表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

217/230

◇217 和と洋の調和

旅館なんて、ここ十年以上、泊ったこともない。

 私達は立派な宿の一室に通された。

 もう、何って言ったらいいのかな?

 本当、凄いしか言えない。


「な、なにこれ? え、え?」

「あはは、天井高いねー」


 私とフェルノは天井を見ていた。

 本当に高くて、目を奪われる。

 何だか不安になっちゃうくらいだった。


「そうね、昔っぽくは無いわね」

「はい。多くの日本風の建物は、その多くが天井が低くなっていますので」


 流石に雷斬とベルは詳しかった。

 昔の家は天井が低かったみたい。

 それじゃあ逆に、このモミジヤでこの天井の高さは、何?


「それじゃあどうしてここは高いのかな?」

「えー、高い方がカッコいいからじゃない?」


 うん、凄く雑だった。

 まぁフェルノらしいと言えばフェルノらしい。

 そう思いつつ会話を合わせると、襖が開かれた。


「戦後の西洋風の建築文化が入って来ているだけだろう」


 襖を超えて部屋に入って来たのはNightだった。

 その瞬間、私達は揃いも揃って、何のタイミングを合わせることもなく、声を出していた。


「「「Night!?」」さん?」


「ふぅ。確かにこのモミジヤは昔の日本を基調にしている。とは言え、西洋風の文化が混ざっていることだってある。そうやって、歴史は積み重ねられてきたんだ。忘れるなってことへの、戒めかもしれないな」


 凄くソレっぽい良いことを言ってる気がした。

 だけどそんな会話、私達の耳に入らない。

 目の前に居るNightこそ、和と洋の調和だもん。


「な、なんだ、その嬉々とした目は」


 Nightが完全に引いている。

 きっと私達の目線が痛いんだ。


「だって、凄く似合ってるよ」

「はい。とてもよくお似合いです」

「西洋人形みたいなNightが着るから映えるのよね。ギャップって言うの?」

「あはは、着物が凄―く可愛いねー」


 フェルノに「可愛い」と言われてしまう始末だった。

 それくらい、Nightの和服姿は似合っている。

 ただでさえビジュアルが凄くいいのに、これはもうズルい。

 雰囲気からして、纏っている気品が違った。性格はアレだけど……


「お前らな……」

「はい、そこまでにしましょうね」


 キレそうになるNightを制止させた。

 ふと襖の奥の廊下。底を覗き込んでみる。

 黒い着物に、赤い帯、頭には何故か黒い百合の髪飾りをしている。


「あっ、えっと……助けてくれた人、ですよね?」

「はい。私の名前はクロユリと言います。以後お見知りおきを」


 妖艶な雰囲気が漂う美しい女性だった。

 特殊な空気を纏っていて、触れたら虜にされてしまいそう。

 そんな立ち入ってはいけない何かを感じ取ると、私は何故か背筋を伸ばす。

 助けてくれたのに、如何して心が警戒するんだろう?


「大変よく似合っていますよね」

「……ありがとな」

「いえ、感謝される筋合いはありませんよ。私が。皆さんを宿へと案内したまでですから」


 したたかな女性だ。何だろう、優しさの向こうに含みを感じる。

 それに気が付いているのは私とNight、それからベルくらいだ。

 五分の三が気が付く中、フェルノは疑うそぶりも見せなかった。

 まぁ、普通に考えて危害を加える気はないみたいだけどね。


「えっと、その、クロユリさん!」

「はい、なんでしょうか?」


 私は勇気を出した。

 振り絞った声は、私達しかいない、広い一室の中に響き渡った。


「宿まで案内してくれてありがとうござました。おかげで助かりました」

「まぁ、ご丁寧にどうも。でも本当に……」

「着るものも、ありがとうございました。でも……」

「そうだな。どうして見ず知らずの私達を助けたんだ?」


 私の言葉をNightが引き継ぐ。

 ずっと疑問だった、このモヤモヤの正体。

 明らかに含みがあって、ソウラさんとは違う。

 もっと濃くて深くて、飲まれたら一巻の終わり。そんな空気を疑心と漂う。


「あの、アキラさんにNightさん、流石に不躾ですよ」

「そうだよー、助けてくれたんだよー」


 雷斬とフェルノは弁護に走った。

 確かに私達は助けられた側だから、何も言えないのが本来。

 だけど今回に限っては、ちょっとだけ違う。


「あのね、タダで助けて貰うっていうのは、怖いことでもあるのよ。人間の持ってる、無償の精神じゃなかった時がね」


 ベルは怖いことを言ったけど、確かにそれもそう。

 私はソウラさんの一件でもう充分凝りている。


「無償の奉仕は、嫌いですか?」

「好き嫌いの話じゃないわ。貴女、一体なにが目的?」

「目的、ですか?」

「そうよ。その顔、明らかになにかあるでしょ」


 ベルが疑ったのは、クロユリさんの顔色。

 ずっとニヤけているよりも、張り付けた笑顔がある。

 その奥には何かを隠しているみたいで、不気味としか言えない。


 更には口調が明らかに変化していた。

 ソウラさんと比較しちゃうけど、クロユリさんの言動にはブレがある。

 だから疑いたくは無いけれど、クロユリさんは、ソウラさんと違って、隠すのがあまり上手くないみたいだ。


「ふふっ、そうですね」


 クロユリさんが笑った。

 その瞬間、空気に緊張感が出る。

 張り詰めたって言うのかな? よく分からないけど、何だか気分的にも嫌な感じだ。


「なにがおかしいんだ?」


 高圧的な態度を取ったNight。

 それだけじゃない。ベルも威嚇している。

 何だかみんなおかしいよ。私はパニックになっていた。


「とてもおかしいですよ。何故なら……」


 クロユリさんがそこまで行って口を閉ざした。

 一体何が言いたいんだろう、シックリ来ない。

 私達が立ち尽くす中、突然襖が開かれた。


「皆さんは、なかなか疑わしい。そして、気付きがあるみたいですね」


 私達の視線が、一斉に集められた。

 開かれた襖。その先に座っている人影。

 頭が狂ってしまいそうになると、私は何度も瞬きをする。


「なにを驚かれているんですか?」


 普通に話し掛けられた。

 それだけで、もう怖いんだけど。

 私は頭を抱えると、みんなキョトンとしていた。


「えっ、貴女は……えっ?」

「アキラさん、どうかされました?」


 普通に名前を呼ばれてしまった。

 私の生を知っているってことは、本人ってこと?

 って言うよりも、何でここに居るの、クロユリさん? 私達と話していたクロユリさんは一体誰なの? 訳が分からない。


「く、クロユリ、さん?」

「どういうことー?」


 フェルノが口を開いた。

 一瞬にして張り詰めていた空気が崩壊する。

 だけど崩壊と言うよりも混沌としていて、私達はあたふたした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ