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◇198 失敗は成功への近道

新キャラモリモリ。

今回はエルエスタさん達の現実partです。

「それで、お二人共、これはどういうことですか?」


 私は社長室で少しだけ声を低くし、威圧的な態度で接しています。

 そんな私の目の前には、二人の女性の姿があります。

 カジュアルな格好と緩い服装(コーデ)。似ているようで、似ていない物です。


「はい! 私達が作りました! ねぇ、文熨ちゃん」

「そうですね~、頑張りました~」


 まず声を発したのは、黒髪をポニーテールに結っている女性。

 名前は馬酔蹄(ますいひづめ)さん。

 いつも元気一杯にハキハキとした返事をしてくれる、とても明るい方です。


 もう一人の女性は、朗らかな表情が特徴的な女性。

 名前は三好野文熨(みよしのふみの)さん。

 蹄さんとは非常に対照的で、とてもおっとりしています。


「まあ、それはいいんですよ。今回採用されたのは、シナリオチームの案ですから。実際、上手くイベントは遂行されたみたいです」


 私はタブレット端末を見ています。

 そこには太陽の古代遺跡が攻略されたと記載があります。

 CUを内部で管理してくださっている、ナビゲートAIの皆さんのおかげです。


「ですが、これはどういうことですか?」


 私は怒ってはいません。ですが、口調は荒いです。

 それもその筈、当初の予定とかなり違っています。

 もちろん、それで面白くなるのならば、何よりも変化が起こるのならば、私としては好都合なのですが……少し、放置できないことがありました。


「どう言うことってなんですか!?」

「そうですよ~。社長の言う通り~、鳴れない私達なりにちゃんとやったんですよ~」


 蹄さんも文熨さんも、まるで分かっていないようです。

 もちろん、二人はそれでいいのです。この緩急が面白のです。

 指を組み、私は考え込んでしまうと、二人の顔をジッと見つめています。


「本当に、心当たりはありませんか?」


 私は二人の口から直線問題を訊きたい。

 そう願ってジッと見つめていると、何故だか顔色を合わせる仕草を取ります。

 何かあるようです。私はニコッと微笑みます。


「怒ってはいません。ですので、お二人の口からハッキリと」


 そう促し掛けると、観念してくれました。

 隠していてくださっても別に構わないのです。

 それだけ個性がハッキリとしているのは、私としても可能性が垣間見れて嬉しいのです。


「えっと、α版から変えちゃいました!」

「えへへ、当初のプロットを廃棄(すて)ちゃったんですよね~。えへへ」


やはりそうですか。まさかこんなことになっているなんて。

 社員の自立心・自尊心に委ねてはいます。それが成長に繋がるのならば尚のことです。

 ですがこれは流石にダメですね。上に報告をしないことは、会社として破綻に繋がりかねません。


「そうですか。その意図は?」


 私は冷静に理由を訊ねました。

 すると蹄さんと文熨さんは、顔を合わせることもしません。

 それぞれが同時に答えました。


「「その方が面白いからです」よ~」


 相変わらずの自由ぶりでした。

 とは言え、それくらいの方が、面白いシナリオは書けるものです。

 私は二人の言葉を直接聞くことができてなにより。同時に指を組むのを止め、腕を組みました。


「そうですか。確かに、α版は難しく、β版は巨兵のパラメータが高かったですね。現在の形になったのはいいのですが……それでもですよ?」

「「ん?」」

「攻略できる条件があまりにも厳格(シビア)なのは、いかがなものでしょうか?」


 私が少しだけ危惧していた面です。

 確かに、CUは自由性が売りです。もっと言えば、それぞれの個性を活かすのが大事です。

 ソロの方も多くいますが、何より私としては、それぞれの個性がぶつかり合うことで見せる変革を期待していました。しかし今回のイベント、その存在そのものの認知があまりにも薄く、もはや“陰”のような立ち位置になっていたのは、流石に見過ごせないのです。

 もう少し目立たせて欲しい。そう思っていたのですが、結果的に潰れてしまったのでした。


「だって社長が強過ぎるから!」

「そうですよ~。作り直さないとダメじゃないですか~」

「それは私の責任ですか? それは申し訳ないことをしましたね。反省させていただきます」


 蹄さんも文熨さんも、私に刃向かいました。

 とても良いことです。こうしてお互いの意見を交換し合う。

 腹の探り合いよりも、腹の割合の方が、断然いいアイデアは生まれます。


「ですが、一応ですがお二人を中心に、シナリオチームも少しばかり、反省はしてくださいね」

「「うっ……」」


 これは必要なことだった。

 私は褒めることを念頭には置いているつもりです。

 ですが間違っていることを間違っているとは否定しません。それでも反省を促す機会を与え、次へ活かせるように配慮します。

 そのためにも、今回の得られたデータから要点を洗い出します。


「いい点は非常に多いですよ。上手く弱点を用意して、プレイヤーの方々が攻略を用意に進められるように配慮していますね」

「それは社長が強過ぎて、あんなの誰も真似できないからですよ!」

「ですです~。社長は強いですからね~」


 お二人共私のことを持ち上げてくれました。

 嬉しくもありますが、気恥ずかしくもあります。

 私など大したことは無い。そう自負していますのに。


「ありがとうございます。ですが、歯車の入手経路や、それに至るまでの試練の杜撰さは、シナリオ担当の文熨さんが監修されなかったんですか?」


 問題はそこにあった。

 黒鉄の巨兵自体はとても良く出来ている。

 けれどシナリオチームであり、その代表格でもある文熨さんらしくない試練の内容。

 回りくどいのはいいですが、一体何故こんなことになったのか? そう疑問を浮かべると、文熨さんの視線が横にズレました。


「もしかして、蹄さんが?」

「そうです! 私が書きました!」


 蹄さんは全身全霊で手を挙げました。

 凄く威勢がいいです。この元気さが眩しいですね。

 私は表情は変えませんが、内心ではこう思っていました。


「そうですか。道理で」


 私は目の色を変えました。

 それもその筈、蹄さんはシナリオチームではありますが、暫定的なシナリオチームに所属しているだけです。

 実際、蹄さんは”シナリオが全く書けない”のですから。


「もしかして、私のシナリオ、ダメだったですか?」

「いいえ。緒戦することはとてもいいことです。私は尊重しますよ。それになにより、シナリオチームに許可を出したのは私ですから」

「やった! 文熨ちゃん、私褒められたよ」

「よかったですね~、蹄さん」

 

 蹄さんの挑戦する姿勢はとても素晴らしいことです。

 何より、私自身がシナリオ面の全権を任せていました。

 それが仇となったのでしょうか? 色々と無駄な要素や、分かり難さが出ていて、少しですが難航していました。

 果敢でポジティブな姿勢が素敵なのは変わりないですが、少々問題でもありますね。


「ふぅ……ですが今回のイベント、反省点は多いですね」


 私はふとタブレットに視線を落とします。

 もちろん、単にダメな点だけを挙げている訳ではありません。

 しかしお二人は気が付いていないのか。私を前にして緊張してしまい、弱気な姿勢をみせます。


「あの、もしかして私達、要らない系ですか?」

「やっぱり~、(あん)ちゃんの方がいいんですか~?」


 お二人共何をおっしゃるのですか?

 私は眉間に皺を寄せそうになります。

 必要のない人間なんてこの世には存在していません。

 それぞれには、それぞれの役割・進化への可能性を秘めています。


「確かに闇さんの書くお話は面白いかもしれませんが、それでお二人や他の部下の皆さんが不必要な存在ではありませんよ。お二人共、らしくないことは止めてください」

「「社長!」~」


 パッと明るくなってくれました。

 瞳の奥に映る姿から、部下の皆さんの顔色が想像できます。

 本当に皆さんいい子達です。個性的でとても面白く、私は笑みを浮かべました。


「ですので、次から気を付けてくださいね。この失敗ではない経験を活かしていきましょう」


 私はビシッと言葉で締めた。

 すると蹄さんも文熨さんも、何故か凝り固まってしまいます。

 やはり反省してしまっているのでしょうか? 私は笑みを浮かべ返す。


「活かせますか?」

「活かせるのかな~?」

「ではこうしましょう。過程を積み重ねて、大きな結果に結びつけてしまいましょう。それなら、できますよね? 失敗は成功への近道です。最短距離を生み出すためには、それまでの過程を一つ一つ積み上げて、切り拓いていくものですよ」


 別にプレッシャーを与えている訳ではない。

 私への期待に皆さん必死で応えようとしてくれているだけです。

 それならば、少し方針を変えてみせればいい。

 私がそう答えると、お二人は「いいんですか?」と訊ねた。もちろん答えはYESです。


「いいんですよ、皆さんなりの努力が見られて。私はそれだけで嬉しいですから」


 結局の所、私は責めている訳ではありません。

 寧ろ、こうして面と向かい合うことで、お二人を介して部下の皆さんの気持ちが伝わります。


「「社長!」~」

「さぁ、皆さん。気を取り直して、無理をせずに頑張って行きましょうね」


 私はパンと手のひらを叩いた。

 一人で柏手を打つと、蹄さんと文熨さんは早速提案してくれました。


「ところで社長、新しいプロットを文熨が作ったんだよ!」

「新しいプロットですか。聞かせていただけますか?」

「いいですよ~。まだプロットの段階ですけどね~」


 文熨さんは自信あり気だった。

 CUにおいて、明確な物語(ストーリー)は存在しない。

 あくまでもゲームを通じる全ての人間・全てのAI・全ての存在が物語を紡ぐ。

 私はそう信じ、変化を求めると、革新のために今日も皆さんと切磋琢磨するのでした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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