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◇191 チェーンブロー

いやいや、その攻撃は怖いって!

 黒鉄の巨兵はとにかく強かった。

 私達は何故か追い詰められると、ゴクリと息を飲む。

 こっちの攻撃は効かない。そんなの如何すればいいの?

 私は悩んでしまう中、Nightはいつものことを言った。


「とりあえず観察するぞ。動きを見破れば、必ず見える筈だ」

「そんなこと言われて……もぅ!?」


 呑気なことは言っていられなかった。

 拳を繰り出し、次の標的は私らしい。

 ピカピカと光り輝く赤い単眼のライトを浴びせられると、凄まじい速度でパンチが飛んで来た。


「あ、危なかった……」


 私は息を荒くしていた。

 パンチが繰り出された瞬間、私は右に飛んだ。

 黒鉄の巨兵の攻撃を素早く避けると、私は胸に手を当てた。


「よく避けたな、アキラ」

「なんとかね」


 って言うよりも、何だか“目で追えた”。

 もしかして、慣れてきたのかな?

 止まって見えた訳じゃないけれど、思考も動きも正確だった。


「でも、避けてるだけじゃ勝てないよ。戦うにしても、逃げるにしても、なんとかしないと」


 ちょっとだけマシなことを言った気がする。

 自分で自分を褒めると、ベルはそんな私を揶揄する。


「そんなの分かっているわよ。けれどどうする気? 観察するにしたって……って、なんでそんな必要があるのよ」


 急にベルは我に返った。

 何かに気が付いたのだろうか?

 私は打開策かもと期待するが、全然そんなこと無かった。

 もっと単純で、目の前に落ちている答えだった。


「そうよ、間合い」

「「間合い?」」

「確かに、私達は何故、黒鉄の巨兵の間合いにいるのでしょうか?」


 ベルがポツリと呟いたこと。確かにと納得できた。

 雷斬が分かりやすく答えてくれたけれど、如何して私達は、黒鉄の巨兵の間合いに居るんだろう?

 ポカンとしてしまう中、ベルは早速行動にしてみせた。


「そうよね。私の本分は、遠距離よね。こんな近くで射撃しても、意味無いわ」

「意味が無いことは無いだろ?」

「バカね。私は弓使いよ? 前線に出てどうするの?」


 ベルの言いたいことはよく分かった。

 だけど私達はベルが善戦でも全然通用することを知っている。

 幸いなことだけど、黒鉄の巨兵は何故か攻撃して来ない。

 観察しているのだろうか? 分からないことが多過ぎて困った。


「それじゃあ少し間合いから……はっ!?」

「ベル、危ない。避けて!」


 私は咄嗟に叫んだ。

 ベルは警戒しながら、単眼から放たれる赤い光から消えようとする。


 その瞬間だった。突然眩い光がベルを追った。

 同時に、ここまで使って来なかった攻撃が繰り出される。

 左腕を大きく振りかぶると、ギュイィィィィィンと金属が擦れる音が空気を叩いた。


「なによそれ、うっ……」


 ベルは間一髪の所でのけ反った。

 おかげで攻撃を躱すことはできた。

 だけどとんでもない破壊力の攻撃で、何よりも”射程距離が長い”のがヤバい。


「Night、今のって!?」

「ああ。チェーンブローだな」


 “チェーンブロー”? 全然分からない。

 だけど確かにチェーンでブローしていた。

 黒鉄の巨兵が左腕を振り抜いた瞬間、肘関節から先が外れると、中に仕込まれていた鎖が飛び出す。空気を叩いて、鞭のようにしなる。音速の域に達すると、伸びた拳がベルを追撃。

 間合いから逃れようとした瞬間、標的を即座に変更して、ベルのことを即死させようとしていた。


「あ、危なかったわ……」

「大丈夫なベルが凄いな」

「このくらい余裕……じゃないわ。マジで怖いんですけど」


 ベルはギリギリの所で直撃を回避した。

 結っていた髪を何本か引き千切られたけど無事。

 腰を抜かしてしまいそうになると、余裕な態度は消える。


「ベル、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。でも、私の反応速度でようやくって所ね」


 雷斬はベルの傍に駆け寄った。

 背中と腰を痛めたのか、手を添わせるベル。

 ベルでようやくの反応。そんなの普通の人には無理だって分かる。

 だって、ベルが自分を棚に上げるんだもん。絶対だ。


「これって、間合いから外れようとしたから?」

「だろうな」

「ってことは、逃げられない?」

「らしい。どうやら黒鉄の巨兵の視野はそこまで広くないが、視界から外れた瞬間、強制的に攻撃対象を変更して追撃して来るんだな。流石に想定外だ」


 Nightの分析はかなり的確だった。

 黒鉄の巨兵は身動き一つ取らない代わりに、遠距離にも対応できる仕掛けが施されていた。

 意外にも広い視野から外れると、逃れた相手を執拗に襲う。きっとチェーンブロー以外にも何かある筈だ。私達は身の安全のために、間合い……特に、赤い光の外には極力出ないようにする。


「……なにもして来ないね」

「そうだな。……怪しい」

「うん、確かに怪しいよね」


 何故か黒鉄の巨兵は動かない。

 攻撃を仕掛ける様子もなく、むしろジッと見つめるだけ。

 単眼が私達を凝視すると、ベルが手で顔を仰ぐ。


「それにしても、少し熱くない?」

「そうですね。地下で戦っているため、蒸してしまうのでしょうか?」


 地下はあるい。空気の出入り口がほとんど無い。

 密閉ではないのだろうが、動けばその分熱を持って、私達の息が上がる。

 だけどそれでは説明ができないくらい、唐突な熱さで、私もおかしいなと思った。


「それじゃあこのままわざと死ぬまで蒸し風呂状態なの? 嫌なんですけど」

「そんなのはごめんだ」

「ごめんって、それじゃあアイツどうするのよ!」


 ベルは言葉を荒くした。

 流石に一度死にかけているんだ。冷静にはなれないのも分かるよ。

 私達は如何することもできない強敵を相手に、ただ不満を吐露した。


「装甲も硬くて攻撃は通らない。逃げるにしても追撃して来る。そんなの……ねぇ?」

「無敵か?」

「「うっ……」」


 ベルが言いたいことは全部伝わる。

 共感してしまうのも無理ないくらいに黒鉄の巨兵は強い。変に強い。

 Nightの言う通り“無敵”。それを理解したくないけど、私もベルも口にした。


「もしかして、無敵?」

「そんなのバカ気てるわ。弱点が無いなんて、どうすればいいのよ!」


 私とベルは声を上げた。

 黒鉄の巨兵はあまりにも無敵すぎる。

 こんな相手を如何やって倒せばいいのか。

 そんなの分からなくて、困ってしまう中、項垂れる私達をよそに、Nightはポツリと呟く。


「いや、弱点は必ず……ん?」


 ここまで観察を続けてきた。

 そんなNightだからこそ、何かに気が付いた。

 ちょっとした違和感が、Nightの眉間に皺を作る。


「いや、スルーしていたが、まさかな」


 ここまでスルーして来たらしい。

 そんな訳がないと、最初から見ないふりをしてきた。

 けれどそれが間違っていたことに気が付いたのか、含み笑いを浮かべる。


「どうしたの、Night?」

「なにか分かったんですか?」


 私と雷斬が声を掛けた。

 あまりにも不気味な笑みだったから気になっちゃった。


「分かったというよりも、気にしていなかっただけだな。だが、今更思えば、それが原因……明らかに弱体化(ナーフ)された形跡が見られるな」


 Nightの言葉は歯切れが悪かった。

 だけど“弱体化”って言葉はハッキリと耳にする。

 そんな形跡、何処にもないくらい強いのに、一体何に気が付いたんだろう。

 私達にも分かるように説明してよ!


「Night、一人で分かった振りしないでよ」

「そうよ。ちゃんと説明しなさい」


 Nightの“一人分かってますよ”な空気が嫌いだった。

 ムッと頬を張ると、私とベルは文句を言った。

 するとNightは髪を掻き上げ、単なる仮説を話す。


「そうだな。……とりあえず、倒すぞ、黒鉄の巨兵をな」


 しかし言葉にはハリがあった。

 もしかしなくても、Nightの空気が変わる。

 何となくだけど突破口が開けた気がすると、私はNightの表情からバッチリ当てた。

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