◇201 相性のいい二人
そう言えば、今もキャンプって流行ってるのかな?
「イェーイ、テントお終い!」
烈火は拳を建て上げた。
無事にテントを建て終わると、興奮が高まっている。
「いやいや、烈火はなにもしてないよね?」
「由里乃、それは言わない約束だよねー」
確かに、烈火は何もしていない。
テントを建てたのは、ほとんど私だ。
それをこうしてイジられるなんて……まぁ、烈火は笑って済ましちゃうけどね。
「由里乃、私達もやってない」
「あっ、そうだね。でも、手伝ったよ?」
「それは私がしたこと」
祭は由里乃に追い打ちを掛けた。
そんなことしなくてもいいのに。
私は思ってしまうと、由里乃は親指を立てた。
「それ、私が一番気にしてるからね!」
気にしているんだ。別に気にしなくてもいいのに。
私は頬を掻くと、とりあえずテントを建てたことで、荷物を仕舞った。
流石に盗みには入らないと思うけど、一応仕舞っておく。
「みんなも荷物仕舞った方がいいよ」
「だね」
「うん」
由里乃と祭は淡白だった。
実際、別に面白返しなんて無い。
私は自分が建てたテントの中に荷物を仕舞うと、早速キャンプを満喫……する訳も無かった。
「それじゃあみんな、行こっか」
私は自分から率先して号令を掛けた。
すると由里乃と祭は意外そうな顔をする。
「おぉ……」と目を見開いて、ジッと私のことを見つめる。
「な、なに?」
もしかして、変だったのかな?
私は挙動不審な態度を取る。
すると由里乃と祭は私の態度に歪さを感じた。
「いや、明輝ってそんな感じだっけ?」
「どんな感じなのかな?」
「リーダーっぽい?」
「リーダー……そうかな?」
私は少しだけ口角を上げていた。
何だか嬉しくなってしまうと、烈火はニヤニヤしている。
ちょっと止めて欲しいな。でも、何だか貫禄が出てきたのかな? 嬉しい。
「もしかして、なにかしてる?」
「ゲームでギルドマスターやってるもんねー」
「えっ、そうなの!?」
「う、うん」
速攻で烈火がバラしてしまった。
私は内緒にしててもよかったのに。
だって、別に言わなくても良いことだから。
でも言ったおかげで、空気が変わった。
由里乃は私の想っていた行動を取る。
目をキラキラさせ、好奇心に身を任せる。
「なに、それ。メチャクチャ楽しそうだね」
「由里乃、近いんだけど?」
「いやいや、落ち着けないでしょ。まさか、明輝がギルマスをやってるなんてね。面白い、面白過ぎる、不適合具合でしょ!」
凄い悪口を言われてしまった。
もちろん、由里乃は烈火と違う。
ちゃんと弁えていて、言葉を遮ったりする。
だから変な言葉は極力使わなくて、別に私も凄く嫌な感じはしなかった。
「明輝のリーダーシップは凄いよね。カリスマ性って奴?」
「そんなの私にはないよ?」
「いやいや、気が付いてないだけだよ。ねっ、祭」
「うん!」
珍しい。祭は相槌に力を入れた。
それこそ、グッと重みを加えていた。
そんなに“らしくない”のかな? 私はグサッと胸に見えない痛みが走った。
「祭まで、酷いよ」
「ごめん」
「まぁいいけど……それより、由里乃を引き取ってよ!」
私は由里乃を祭に引き取って貰うことにした。
だけど祭も由里乃と同じだ。
私にグイグイにじり寄る。別に悪気はないみたいで、私は詰め寄られた。
(凄く困るな……烈火はこういう時、助けてくれないから)
本当は親友のピンチに、助けてくれてもいい。
だけど烈火はこんな時、面白そうな方に動く。
だからニヤニヤしていて、頭の上で腕を組んでいた。
「それで、どんなゲームで遊んでるの?」
「私と烈火は、CUってゲームで遊んでるよ?」
私は烈火も巻き込むことにした。
すると由里乃と祭は振り返る。
一瞬凄い形相が向けられたけど、ニコニコ笑顔で上手く返す。
流石の烈火だなと私は感心する中、由里乃と祭は訊ねた。
「CUって、Creatures Unionのこと!?」
「凄い。あのゲーム、再販待ちなのに」
確かにCUは凄く人気の高いゲーム。
完成度がエグ過ぎるって言われている。
だけど普通には買えない。何せ再販待ちで、一般販売は基本的に何年後かになりそうだった。
「私は貰っただけだよ」
「貰ったの? どんな富豪なんだろう」
「ゲーム会社の社員とか?」
「ああ、その可能性あるよね」
確かに安城エルさんは、ソレっぽい雰囲気を漂わせていた。
ゲームの開発・販売元も、エルエスタ・コーポレーションだった。
あまりにも関連性が強かったけど、正直、そんなの如何でもよかった。
「それよりみんな、私達にはやることがあるよね!」
このタイミングで無理矢理私は話を変える。
横にスライドできないなら、縦に持ち上げればいい。
私は二人を押し返し、食い気味な質問攻めから抜け出すと、烈火に目配せをする。
「えーっと、なにするんだっけ?」
「この山に来た目的だよ。思い出さないとダメだよ?」
別に山にキャンプをするためだけにやってきた訳じゃない。
今日は他に誰も居ないみたいだけど、実際この山は“汚れて”いる。
それを何とかするのが、今回の一泊二日のキャンプだった。
「あっ、そっか。ゴミ拾い!」
「「「そう!」」」
私達はあくまでもボランティア。
ゴミ拾いをするためにこの山にやって来た。
夕雲山は、見た所だと、あまりゴミは落ちてない。
でも、登山客や無断でキャンプをしに来た人達が、定期的にゴミを捨てていく。
一応ロボットが毎日のように掃除をしてくれている。
だけど人間の目じゃないと見えない部分もある。
そこで学生向けにボランティア……と言う名の内申点稼ぎイベントが幾つも開催されていた。
「ちなみに集めたゴミは」
「回収して、後で収集業者に買い取って貰うらしいよ」
「そうなんだ」
「後ね、ボランティアだけど、ちょっとバイトでもあるんだ」
由里乃が面白いことを言った。
ここが凄く大事なポイント。
ただのボランティアじゃない。寧ろアルバイト感覚だった。
「集めたゴミを買い取って貰って、一部の報酬を貰える。役所から」
「いいねいいね、それいいね!」
「ボランティアじゃないけどね」
ボランティアって部分が欠落している気がする。
だけどそんなこと構ってられない。
今の時代だと、そこまでお金が無くても無理して働かなくてもロボットやAIが何とかしてくれる。寧ろ、正当な報酬を貰えるだけで、大きな喜びに繋がった。
だからメキメキ張り切ると、烈火は声を上げる。
「それじゃあ頑張って集めるぞー?」
「そこではてなは要らないよ、烈火」
腕を振り上げた烈火。テンションが違うのかなと自分で考える。
いやいや、今回はそれで全然合ってる。
私は訂正することなく受け流すと、烈火を丸め込むのだった。
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