表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

199/230

◇199 初心者連れて山キャンプ

ここからしばらく、ガチの閑話休題です。

「やっと着いたー!」


 烈火は腕を振り上げた。

 両腕が天高く突き上げられると、声が高らかに響き渡る。


「烈火、楽しそうだね」


 私はニコッと笑みを浮かべた。

 いつものことだけど、烈火は相変らずテンションが高い。


「いやいや、本当、烈火は楽しそうだね」

「本当、そう」


 今日合いの手を入れるのは、私一人じゃない。

 とは言え、現実(リアル)の蒼伊達でもない。

 それじゃあ一体誰? もちろん、CUとは違う、学校の友達だ。


「付き合ってくれてありがとね、由里乃、祭」

「ううん、キャンプ久々に行きたかったんだよね」

「全然、構わない」


 コクリと頷いてくれた二人。

 一人は中春由里乃(なかはるゆりの)。眼鏡が似合わない、明るい女の子。

 もう一人は秋風祭(あきかぜまつり)。物静かで、淡白な性格だ。

 二人は昔からの幼馴染らしくて、とても仲がいい。


 同じ美桜高校に通っている同級生。

 同じクラスで、二人共卓球部に所属している。

 凄く強いダブルスみたいだけど、どれくらいなのかはよく知らない。


「キャンプ、山キャンプ」

「そう、山キャンプ! だから楽しみなんだ」

「あはは、私もー。キャンプ始めてー」


 みんな楽しそうだった。

 だけど烈火は初めてなのがちょっと心配だ。

 初キャンプでいきなり山なんて、少し難しいかも。

 ここは無難にキャンプ場にしておけばよかったと後悔した。


「うーん、初めてでいきなり山は難しかったよね」


私達は、奥多麻にやって来た。

 昔はこの辺りのことを奥多摩って呼んでいたらしいけど、今は違う。

 そんなのどれだけ昔のことなんだろうって感じだ。


 それでもこの辺りにやって来たのは理由がある。

 私達はキャンプをしにやって来たんだ。

 昔から、この辺りにはキャンプ場が多くて、今だとあまり流行ってはいないけど、夏休みってことで、せっかくだから来てみたんだ。


「確かに難しかもね。でも、難しい方が面白くない?」

「由里乃、それは由里乃だけ」

「えー、難しい方が面白いよ?」

「由里乃、アグレッシブに動くなら、コンタクトにした方がいい。その方が、もっと動きがよくなるから」


 由里乃と祭は両極端な性格だった。

 由里乃は烈火に近くて、凄くアグレッシブ。一方の祭は蒼伊みたいに静か。

 だけどお互いに何処かが近しいのか、気持ちが合致することも多かった。


「あー、ダメダメ。私、コンタクト怖いもん」

「コンタクトの方がいい」

「いいや、私は眼鏡でやるよ!」


 山を目の前にして、よく分からないことで揉め始めた。

 喧嘩する程仲がいいって言うけど、本当に二人は仲がいい。

 実際、揉めているって言っても、本当に大したことのない話だ。


「由里乃って、そんなに目が悪いのー?」

「ううん、一・五はあるよ」

「それじゃあなんで眼鏡?」

「可愛いからだよ!」


 全然眼鏡を掛ける必要が無かった。

 それじゃあコンタクトじゃなくてもいいのに。

 私は野暮なことを思うけど、視力が良いことに変わりないなら、全然OK……かも?


「そんなことより、早く入山しようよ?」


 私は山の入口でたった四人、立ち尽くして喋るのは止めにする。

 すると二人共私の意見に従ってくれた。

 キッパリと話を終わらせると、私達は早速山に入山した。



 私達は登山を始めた。

 なんでこんなことになったのかって言うと、由里乃の要望が全面に押し出されていた。

 初心者を連れてキャンプ場じゃない、ちゃんと許可された山でキャンプをするなんて。

 普通に考えたら、バカみたいな話だなって思う。


「ふんふふーん。登山、楽しいー」

「ねっ、楽しいよね」


 烈火と由里乃は楽しそうだった。

 お互いの性格が似ているからか、何だか同じ色が見える。

 熱は違うと思うけど、燃え上がる様な熱と心地の良い爽やかな熱に、私と祭はうなされそうになる。


「二人共、凄く楽しそうだね」

「うん。目的、忘れてる?」

「あはは、そんな感じするよね」


 私達の目的は別に登山じゃない。

 それにどうせなら、満天の星空とか、朝日とかの方がテンションが上がる。

 そんなノリだったけど、二人には通じそうにない。


「二人共、遅いよー」

「二人が速すぎるんだよ」

「えっ? そうかなー?」

「そんなことないよね? 楽しいからだよね?」

「そうそう、由里乃正解―!」


 全然テンションが違っていた。

 温度感が百八十度違うからか、私と祭は乗り遅れる。

 これって合わせた方がいいのかな? そう思ってしまう。


「本当に、二人とも忘れているみたい」

「うん」

「キャンプ用品、沢山背負っているのに、なんであんなに余裕そうなのかな?」

「異次元」


 私達はキャンプ用品を持参している。

 何せこの山にキャンプ場はない。

 一応キャンプを許可されているだけだ。


 だから持参した荷物は全部運んでいる。

 普通に考えて凄く重い。四人分だから疲れる。

 けれど烈火と由里乃は無尽蔵の体力だ。

 全然疲れ何て見せないので、寧ろスイスイ登って、ドンドン遠ざかっていく。


「なんだろう、速くなってない?」

「そう。このままじゃ、置いて行かれる」


 私と祭は少しだけペースアップした。

 それでも二人の背中が見えてこない。

 一体どんな速度で登っているんだろう。

 私達のことも考えて欲しいなと、ちょっぴり思った。


「お互い大変」

「そうだね。でも、慣れたら楽しいよ」

「同感」


 私と祭は本当に同じ立場にいた。

 だから会話が弾むとかは無いけれど、お互いに馬が合う。

 そうこうしているうちに、本当に二人に置いて行かれたと気が付いた。

 自由人な二人に世話が焼ける中、ふと私達は坂道で立ち止まる。


「「あれ?」」


 ここまでは一本道だった。

 標高もそれなりに出てきた。

 もちろん富士山とか北岳に比べたら全然だけど、少しだけ息苦しい。

 もちろん、空気とかじゃなくて、感覚的な問題だ。


「この熱……もしかして」

「そうかも」


 ふと登山道を外れた。あまりにも愚行。そんなの分かり切っている。

 このままだと、道に迷うかもしれない。

 そんな不安がよぎる中、私と祭は人影を見つけた。


「見つけた。って言うより、追い付いた?」

「二人共、突然消えないで」


 山の中に居たのは先に進んでいた烈火と由里乃。

 二人共何故か途中で登山を辞めていた。

 そのことに感覚で気が付くと、私達はようやく追い付けた。


「おっ、流石だねー、明輝&祭」

「本当だよ。二人共凄いね」

「「いや、全然思い付きは止めて欲しいんだけど」」


 突然いなくなってビックリした。

 しかも途中で方針を変えないで欲しい。

 テンションが上がり過ぎて、気持ちもコロコロ変わっている。

 そんな二人の自由さに心身共に疲れると、私達は真面目に怒っていた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ