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◇19 シャンベリーって美味しいの?

美味しそうなベリーみたいな名前。

「ふはぁー」


 私は大きな欠伸をしてしまった。

 夜中にCUにログインしたのが全ての元凶。

 それが分かっているのに、私はまたバカなことをしようとしていた。


「なーんで、私、こんな時間にログインしようとしてるのかな?」


 時刻は夜も二十二時を回っていた。

 正直、後二時間くらいで寝るつもりだった。

 だけど烈火に言われたことが如何しても気になってしまい、私はまたまたCUにログインした。



「で、何処に行けばいいんだろう」


 私はログインしたは良いものの、何処に行けばいいのか分からなかった。

 掲示板を見返しても、場所については書き込まれていない。

 おまけに私は全然調べ物をしていない。

 だって、調べても出て来ないんだから仕方がないので、とりあえずログインしてみたのだ。


「うーん、困ったなー。こういう時は……ソウラさんに訊いてみよう」


 早速フレンド欄を確認。

 こんな時間だけど、いや、こんな時間だからかな。

 ソウラさんはログインしていて、私は早速アポを取ってから、アイテム屋:Deep Skyに向かった。


「あの、ソウラさん!」

「ん? ああ、アキラ。早いわね。ここまで真っ直ぐ来たの?」

「はい、寄り道せずに真っ直ぐ来ました!」

「真面目ね。それでアキラ、今日はどうしたの? と言うか、二回目だけどどうしたの?」


 正直、ソウラさんとは今日一回会っている。

 だからかな。お互いに会話のレスポンスがギクシャクする。

 まさか一日で違う目的で二回も会うとは思ってもみなかったからだ。


「ソウラさん、訊きたいことがあるんですけど」

「訊きたいこと?」

「はい。シャンベリーって知ってますか?」

「シャンベリー? 美味しいのかしら、それ」


 ソウラさんはまさかなことを言った。

 一瞬視線を逸らして天井を見つめ考えていた。

 本当に知らないのか、それともボケに走ったのか。

 私には真偽は定かじゃないから、とりあえずノリには乗らずに真面目に返した。


「シャンベリーは場所ですよ。ダンジョンです」

「知ってるわよ。でもそれがどうしたの?」


 ああ、やっちゃった。私、完全にボケを殺しちゃった。

 ノリツッコミができてないから、きっと烈火なら渋めの顔をする。

 私は「はぁー」となると、顔を押さえてしまった。


「どうしたの、アキラ?」

「あの、ごめんなさい。ボケをそのままの勢いで殺しちゃって……」

「別にいいのよ。それよりアキラ、シャンベリーがどうかしたの?」

「は、はい。実は……」


 私はソウラさんに事情を説明した。

 もちろん、あまりにも脈絡が無い話だった。

 にもかかわらず、ソウラさんは真面目に聞いてくれる。

 肘をテーブルに置いたままコクコクと首を縦に振ると、「ああ」と相槌を打つ。


「ってことなんですけど」

「それは大変だったわね。でもシャンベリーなんて、また珍しい場所ね」

「そうなんですか?」

「えっ、本当になにも知らないの?」

「は、はい……あの、シャンベリーってなんですか? 噂になるくらいってことは、やっぱり有名なダンジョンで……」


 私は怯えながらソウラさんに訊ねていた。

 しかしソウラさんは考える素振りを見せると、唇をギュッと噤んでいた。


「シャンベリーは隠しダンジョンの一つで、スタットの近くにあるって言われているのよ」

「隠しダンジョンなのに、場所が分かっているんですか?」

「確かに、考えてみればそうよね」


 シャンベリーはスタットの近くにあるらしい。

 とは言え、それが“隠しダンジョン”でいいのだろうか?

 私は考えなくてもいいことを考えてしまうと、ソウラさんを悩ませてしまった。


「あのシャンベリーに、ソウラさんは行ったことあるんですか?」

「無いわよ。私、攻略勢じゃないから。それにシャンベリーは攻略もなにも分かっていないダンジョンだから、プレイヤーもあまり興味を持っていないの」

「逆に興味持ちそうですけどね」

「そうね。普通のプレイヤーはそう思うわ。でも、シャンベリーはリアルを犠牲にしないとダメだから、忙しいプレイヤーには無理なの。……丁度、今は開いてるんじゃないかしら?」

「えっ!?」


 私は不意に目を見開くと、バーカウンターから立ち上がった。

 瞬きをすると、ソウラさんは驚いている。

 だけどそんなの関係無い。

 私はソウラさんをまじまじと見つめ、シャンベリーの場所を訊ねた。


「ソウラさん、シャンベリーって何処にありますか?」


 何故だろう。私はソウラさんに詰め寄っていた。

 ソウラさんは、大胆な私に目を見開く。さっきよりも驚いている。

 だけどそれは私も同じで、なんでこんなことしているのか、全然分からない。


 ただ一つだけ言えることがあった。

 それは私の胸がドキドキしていて、心がワクワク脈打っている。

 つまり、知らない高揚感がやって来ていた。


「どうしたの、アキラ?」

「えっと、私も分からなくて。でも、その……行ってみたいんですかね?」


 私は悩みながら言葉を口にする。

 するとソウラさんは神妙な表情を浮かべた。

 だけど私の気持ちを如何やってか掴み、諦めたように宥める。


「本当に行くのね。……気を付けて」

「気を付けるってなんですか?」

「シャンベリーはね……これ、サービスよ」


 そう言うと、ソウラさんは後ろの棚から何かを取り出す。

 ガラス瓶のようで、中には液体が入っている。

 光の加減で青く見えると、私は「綺麗」と口ずさんでいた。


「なんですか、これ?」

「シャンベリーは幽幻の城って言われているのよ。この聖水がきっと役に立つわ」

「聖水? えっ、それって……」


 私は気になることが生まれたせいで、ソウラさんに訊ねようとした。

 しかしソウラさんは質問攻めする私を咎めるように促す。


「ほら、早くしないと閉じちゃうわよ」

「えっ、ちょっと待って……」

「頑張ってね、アキラ。期待しているから」

「期待って、分かりました。それじゃあ行ってきます」

「気を付けてね。スタットの街を出て北西にあるシャンベリ盆地だから」


 私はソウラさんに促され、シャンベリ盆地に向かうことにした。

 シャンベリー。一体どんなところなのかな。

 私は若干期待をすると、ソウラさんから貰った“聖水”を手に早速向かった。




「……ふぅ、アキラ大丈夫かしら?」

「心配?」

「まあ、これから末永く良好な関係を築いていく仲だからね」


 私はアキラが去った後、バーカウンター越しに話し込んでいた。

 声は地下室から聞こえる。

 ずっと地下室の扉は開いていたので、声は届いていたらしい。


「ピー子はどう思う?」

「どうって?」

「シャンベリー。本当にあると思う?」

「システムならあると思うけど?」


 同じくDeep Skyのピー子は私にそう答える。

 もちろん無いとは言えない。むしろある可能性の方が高い。

 とは言え、隠しダンジョンだ。そう簡単に見つかるとは思えなかった。


「けみーやマンディなら行きたがるのかしら?」

「マンディはともかく、けみーは興味無さそう」

「そうよね。それじゃあ結果はアキラに聞くとして、私達もログアウトする?」

「そうする」


 私はピー子と一緒にログアウトすることにした。

 今日はもう店仕舞い。

 アイテム屋:Deep Skyの活動は、今日の所は終了だった。

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