◇20 シャンベリ盆地の神隠し
盆地なのにさ、ここ森なのよね。
盆地っぽく無いのね。
私はシャンベリ盆地にやって来た。
そこは盆地っていうよりも、不気味な森に覆われた奇妙なダンジョン。
真っ暗闇に映し出されていて、私は全身が無部類した。
「って、なんで真っ暗なの!?」
今になって私は気が付いた。
いや、気が付いていたのに見過ごしていた。
スタットに居た時は青空が広がっていた。
だけどシャンベリ盆地に近付くに連れて、ドンドン空模様が変化していた。
青空が夕日に染まって、気が付けば真っ暗闇。月明かりでも射しているのかと勘違いしてしまいそうな程、真っ暗闇の向こうから、太陽の陽射しが射していた。
「どうして? どうしてここだけ真っ暗なの?」
私はシャンベリ盆地に来て早々、恐ろしく思ってしまった。
だけど来てしまった以上仕方がない。
この胸の高揚感を押し殺さないようにしながら、私はシャンベリ盆地の中を散策する。
隠しダンジョン、シャンベリーに行くためだ。
「って言っても、シャンベリーの入口が開いているらしいけど、何処にあるの?」
私にはそこまでの知識なんてある訳なかった。
来たら一瞬で行けるのかと思い、少し待ってみた。
だけど全く反応が無くて私は焦っちゃって、今こうしてシャンベリ盆地を散策する。
「どうやったら行けるのかな?」
私は腕を組んだまま歩いていた。
モンスターが襲ってくるわけでもなく、ましてや面白いことも起きたりしない。
淡々と時間流れる中、私はこう考えてみた。
「もしかして、シャンベリーなんて無いんじゃ?」
絶対に考えちゃダメだと分かっていた。
だけどそうとしか思えないくらい何も無い。
試しに木の幹に体を預けても、扉が開くような様子は無かった。
「ダメだ。もう、どうやって行けばいいの?」
私は周囲をキョロキョロ見回す。
当然そんなことで入口が出て来てはくれない。
「もうちょっと先に行ってみる?」
私は森の奥地を覗き込む。
そこにも真っ暗闇が広がっていて、ちょっと行くのは勇気がいる。
私はゴクリと喉を鳴らす。流石に行くのはな……と思いつつも、ここまで来たなら行くしかない。
「もうちょっとだけ行ってみようかな」
私は体を預けていた木の幹から離れる。
代わりに暗闇目指していざ行くと、全身がピリピリしてしまう。
何だか撫でられたような気がしてしまい、私はピタッと足を止めた。
「ううっ、寒い……」
私は腕を擦っていた。すると鳥肌が立っている。
ブルブルと毛穴が浮き上がると、私はゾッとしてしまう。
何だか“来るな”って言われている気がした。そうとなったら……
「帰ろう」
私は深追いはしなかった。
ゲーマーなら、好奇心旺盛な冒険スピリッツがあるなら、ドンドン先に行くと思う。
だけど私にはそんな真似する気は無く、踵を返して来た道を引き返そうとした。
「待って。もしかして、私のことをわざと引き換えさせようとしてる?」
何だかそうとしか思えないくらい、タイミングが良すぎた。
これは闇雲に引き返すのもダメな気がする。
思考がピタッと止まる中、私の意識だけが超高速で促し掛け、思考する前に行動を決めていた。
「……行くしかない。ここは行ってみるしか……えっ?」
私は踵を返すと、言葉を失ってしまった。
と言うのも目の前に広がっている景色に見覚えが無いのだ。
私の視界に飛び込んできた景色。
それは恐ろしい森じゃなくて、巨大なお城。
悠然と姿を現すと、太陽の代わりにやって来た満月に朧気に照らされている。
「どうなってるの、これ? ……ひやっ!?」
困惑した私の足は前に進んでいた。
けれど右の前足、指先の部分が宙に浮いた。
地面から剥がされると、私は我に返って立ち止まる。下を見ると道が無くなっていて、私は瞬きを繰り返して、腰を抜かしそうになった。
「うわおっと!?」
だけど体幹が強いおかげで転ばずに済んだ。
とは言え驚いたのは本当で、私は口がパクパク動いて慌てふためく。
急に景色が、否、世界観が一変したんだ。冷静になんて当然いられない。
「怖い。ここ何処!? っていうか、これなに? もしかして仕様?」
もしもバグなら怖すぎる。私、本当に帰れるのかな?
恐怖心に苛まれるも、これがゲームの仕様だとはすぐに気が付けた。
だけどこんな偶然あるのだろうか。私の中で確信を持って言えるのは、ここが隠しダンジョンだと言うこと、そして何故かここに来れたってことだ。
「もしかして、一回帰ろうとして、辞めたから?」
正直、憶測でしかなかった。
だけど、そうだとしてもだ。私はここに来た。
目の前に浮かんでいるお城。
アレがもしもそうだとしたら、私は神隠し的なノリでここに来たことになる。
「アレが幽幻の居城:シャンベリー。で、その下に広がっているのは……」
私は視線を下へと移した。
下は盆地になっていて、ここから滑って下りるには危険。
だから無事に下りられる場所を探さないとだけど、それより気になっちゃうものがある。
「アレってどう見てもお墓だよね? なんでこんな所に? しかもこんな数……怖いよ」
その光景はまさに鳥肌もの。
シャンベリーを囲むようにたくさんのお墓が立ち並んでいる。
まさしく墓地で、私は息を飲まされることになった。
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