◇208 怪談をしよう1
マジでちゃんとした怖い話です。
「これは私達と同じように、山にキャンプに来た男女四人の話」
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四人は同じ大学・同じ学部に通っていた。
ある日、A次が夏休みにキャンプを使用と言いだした。
三人は乗ると、その夏、とある山でキャンプをすることにした。
「おお、いい景色だな、おい!」
「そうだね~」
A次は絶好の景色を満喫していた。
それにB美も朗らかに返すと、C太郎が怪しい物を見つけた。
「おい、なんだよ、コレ」
「ん?」
C太郎が立ち止まったので、A次とB美も気になる。
腰を低くしたD子は、怪しい物を覗き込む。
如何やら看板の様で、何か書かれている。
「えっと、コノ先……カ……ズ? なによ、これ」
「あれじゃねぇ、登山者用の注意書きじゃねぇ?」
A次は少し調べていた。
今四人が登っている山は、元々登山者の多い山だった。
けれど登山中に行方不明になる事件が相次いだ。
それ以来、入山を禁止されている、曰く付きの山だった。
「この山、今じゃ入山禁止なんだよ」
「入山禁止~?」
「入っちゃダメってことだよ。って、止めた方がいいだろ」
C太郎は入山することを止めようとした。
それもその筈、C太郎はとても真面目だ。
A次達と違って速やかに退散しようとするが、それを許さない二人。
「なんだよ、C太郎。いい子ぶりやがって」
「そうよ、C太郎。四人で予定を合わせて来たのよ? ここで帰るなんて許されないわ」
強引に引き留められたC太郎は仕方が無く残った。
こうして四人は、本当は入山してはいけない山へと立ち入った。
「いや、それにしても静かな山だな」
それから何事も無くキャンプを続けていた。
途中で火起こしが上手く行かなくて焦ったり、毒キノコを間違えて採取して来るアクシデントはあった。
それでも些細な事で、誰も怪我をせずに夜を迎え、四人はそれぞれ用意した二つのテントへと入っていた。
「なぁ、この山行方不明者が多いって言ってたよな?」
「ん? ああ、そうらしいぜ」
「アレって、おかしくないか?」
C太郎はつい疑問に思った。
何せこの山は一本道だ。
途中でキャンプのために脇道に入った四人はまだしも、登山者が迷うような余地はない。
「アレなんじゃないのかな~?」
「アレ?」
「ほら、神隠し的な奴だよ~」
B美は突飛なことを言った。
毎日が不思議ちゃんなB美の話だ。
話半分に聞いていた。
「なに言ってるのよ、B美」
「だって、神隠し意外に無いよね~。この山は元々人間さんが入るの禁止で~、山が怒ってるとか?」
「はぁ、山が怒るってなんだよ。変な話だな」
「そうよ、B美。ちょっと不思議ちゃんが過ぎるわよ」
誰もまとめてB美の話を真剣に聞こうとはしない。
もちろんC太郎も“そんな訳”と話半分だ。
しかしそうと考えれば行方不明者が多いのも無理はない。
だけど一体何故? 如何やって消えて……と考えてしまった。
ガサガサガサガサガサガサガサガサ!
「ひやっ、な、なによ!?」
「急に外から変な音がしたぞ!?」
突然テントの外から物音が聞こえた。
ガサガサと草木を掻き分ける音だ。
動物でも横切ったのか? クマ避けはシッカリした筈だ。
四人はそう思う中、突然C太郎が呟く。
「まさか、神隠しに遭った人達?」
「はっ、なにバカなこと言ってんだよ!」
「そうだよな。そんな訳がないよな?」
自分で言ったことをA次に問われ否定した。
あり得ない。そんな非現実的なことは起きない。
そう思い込みたいC太郎だったが、ドンドン音が重なり合い、何故か近くに聞こえた。
「お、おい、おかしいだろ。なんか音が近くないか?」
「そうよ。もしかして、クマ?」
「クマじゃないよ~。きっと、私達を迎えに来てくれたんじゃかな~?」
突然変なことを言いだしたB美。
流石にこの状況で不思議ちゃんキャラは要らない。
D子はB美に対して怒鳴るように叱り付ける。
「ちょっとB美、止めてよね。変なこと言うの」
「変な事じゃないって~。私達、もう手遅れなんだけどね」
「手遅れ? なに言ってるんだよ、お前頭おかしいんじゃねぇのか?」
三人はB美のことを心配した。
寧ろ貶してしまうと、それだけおかしなことを言っていた。
「ううん、頭はおかしくないよ~だって、ほら~」
それでもB美は態度を変えない。
改める所か、ニタリ顔を浮かべる。
B美がそう言った瞬間。
テントがガサガサと揺れ始めた。
「う、うわぁ、なんだ!」
「この感じ、風じゃないよね? 誰かが揺らしてる?」
「ちょっとC太郎も変なこと言わないで。B美、これどうしたら……B、美?」
突然のことに三人は慌てふためく。
きっとB美の仕業だと高を括る。
決めた付けたD子はB美を睨み付けると、言葉を失った。
「おい、どうしたD子」
「なにかあったの?」
「そんな、嘘よ、貴女B美じゃない、一体貴女誰……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
D子は突然絶叫を上げた。
その瞬間、A次とC太郎のテントにも異変が起きる。
ただ揺れるだけじゃない。幾つもの手形が押し付けらえた。
バンバンバンバンバンバンバンバン!!!
けたたましい程なり響く。
今にもテントを突き破ってしまいそう。
A次とC太郎は動くこともままならない。
「どうなってるんだよ、一体なにが起きているんだよ!」
「分からない。分からないけど、D子、D子、返事をして」
A次は取り乱し、C太郎はD子に声を掛けた。
しかしC太郎の声が聞こえていないのか、気絶でもしているようで、D子の反応が無い。
「クソ、こんな所にいてたまるか。おい、テントを開けるぞ!」
「ダメだよ。そんなことをした、戻れない気がする」
「うるせぇ、いいから開けるぞ!」
A次は恐怖のあまり、テントの入口を開けようとする。
しかしC太郎は嫌な予感を感じてしまい、A次を止めた。
しかしA次はC太郎の制止を振り切ると、テントの入口を開けた。
ギュゥゥゥゥゥン!
ファスナーを開いたA次。
すると音が鳴り止み、手形も消えていた。
「お、おい、誰もいないぞ?」
「う、うん。今のは一体……」
二人はテントの外を見た。
そこは何事も無い、平穏が広がっている。
焚火はとっくに消えていた。静寂な夜がそこにある。
「こ、こんなとこ、とっとと出ようぜ」
「う、うん。でもその前にB美とD子を……」
A次とC太郎は得体のしれない恐怖を感じた。
急いでこの山を下りよう。
そう思ってテントを跳び出そうとするが、C太郎が固まってしまう。
「お、おい、どうしたんだよ、C太郎。なに顔を青白くして」
「A次、A次、A次……」
「はっ、なんだよ。俺の名前を呼んでもなにも……」
C太郎が顔が青白くなっていた。
まさしく顔面蒼白で、A次はその顔を見ている。
一体背後に何があるのか、それとも何か居るのか、恐怖が悍ましく包む。
ドクンと心臓の鼓動が胸を叩く。
それを皮切りに、テントの外から見えない何かがヌルッと出て来る。
A次の背中を細い指が引っ掻いた。
「ねぇ、連れてって」
A次とC太郎は女性の声を聞いた。
けれどただの女性の声じゃない。
男性の声・獣の鳴き声、全てが混ざったような声が背中を撫でると、二人は恐怖で動けなくなる。
それからしばらくの月日が経った。
大学の夏休みが終わっても、四人は講義に出ていない。
家族も心配し、警察に連絡したけれど、今でも見つかっていない。
行方不明になってしまった。まるで山に飲み込まれてしまったみたいに。
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——
——
「あれから数年。今も見つかっていない。四人は何処に行ってしまったのかな? きっと今もその山で……お終い」
祭はとても良い語り口調で話し終えた。
それを聞いていた私達は各々の感想を口にする。
「怖いよ、祭」
「でも面白かったー」
「よく知ってるね、祭。もしかして、ネットで見つけた?」
普通に怖かった。
だけどネットの掲示板に書かれていそうな話しでもある。
きっと嘘なんだろうなと割り切ると、祭は真顔になる。
「伯父さんから聞いた」
「伯父さんって、怪談師の?」
「うん」
祭の伯父さんプロの怪談師。
偶に会う時に幾つもネタになる話を聞いていた。
普通に面白かったし、語り口調も祭に合っていた。
私は褒めるんだけど、由里乃は首を捻って、野暮なことを言う。
「それじゃあ嘘ってこと?」
「さぁ」
「さぁって……」
由里乃は祭のことを問い詰めた。
そんなにマジにならなくてもいいし、祭も乗らなくていい。
私はそう思ってしまうと、祭は上手く締める。
そんな言葉を口にした。
「怪談は怪談。それ以上でも以下でもない」
祭はまるで信じていない。
あくまでも怪談は怪談だと割り切る。
寧ろ嘲笑してしまうと、普通に怖くてなって肝が冷えちゃった。
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