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◇211 新しい街へ

いよいよ6章。

カクヨム・アルファポリス版で投稿していたリメイク前で登場したあのキャラ達が活躍するぞ!


 現実の季節はもう九月。

 もうじき秋らしいけど、近年では秋は無くなりつつある。

 温暖化の影響らしいけど、それもここ最近は、ちゃんと空きが戻ってきている。

 そんな事を思いつつ、私達は無機質なギルドホームに居た。


「でさー、結局一人百五十円だったんだよ?」

「百五十円? そうか、アルミ類や瓶類は元々買取が安いからな」


 この間のキャンプのことを話していた。

 結局あの後貰えたのは、一人百五十円程。

 それでも凄いんだけど、雷斬はポツリと呟く。


「家電製品には、あまり価値が付かなかったのですか?」

「うーん、分からない」

「壊れているんだから、仕方ないでしょ?」


 ベルが元も子もないことを言った。

 確かに家電は全部壊れていた。

 今から十年以上も前のもので、防水機能は搭載されていた。

 それでもずっと雨風に当たっていたんだ。もちろん錆びて、中もダメになってる。


「そうとは限らないよね? だって、銅とか使ってるでしょ?」


 だけど私は切り返した。

 まだ完全にダメって決まった訳じゃない。

 あまりお金にはならなかったけど、もし中身に、“天然の”銅を使っていたら、凄く高かった筈だ。


「はっ、今の銅は簡単に作れる。金も銀も、大抵の素材は化学の力でなんとでもなるだ」


 Nightがボソッと現実を突き付けた。

 今の時代、文明の利器的なものは、特異的な方向に進んでる。

 だけどそれを作る素材は、簡単に生み出せる。

 だから、昔は価値があって、戦争にまで発展したらしいけど、今の時代では珍しい。

 そもそも人権問題とか、領土問題とか、そんなこと言ってられない程世界は荒廃したから、戦争なんて言葉自体、もはや戯言になっている。


「復興で色んなもの作ったみたいだけど、それでも未だにスマホなんだね」

「進化しすぎることが、仇となることはあるからな」


 Nightはソレっぽいことを言って、話をまとめた。

 まぁ、それもそうなんだよね。

 足りない部分を意識を切り替えて補った私は、何とか理解を示した。


「所でさー、今日はスタットに行かないのー?」


 退屈が嫌いな烈火が呟いた。

 今日はギルドホームから出ていない。

 スタットに行って、ギルド会館から依頼を受けたら様子だ。


「そうだよね。でも私は、こうして喋ってるだけも好きだよ?」


 こうしてみんなでお喋りしているだけも楽しい。

 だってみんな個性的で面白い。

 三者三様で、意見もチグハグでバラバラ。だから“継ぎ接ぎ”なんだけど、それがそれで好きだった。


「でも暇だよー」


 結局こうなっちゃうんだよね。全部分かってた。

 確かに今の所、日まで暇で仕方がない。

 私達はテーブルを囲んでいると、不意にNightが提案する。


「だったら、“新しい街”にでも行ってみるか?」


 ……えっ?

 想ってもみなかった言葉に私は騒然。

 絶句してしまうと、固まって言葉が出なくなる。


「新しい街?」

「そうだ。ずっとスタットだけで活動するのも限界があるからな」


 不思議とNightの話が耳に入って来ない。

 もちろん、本当は逆なんだと思う。

 スッと入って来るのが当たり前で、私は歓喜してもいい筈。


 だけどなんだろう、この感じ。

 あまりにも唐突過ぎてらしくない気がした。

 私は首を捻ってしまう前に、固まって正面を向き続けると、Nightの視線が一瞬だけ泳ぐ。その視線の先には雷斬が居た。


(どうして雷斬を見るんだろう?)


 私は不思議に思っちゃった。

 だけど気掛かりはそれだけにして、Nightはフッと息を整える。

 呼吸で肩を上げ下げすると、Nightはこう言った。


「らしくないと思われて、全然構わない。少なくともどうしたいのか、それを決めるのは個々の意見だ」


 凄くリーダーっぽいことを言った。

 一応私がギルマス何だけど、まぁいっか。

 私は如何したらいいんだろう? そう悩んでしまう中、これまた唐突。だけどまるで図っていたみたいに、雷斬が手を挙げた。


「あの皆さん、一つご提案があるのですが、よろしいでしょうか?」


 本当に珍しい。私達はそう思う。

 親友である筈のベルでさえ何故か引いている。

視線を釘付けにされると、雷斬は堂々とする。


「何処か行きたい所があるの?」

「はい」


 本当に堂々としていた。

 雷斬が珍しいなって、私は素直に思う。


「何処に行きたいのよ?」

「実はですね、モミジヤに行ってみたいのです」


 私が訊ねると、雷斬はスパッと答えた。

 竹を割ったように正確で、街の名前まで確実に答える。

 全然聞いたことがない。だけど既視感がある。


「……モミジヤ?」

「はい、モミジヤです」


 全然ピンと来ない。

 スタットがスタートなのは分かりやすい。

 だけどモミジヤってなに? もしかして……


「紅葉ってこと?」

「そうです。確かその筈です。Nightさん、どうですか?」


 ここはNightに確認を取った。

 「なんで私に」と言いたそうな顔をするが、コクリと首を縦に振る。


「そうだな。モミジヤの名前の由来は紅葉。このことから判る通り、和をイメージした街並みが特徴的な、奥ゆかしさと伝統風景を重んじる街だ」

「和をイメージ?」

「そうですね。私が興味を抱いたのも、それが理由です」


 モミジヤの名前の由来は本当に紅葉だった。

 おまけに和をイメージしているらしい。

 私達はポカンとすると、頭の中でありきたりだけど、分かりやすい街並みが思い浮かぶ。


「へぇー、モミジヤかー。面白そうだねー」

「そうね……って、ソレって日本じゃない? 日本人がわざわざゲームの中の日本っぽい場所に行くの?」

「はい。以前から興味があったので、この機会にと」


 ベルの言うことは真っ当だった。

 確かに私達は日本人で、ゲームの中の日本っぽい所に行く。

 大抵あるけれど、日本をイメージした和のゲーム。

 きっとそんな感じだと、私は頭の中で想像する。


「でも面白そうだよね」

「そうだな。モミジヤか……確かに和をイメージしている街並みではある。現実で言う所の京都・奈良・和歌山・三重を混ぜた感じだな。過去の産物か」

「結構色々混ざってるね」


 近畿地方の他の県も混ぜてあげて欲しいな、せっかくなら。

 と、私は過去の産物の話をする。

 未だとそんな県は何処にもないのに……って、京都はあったよね? 名前そのまま。

 私は頭の中で地図を思い描くと、そんなのは如何でもいいみたいで、Nightに声を掛けられた。


「どうするんだ?」

「どうするんだって、私に訊くの?」


 何故かNightに訊ねられた。

 私は困ってしまうけれど、期待した目を一身に受ける。


「お前がギルマスだ。お前が決めろ」

「私がって……」


 こんな時だけ、都合よくその内容を引っ張って来ないでよ。

 私は困り顔を浮かべ、みんなの顔を一瞥。

 反応を確かめるけれど、顔色を見ただけで明らか。面白そうにしている。


「みんなは……うん、行きたい。行ってみたい! スタット以外の街がどんな所で、どんな景色で、どんな人と出会えるのか、私は興味があるな」


 私も新しい街に行ってみたい。

 無性に湧き上がる好奇心が、私自身の考えを一つにする。

 スタット以外の街がどんな所で、どんな景色が広がっていて、どんな人達が居て冒険できるのか。色んな感情が高揚感に変ると、私の結論はストレートだった。


「賛成―! 私も行きたい―」

「新しい街、しかもモミジヤ、センスあるわね、雷斬」

「よかったです。皆さんに納得していただけて」


 みんなの反応もよさそう。

 如何やら私の選択は間違っていなかったらしい。

 ホッと胸に手を置くと、Nightは席を立った。何処かに行くらしい。


「そうと決まれば明日には出るぞ。今日中に馬車の手配だな」

「早っ、流石Night」


 Nightは早速行動に移っていた。

 無駄なことは一切しない、本当にスマートな選択。

 私は度肝を抜かれると、いつものことだけど、何だか見入ってしまう。


 それだけ好奇心が爆発している。

 私の感情が激しく震えている。

 何となくだけどそんな気がすると、意識をわざと切り替えたりなんかしない。

 このワクワクを胸に抱いた……明日の地獄を知らぬまま。

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