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189/231

◇189 VS黒鉄の巨兵

動かないのは伏線かな?

「眩しぃ……」

「なんて言ってる場合じゃないぞ!」


 黒鉄の巨兵は突然動き出した。

 何が引き金(トリガー)になったのかは分からない。

 それでも確かに息を吹き返すと、鋭い拳を放ち、先制パンチを繰り出した。


「雷斬、行けるわよね?」

「はい。なんとかですが」


 HPを大きく失った雷斬。回復ポーションをゴクリと飲んで、失ったHPを回復する。

 けれど体が痺れているのか、動きが鈍い。

 刀を握る手に力が入っていない様に見えた。


「コレがキツいんだ」


 このゲーム、CUでは、HPの管理よりも体と精神の管理が大切だって、Nightが言っていた。

 HPが減ることよりも、ダメージを受けて、心身に影響を与える方がキツい。

 色んな意味合いで不安になると、身が竦んでしまいそうになる。


「いやいや、大丈夫。なんとかなる!」


 私は瞬間的に意識を切り替えた。

 今までも戦って来たんだ。

 私は忘れないように思い出すと、珍しく一番最初に動いた。


「【キメラハント】+【甲蟲】!」


 私は勢いよく飛び出した。

 まずはあの硬い装甲を破壊するのが先決。

 だと思ったから、私は拳を振りかざすも……痛い、痛過ぎる。


「い、たい!?」


 涙目になってしまった。当然のことだけど、黒鉄の巨兵の装甲は“黒鉄”。

 それが何かはもちろん知らない。だけど、鉄なのは確実。

 腕を伝った痛みが全神経を駆け上ると、私は地面に倒れた。


「い、痛い……硬いよ」

「大丈夫か、アキラ?」

「大丈夫だけど、大丈夫じゃないよ……でも、もう痛みは覚えたかな」


 あんなの二度度ごめんだ。

 私は仕方が無いので、短剣を抜いた。

 ここまで私を支えてくれている初期武器。今こそ使う時だ。


「そりゃぁ!」


 カキン!


 まあそうなるよね、って音が聞こえた。

 軽い音を上げると、短剣では無理だと分かる。

 つまり私のできることは無いので、後は他の人に任せる。


「ごめん。やっぱり私は……」

「分かってるわよ。そんなの!」


 私は申し訳なかった。

 みんなに謝るけれど、ベルは一蹴した。

 シュパン! と空気を切る音共に、矢が放たれると、黒鉄の巨兵を襲う。


「チッ。矢じゃ足りないのね」


 悪態に舌打ち。ベルは悔しくはないが、ダメだったと痛感した。

 所詮は木の矢だ。強度には限界がある。

 鏃は鉄製とは言え、相手も鉄の塊。通用しない。地面に落ちた矢を渋々回収した。


「それなら数を撃てば……」

「待って待って、ベル。今度は私だよー」


 弓を何本も番えたベル。

 一気に三本射て見せようとするが、後ろからフェルノが飛び出す。

 燃え上がる様な竜の鎧に身を纏うと、自分の番と飛び出す。


「【吸炎竜化】。せーのっ!」


 フェルノは竜の拳で黒鉄の巨兵を殴り付ける。

 すると微かに仰け反ったように見えるけど、それだけに留まる。

 硬い装甲に少しへこみができたような気がするけど、フェルノはまだまだ止まらない。


「それなら連続攻撃で、どうだー!」


 連続でパンチやキックを繰り出した。

 目にも止まらぬ速さ……じゃないけど、とにかく力強い。

 一発一発がとんでもない破壊力を秘め、黒鉄の巨兵を圧倒……はできない。


「うぇーん、全然ダメだ―」


 泣きべそを掻くフェルノ。

 いい線言ってると思ったけど、まだまだ足りない。

 装甲に傷はないけれど、凹ませることに成功し、それでもそれ止まり。

 ダメージもほとんどなく、ガガガ、ギギギ、と歯車が回る音がするだけ。

 地面に着したフェルノはムッとした顔をする。


「コイツ強い! でも燃える」


 それでも楽しそうなフェルノ。

 私達は乾いた笑いを浮かべる。

 そんな中、背中に殺気が落ちた。


「私が切ります。皆さん、避けてください!」


 雷斬はそう言うと、刀を抜いていた。

 おまけにスキルも発動している。

 私達は正面の道を開けた。


「来てください、【雷鳴】。雷流剣術—氷柱針!」


 雷斬は高く跳び上がった。

 全身をビリビリと走る電気で覆っている。

 身体能力を一時的に極限以上に高めると、今度は刀を振りかざす。

 今回は突きのようで、まるで氷柱のように鋭く鋭利だった。


「はっ!」


 黒鉄の巨兵の胸に刀が触れる。

 ギシギシと軋んだ音と、熱のニオイを上げる。

 アニメみたいなカッコいい演出が施されるも、雷斬が力負けした。


「クッ、ダメですか」


 雷斬は真っ向勝負で負けた。

 軽く地面に突き返されると、受け身を取りダメージを減らす。

 それが限界で、雷斬でも傷を付けるのが精一杯だった。

 いや、それが凄いんだけどね。私は全然だったから。


「惜しいわね。後少しなのに」

「流石に硬いですね」

「硬さか……つまり、ただの攻撃は通じないか」


 冷静になって嫌な分析をするNight。

 しかし物は試しとばかりに、ベルトの拳銃に手を掛けた。


「つまりは……」


 Nightもお得意の拳銃を取り出す。

 今日は自動拳銃オートピストルみたいで、パンと引き金を引いて薬莢を弾く。

 放たれた弾丸は黒鉄の巨兵に当たったけれど、当たっただけでビクともしない。


「ぜ、全然効いてない?」

「嘘でしょ?」

「いや、嘘じゃないな。クッ、地獄だな」


 そう簡単に地獄って言って欲しくない。

 だけど、コレだと完全に地獄だ。

 黒鉄の巨兵に何度も何度も攻撃を繰り出した。

 だけどまともなダメージにはなっていなくて、硬い装甲に阻まれて、攻撃が通らなかった。


「でも、攻撃が効かないんじゃ……」

「あはは、無理だよねー」


 無理とも簡単に言いたくなかった。

 だけど今のままだと無理だ。

 私達の攻撃なんて、黒鉄の巨兵のガガガって音だけで掻き消される。


「こんなの一体どうやって倒すの!」


 あまりにも強過ぎる黒鉄の巨兵。

 もう戦いにさえなっていない気がする。

 けれど容易に逃げられる訳もなくて、私達は苦戦を強いられた。


「どうするもなにもだろ」

「そうね。とにかく、攻撃の手を休めるわけにはいかないわ」


 Nightとベルはそう言った。

 だけど言う通りだと思う。

 私達には攻撃する以外の選択肢がない中、一つだけ言えることがある。


「全然攻撃して来ないよね?」


 ここまで、黒鉄の巨兵は一切攻撃を仕掛けて来ない。

 仕掛けてはいるけれど、最初に雷斬をぶん殴ってから、まともな鋭いパンチを繰り出していない。

 完全に舐められている。それは分かるけれど、如何して攻撃して来ないのか、全然分からなかった。


「そうね。なんでかしら?」

「あはは、きっと私達の攻撃を浴びて、動けないんだよー」

「えっ、ってことは?」


 その予感は当たっていた。

 私達が攻撃の手を休めた瞬間、黒鉄の巨兵は単眼を爛々と光らせる。

 まるで、「ここからはこっちの番」と言いたそうで、黒鉄の巨兵は拳を振り上げた。

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