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195/230

◇195 炎は誰の味方?

炎はもちろん彼女の味方。

「ヤバい……やられる」


 もはや逃げられなかった。

 高熱レーザーがもう一発放たれると、私達は真っ赤な閃光に包まれた。

 逃げることなんて到底できない。だからいっそ全部諦めて……しまいたくない。


「そんなの嫌。【キメラハント】!」

「【ライフ・オブ・メイク】」

「雷流剣術—火鼠の衣替え」

「こんな所で、負ける訳ないだろうがよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 私達は全力で抗う覚悟を見せた。

 それぞれの持てる武器を全部使う。

 だけど高熱レーザーを止めるなんて真似、絶対できない。

 ましてや高熱レーザーは熱くて仕方が無くて、私達は飲み込まれ……た——


「せーのっ!」


 その瞬間、急に高熱レーザーが消えた。

 私達の目の前がパッと開ける。

 一瞬の熱が完全に消えると、私達は「あれ?」となった。


「あれ、熱くない?」

「あはは、ごめんね、みんなー」


 私が顔を上げた先。そこに居たのはよく知っている少女。

 真っ赤な髪をたなびかせ、全身を赤い竜の鎧で覆っている。

 その周りを湯気のように炎が立ち込めると、少女の味方をしていた。


「遅いぞ、フェルノ」

「もう、ずっと休んでたんだから、仕事しなさいよ」

「あはは、二人とも厳しいなー。こっちはまだお腹痛いのにー」


 Nightとベルはフェルノのことを叱咤する。

 それに対して、フェルノは分かっているらしい。

 だけどお腹を押さえていて、黒鉄の巨兵から受けたダメージがまだ残っているみたいだ。


「でも、後は任せてよー。もう私に、あのレーザー? は通用しないからさー」


 フェルノは拳をガチン! とかち合わせた。

 ニヤッと笑みを浮かべると、ちょっとだけカッコいい。

 まさしく、“遅れてやって来たヒーロー”で、私は拍手を送る。


「おお、なんかカッコいい、かも?」

「アキラはいいねー。もっと褒めて褒めてー」

「うん。でも無理はしないでね?」


 私はフェルノのことを褒め回した。

 調子に乗ったフェルノはニヤニヤするけど、褒め過ぎてもダメ。

 私は綺麗に線引きすると、フェルノは姿勢を低くする。


「それっ!」


 真っ赤な竜の鎧を身に纏ったフェルノ。

 その荒々しさはとんでも無かった。


 ギギギギギギギギギギギギギギギ!


 黒鉄の巨兵は両腕を動かせない。

 それでも危機感を感じたのか、本当はもう使えないのに、腕を持ち上げる。

 もはや意地で、フェルノのことを本気で危険だと思っていた。


「そんなの喰らわないよーだ」


 振り上げられた拳が途中で落ちた。

 流石に持ち上げきれなかったみたいで、力を失う。

 パキンパキンと歯車が吹き飛ぶ中、ドスン! と地面が揺れた。

 拳が地面を叩きつけた衝撃で、私達にまで伝わる。


「凄い揺れだね。みんな、気を付けて」

「ああ……だが、フェルノの奴は」

「余裕みたいね」


 こんな振動なんのその。

 ただでさえ日本人は揺れに対して慣れているみたいだけど、フェルノは楽しんでる。

 不謹慎だし、何よりも注意がなってないけど、それがフェルノの魅力だ。

 こんなことで物怖じしない。だからこそ、フェルノは真っ直ぐに進む。


「せーのっ!」


 フェルノは落ちた拳を巧みに利用する。

 躱すんじゃなくて、そのまま突っ走る。

 軽くジャンプしただけで、拳の上に乗ると、そのまま踏み台に使った。


「こんなので私は止まらないよ。ビビらないよーだ!」


 フェルノは寧ろニヤニヤしていた。

 黒鉄の巨兵とまともに戦うのが”今”だ。

 だから黒鉄の巨兵の恐ろしさをほとんど知らない。

 知らないからこそ、フェルノは自由に戦える。


「それじゃあ、私の番だよーだ」


 フェルノの口調が変わった。

 ここからが本気モードだ。

 爆発的な炎が、黒鉄の巨兵の熱が、フェルノだけを味方する。


「燃えろ!」


 フェルノの体が燃え始めた。

 メラメラと燃え滾る炎が躍り出す。

 グルグルと円を描き、フェルノの体を包み込むと、情熱を糧にして更に燃える。

 永遠に消えることのない好奇心が薪になると、フェルノは炎の塊になって飛び掛かった。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……あっ!」


 フェルノは黒鉄の巨兵の頭に拳を突き出す。

 赤い単眼をバキバキ音を立てて、罅を入れてしまう。

 このまま押しきっちゃうのかな? そう思うけど、全然違った。


「このまま、えいっ!」

「「「えいっ!?」」」


 フェルノは黒鉄の巨兵の頭を掴むと、そのまま捩じ切った。

 自分の体ごと弾丸にして突撃すると、私達の目の前から消えた。

 一体何が起きたの? そう思ったけど、目の前のソレを見れば誰だって気が付いた。

 だって、黒鉄の巨兵の頭が無くなっていたんだ。


「あ、あた、頭、取っちゃった?」

「そうだな」

「うわぁ、やってるわね」


 あのまま殴り飛ばすのかと思ってた。

 だけどそんなカッコいい創造とは違った。

 フェルノは腕を伸ばすと、そのまま黒鉄の巨兵の頭を両腕でガッチリとホールドしたんだ。


 そのまま何をするのかなと思ってた。

 圧倒的なパワーとスピードを活かすと、そのまま何も考えずに、グルンと回った。

 その拍子に黒鉄の巨兵の頭がギギギと悲鳴を上げると、バキッ! の悲鳴と共に、頭を奪い取ったんだ。


「これが、フェルノのスキルか。【吸炎竜化】と【烈火心動】のコンビネーション」


 あまりにもフェルノに適したスキルの組み合わせ。

 私たちはそう思うしかなかった。


 黒鉄の巨兵は肝心の頭を失うと、そのままピクリともしない。

 完全にこと切れてしまっていて、ジッとしている。

 腕を振り上げることも、ましてや高熱レーザーを放つこともなく、その場にジッとしている。


「動かないね」

「そうだな。どうやらこれで……」


 黒鉄の巨兵は完全に機能を停止している。

 つまり私達の勝ち……ってことになる。

 喜んでいいのかな? と悩んでいたら、フェルノの声が響く。


「イェーイ、私の勝ち―。ビクトリー!」


 フェルノは黒鉄の巨兵を倒した。

 腕を振り上げてVサインを作る。

 ニコニコ笑顔を振りまくと、本気で楽しかったのか、体の周りで炎がメラメラしている。


「あ、あはは、フェルノはいつも通りだね」

「そうだな」

「相変わらずね。結構凄いことしてるのよ?」

「そうですね。ですがフェルノさんらしいです」


 私達はそれぞれがフェルノの活躍に対して言葉を掛ける。

 もちろん、フェルノのおかげで助かったのは言うまでもない。

 でも、あまりにもパッションが凄すぎて、私達は変な意味でズレを感じると、「まぁ、いっか」な気持ちになるしかなかった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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