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210/230

◇210 何だか、寝付けなかったな

楽しい、楽しぃ?、登山が……おわ、る?

「ふはぁー」


 私は珍しく欠伸を掻いた。

 凄く眠たい訳じゃないけど、なかなか寝付けなかった。

 烈火が戻って来たあの後、目が冴えちゃって眠れなかった。

 本当にビックリさせないで欲しいと、私はテントを片付けながら思う。


「寝不足、明輝?」

「うん、でも眠たくはないよ?」


 由里乃が心配して声を掛けてくれた。

 だけど私は大丈夫だ。


「あはは、珍しいねー、明輝」

「う、うん」


 誰のせいだと思っているのかな?

 私は怒ってはいないけど、烈火を凝視した。

 全く分かっていないみたいで、適当に片付けをしている。


「これでよし」

「後は、帰るだけだね」


 私達は片付けを終わらせた。

 テキパキと持ってきた荷物を片付け切る。

 私達が持って来たゴミは何一つ落ちていない筈……多分。


「それじゃあ帰ろう―」

「って、その前に」


 私達は拾ったゴミを見た。

 流石にこの量を一度に下ろすのは無理がある。

 如何しようかと悩む中、祭は何か作業をする。


「祭、なにしてるの?」

「作ってる」

「作ってる?」


 祭はパズルみたいに何か重ね始めた。

 見た所、四角い箱を作っているみたい。

 その脚にはコロコロ回る車輪を付けていた。


「それって、キャスターだよね? どうするの」

「こうするの」


 祭は手早く箱を創り上げ、車輪も付ける。

 すると組み立て式の台車(カート)が出来上がる。

 こんなのまで持って来ていたんだ。私は驚いた。


「ここに全部詰めて、後は引いて持って下りる」


祭は全部考えていた。

 カートにゴミを乗せることで、私たち一人一人の負担を減らす。

 大きな荷物はコレを持って来たからなんだ。凄い、私は感心しかしない。


「凄い、祭頭いいね」

「万が一のため」

「それが功を奏したんだね、凄い」


 まるで予見していたみたいだ。

 祭はペコリと頭を下げる。

 恥ずかしい訳じゃないにしても、淡白な返しだった。でも祭っぽい。


「んじゃ、この中に入れるよー」

「はいはい、ドンドン詰めよう」


 烈火と由里乃は機敏だ。

 集めた重いゴミ達を、袋ごとカートに押し込む。

 全部詰め終わると相当な重量になっていて、動かすだけでも一苦労だ。


「凄い量だね。運べるかな?」

「安心して、仕掛けがある」

「仕掛け?」


 祭は私の不安を払拭する。

 まるでこうなることも分かっていたみたいだ。

 用意周到で、祭はキャスターに付いていたロック機構を外す。


「ここをこうすれば……はい」

「はいって? うわぁ!」

「「由里乃?」」


 何故か由里乃の体が持って行かれる。

 前に倒れ込みそうになると、キャスターの部分が変。

 ロック機構を解除されたことで、プランプランと宙に浮き、カート全体が斜めになっていた。


「こうすれば、坂道を利用して下りれる」

「でも、危なくない?」

「もちろん。だから反対からも引っ張る」

「作用・反作用の法則だね」


 お互いが一つのものを引っ張り合う。

 カート自体はゴミで前に、後は誰かが後ろに。

 そうすることで、変に進み過ぎたり、転んだりする可能性は極端に減る……筈だよね?


「上手く行くかな?」

「上手く行かせる。それじゃあ烈火、お願い」

「はいさー」


 烈火は祭に頼まれた。

 カートを押す役を任されると、パワーだけでカートを操る。

 凄まじい身体能力(フィジカル)に私達は度肝を抜く。


「おお、結構いい感じだねー」

「いい感じ?」

「うん。重くて引っ張られて、なんか楽しいー」


 全然分かち合えなかった。

 だけど楽しそうで何より。

 私は烈火が充分楽しんでいる、それだけで満足すると、早速荷物を持って下山する。


「それじゃあみんな、帰ろっか」

「おう、それじゃあ出発―」

「って、烈火速いよ!」


 掛け声を言った瞬間、烈火は走り出す。

 もう落ち着きが全然ない。

 烈火なら法則なんて無視して、自力でカートを制御できるのにと、私は思った。


「あはは、面白いね」

「うん。全然違う」


 由里乃と祭も後を追う。

 私達は下山をする中、烈火がポツリと呟いた。


「そう言えばなんだけどさー」

「ん?」


 烈火から話しを振るなんて珍しいかも。

 もちろん、普段から話題を引付けてくれるのは烈火。

 だけどこの妙なテンションは一体何? 私は意識を切り替えた。


「昨日、山の中でクワガタを捕まえてた時、変なものを見たんだよねー」


 烈火は変なものを見てしまったらしい。

 “変なもの”ってなんだろう? あまりにも漠然としている。

 私は気になってしまうと、由里乃と被った。


「変なもの?」

「なになに、それなに?」


 私と由里乃は話に釣られた。

 あまりにも続きも含みもありそうだ。


「うーん、分かんないけどさー、人の形をした黒い影? 何人もいたような気がしたけど、気のせいだったのかなー?」


 山の中で何人もの黒い影を見た。

 しかもソレは人の形をしていたみたい。

 明らかにヤバい集団だとは思う。もしかしたら、カブトムシとかクワガタの乱獲だったりして。色んな想像が出来てしまうけど、でもやっぱり……


「こ、怖い話?」

「うーん、分かんない」


 普通に考えたら気のせいだと思う。

 だけど山は何が起こるか分からないってお母さんも言っていた。

 それは何処でもなんだけど、祭が話してくれた怪談がチラ付いて、私は気になってしまう。もしかしたら幽霊だったんじゃないかって。


「二人はどう思う?」


 私は由里乃と祭に訊ねた。

 二人は如何思うんだろう。

 普通に幽霊とか? それとも気のせい、つまり錯覚?

 期待はしていないけど、由里乃と祭は答える。


「幽霊とか!?」

「ただの影。枯れ尾花」


 二人共全然意見が違っていた。

 由里乃は幽霊を推していて、祭は草を推す。

 どっちも意見が違っているけど、そこで白熱のバトルは……


「幽霊の方が面白いよ?」

「この世の不思議は大抵が理由がある」

「でも祭が怪談を話したんだよ?」

「アレはそう言うお話」


 色んな意味で否定し合っている。

 ぶつかり合う感性に、私は面白いと思う。

 だけど本当になんだったんだろ? どっちにしても不思議だ。


「やっぱり不思議なことってあるんだね」

「その方が面白いでしょ?」

「そうそうー」


 不思議なことは世界中にたくさんある。

 もちろん解決している不思議もあるけど、そう思えるだけで面白い。

 私がそう呟くと、祭でさえ首を縦に振った。


「またこの山に来たら分かるかな? みんなでキャンプしに」

「うんうん、行こう行こう―」

「今度は海もないかもね」

「ボランティア抜きで」


 確かにボランティア精神で来ていた。

 それとは違って、普通に楽しみたい。

 そう思うと、もう帰るんだなって気持ちになる。


 私はシンミリとはしない。

 寧ろ胸が熱くなると、山に感謝する。


「でもありがとね、楽しい思い出を作らせてくれて」


 夏休みの思い出になった。今度はちゃんとキャンプに来よう。

 私はそう呟いた途端、奇妙なことが起こった。


 ヒュルル~


 突然風が吹き抜けた。

 まるで口笛のような音色が聞こえてしまう。


「今のなに!?」


 私はバッと振り返った。

 だけどそこには何も居ない。

 おかしいな、気のせいだったのかな? 私は不思議に思う。


「どうしたの、明輝?」

「なにもいない」

「あはは、怖がり過ぎだってー」


 三人は私のビビり具合が面白かったらしい。

 別に怖くなって振り返った訳じゃない。

 だって昔もこんなことあったからで、私は首を捻る。


「そうだよね、なにもいないもんね?」


 私は不思議に思っちゃった。

 もし誰か居たとしても、きっと敵意みたいなものはない。

 だけど突然風が抜くなんて、海も山も不思議だなって、私は考え過ぎてしまう中、四人揃って下山した。

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