、霧地獄。

 視界が圧倒的に悪くて、よくないガスが充満していた。


「うわぁ、凄いね」


 正直、起伏の薄い感想が飛び出しちゃう。

 それくらいには、あまりにも視界が悪い。

 下手をしたら、足を踏み外しちゃうかも……なんてことはない。


「確かに視界は悪いが、ここは崖じゃないだろ」


 Nightがマジレスを始めた。

 確かにここは全然崖なんかじゃない。

 少し傾斜はあるけれど、それでも緩やかなもので、登山道の方が充分傾斜が強かった。


 そのせいかな? 正直、疲れるなんてことは無い。

 おまけに地面も尖っていないから、不安定になることもない。

 色んな意味で歩きやすいけれど、やっぱり霧が気になった。


「これってもしかして、全部硫化水素?」

「そんな訳がないだろ。多少は含んでいるだろうが、恐らくは源泉から沸き上がった温泉水が蒸発しただけだ」

「つまりは湯気ってことー?」

「そう言うことになるな」


 これだけ湯気が充満しているなんて、とんでもない源泉が待っているに違いない。

 ゴクリと喉を鳴らして、私達は気を引き締め直す。

 何せここは硫化水素が漂う源泉。それが眠っている山なんだ。


「……にしては、なにも無いわね」


 ポツリと吐き捨てたのはベルだった。

 周囲をガスマスク越しにキョロキョロと見回している。

 何か探しているのかな? 否、その逆だった。


「ベル、どうしたの?」

「いや、なんでも無いわよ。ただ、少し気になっただけ」

「気になったってー?」

「モンスターの影も形も無いことよ。当然だとは思うけどね」


 ベルが気にしていたのは、モンスターが居ないこと。

 だけど、それさえさも当然だと分かり切っている様子だ。

 うーん、普通に考えたらそうだよね? だって、ここ。普通にモンスターが生きていける環境じゃないから。


「当り前だろ。硫化水素が漂っている環境下で、まともに生きていける生物はいない」


 Nightはバッサリと切り捨てた。

 本当その通りで、私も同感。

 もちろんバカなことだとあしらうベル自身も、あり得ないと思っていた。


「ですが、ここはゲームの中ですよ?」


 けれど雷斬が上手く切り返した。

 確かにここはゲームの中。

そうじゃないとこんな危険な真似はしない。


「仮に生きて行けるよう、適応したモンスターがいたとしてもだ。数は極端に少なくなる」

「そっか。そもそも適応できるモンスターの分母が少なかったら?」

「個体数も少なくなるだろうな。あくまでも比例しているだけだ」


 Nightの言うことは正しかった。

 そもそも、こんな危険な環境下に適応できるモンスターが、そこまで多い訳がない。

 仮にいたとしても比例するように数は減少する。


「って、あれ? やっぱり私達、相当ヤバい所に来てる?」


 突然冷静になった私は、考えてしまった。

 湯帖山。ここって相当ヤバい場所なのでは?

 無理やりだったけれど、依頼を受けない方がよかったんじゃないかな?

 私は不安になってしまうと、Nightに言われた。


「そうだな。ここはとてつもなく危険だ」

「まぁ、でもさー、あくまでもゲームだからねー」


 私がふと考えた通りで、ここはとてつもなく危険だった。

 考えて見なくても分かるからか、つい足が竦みそうになる。

 けれどフェルノは絶えず楽観的な反応を見せた。

 そう、あくまでもここはゲームの中だと割り切ること。それが大事だ。


「そう甘く見ていると、痛い目を見るぞ」


 Nightが怖いことを言い始めた。

 止めて、変なこと言わないでよ。

 私は耳を押さえたけれど、普通に聞こえてしまう。


「どういうことでしょうか?」

「簡単な話だ。このゲームは多少なりとも、心身に影響を及ぼすことがある。それがこのゲームをプレイする上で、決して逃れることのできない条件だ」


 Nightが口にしたのは、このゲームを遊ぶ前に契約した規約だ。

 多少なりとも、心身に影響を及ぼすことがあるらしい。

 それが吉と出るか凶と出るかは、本当にその人次第な面が怖かった。

 だけど誰も文句は言えない。それが分かった上で遊んでいるんだ。


「それは知ってるよ。偶に怖いこともあるから」


 何度もゲームの中で色んな体験をした。

 そのせいかな? 不意に思い出しちゃうことがある。

 それが怖いって感じることもあるけれど、本当に偶に。

 だけどその“偶に”が、無性に背中を撫で回す。


「それと同じだ。ここでの影響が、人体に影響を及ぼすこともある」

「うっ……」

「だがしかし、私達は文句を言えない。それが分かった上で、このゲームをプレイしているからな」


 つまり、自己責任ってことになるよね?

 今更だけど、よくそんなゲームが出回っているんだね。

 ふと社会のことを不審に思ったけれど、今更行っても仕方がなかった。

 だって楽しいんだもん。仕方がないよね?


「なによ、それじゃあ私達、危険に片足を突っ込んでるってことよね?」

「そうですね、実際に今まさに体感していますよ」

「はっ。この依頼、受けるべきじゃなかったわね」


 ベルと雷斬が文句を言っていた。

 私だって同じだよ。本当は受けたくなかった。

 だけど今回だけは受けないとダメ。そんな空気に支配されていたんだ。


「仕方ないよ。受けちゃったんだから」

「そうだな。これは仕方のないこと……と、納得しすぎるのもよくはないがな」


 納得はしたくないし、していない。

 けれどクロユリさんの固有スキル。

 アレを目の当りにしたら、受けるしかなかった。

 まぁ、次回からはこんなことは無いように、硬く釘を刺したけど……


「でもさー、なんで私達だったのかなー?」

「「「ん?」」」


 フェルノがポツリと疑問を口にした。

 私達は耳を傾けると、フェルノが口ずさむ。


「ほらー、こんな危険な場所、私達以外にも適任がいるでしょー?」


 適任が居るかは分からないけれど、実際、誰か居てもおかしくはない。

 何せ温泉の出が悪くなったり、枯れていないか調査する仕事は実際に現実にもある。

 だから私達みたいな極一般プレイヤーが、巻き込まれる方が普通じゃない。


「それにさー、自分達で見に行けばいいんじゃないのー?」

「いや、それはないよ」

「どうしてー?」

「どうしてって、自分達が危険な目に遭いたくないでしょ?」


 これもまた、普通の回答を私はしちゃった。

 実際、自分が危険な目に遭いたくないのは当たり前の感性。

 そのために他の人に頼んだり、巻き込んだりするのも、仕方の無いことだった。


「それじゃあ私達が危険な目に遭ってもいいってことー?」

「う、うーん」


 クロユリさんがそんな薄情な人には見えない。

 これは私の願望かもしれないけれど、そう見ていたかった。

 だけどいざ言われると返す言葉が見つからなくなる。


「ほらー、やっぱり私達、遊ばれているんだよー」

「うーん、そうかな?」


 フェルノはムスッとした顔をする。

 怒っているみたいで、口を尖らせていた。

 だけど私はそんな顔できない。けれど、変な感じではあった。


「はっ。どんな理由であれ、後で問い詰めればいい。とにかく今は」

「さっさと行くわよ」

「そうですね。できるだけ安全に、速やかに終わらせましょう」


 そんな中でもみんな各々の考えを持っていた。

 Nightは後で問い詰めることを選んで、ベルと雷斬は速やかに解決することを選ぶ。

 どのみちここまで来ちゃったんだ。行くしかないし、やるしかない。

 私もその辺は上手く割り切ってみせると、フェルノを連れ、源泉を目指した。

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