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188/230

◇188 赤い単眼、眩しくて

モノアイとツインアイ、どっちがいいのかな?

「コレが……」

「鉄の塊ね」


 私はみんなを集めて、黒鉄の塊の前に戻って来た。

 Nightはポツリと呟くと、ベルが本音を吐露する。

 確かにそれは鉄の塊。それ以上でもそれ以下でも無かった。


「うぉぉぉぉぉ! カッコいい、メッチャカッコいいー!」


 けれど一人だけ喜び方が違った。

 フェルノだけは大袈裟に飛び跳ねると、両腕を高く振り上げた。


「フェルノ、こういうの好きそうだよね」

「うんうん、大好き。やっぱこういうの熱いよねー!」


 フェルノと私は親友だ。

 だからフェルノがロボットもののアニメが好き。プラモデルが好き。

 目の前のそれは鉄の塊かもしれないけど、今にも変形しそうな迫力があった。


「で、コレがなにになるのよ?」

「もしかして、黒鉄の巨兵なんじゃないかな?」


 私はベルに問われたから、思っていたことを口にする。

 するとベルは「コレが?」と首を傾げた。

 確かに動かないとただの像だ。鉄の塊だ。

 ボス的な風格は……まぁ、微塵も感じられなかった。


「全然動く気配無いわよ?」

「そうだな。動く気配は無さそうか」


 確かにここまででピクリとも動いていない。

 つまり、目の前のそれは、単なる置物だ。

 私は何も言い返せなくなると、フェルノは楽しんでいる。


「なに言ってるのさー、カッコいいじゃんかー」

「それとこれとは、別の話でしょ?」


 フェルノは楽しそうだけど、ベルの言い分も最もだった。

 確かにカッコいい? 気はするけれど、それだけ。

 結局は戦うこともなく、Nightは余裕で近付いた。


「この像、どんな構造だ?」

「気になるの、雷斬?」

「当り前だ。構造を調べるのは大事だろ」


 Nightはゆっくり近付いた。

 動かない像をペタペタ触っている。

 危ないと思うけど、Nightは気にせずに調べ物を続けた。

 情報は命に直結する。それを体現していた。


「なるほど、面白いな」


 Nightは楽しそうだった。

 一体何が面白いんだろう?

 傍から見ていても分からないから、合いの手を入れた。


「なにが面白いの?」

「この辺りをよく見ろ」


 私はNightに呼ばれた。

 ランタンを掲げ、指定した場所に視線を落とす。

 すると大量の歯車が収まっていた。少しだけ空間を開けると、何だか回りそうだ。


「なんか一杯詰まってるね」

「ギアが噛んである。どうやら単一では動かせないらしい」


 難しいことだからサッパリ分からなかった。

 私達はお手上げで、フェルノだけが興奮する。

 多分だけど、理解してない。


「他にも見てみるか」


 Nightは見える部分に視線を落とした。

 私達には分からないけれど、一人で納得している。

 黒鉄の巨兵を隅々まで観察すると、Nightは唐突に言った。


「とは言え、なにも起きないか」

「そうだね」


 色々調べてはみたけれど、何も起きなかった。

 起動するようなスイッチも無ければ、レバーもない。

 動力らしきものも見当たらず、Nightは考えに考えた。


「はぁ。一旦出直すか」

「出直すって、ここまで来て!?」


 Nightも諦めてしまった。これ以上できることは無いんだ。

 早速踵を返して帰ろうとすると、ベルはあんぐり口を開けた。


「ここまで来てもなにも無いだろ。これ以上、できることはない」

「まぁ、そうだよね」


 言いたくないけど、確かにできることは無かった。

 私達はここまで来たにもかかわらず、一旦出直すことになる。

 落胆するベルの背中を雷斬が撫でる中、私は黒鉄の巨兵を見つめた。


「本当に、動かないのかな?」


 私は像が今にも動きそうだなと思った。

 それもその筈、黒鉄の巨兵のことが、石碑には書かれていた。

 アレが何も意味していな訳がない。ジッと視線を配るも、結局変化はなかった。


「ほら、帰るぞアキラ」

「待って。すぐ行くね」


 私はNightに呼ばれた。

 踵を返して振り返ると、みんなの背中を追い掛ける。

 その時だった。ガガガと嫌な鈍い音を聞いた。


「ん?」


 私は立ち止まって動かない筈の像を見た。

 やっぱり動いていない。微動だにしない。


「気のせいかな?」

「おい、アキラ。なにかあったのか?」


 私が遅かったせいで、みんな引き返してきた。

 だけど私は気になってしまう。多分気のせいだと思うけど、像から音がした。様な気がした。


「いや、今、この像が動いたような気がして……」

「像が動いた? 本当か」

「そんなに食い気味に言わないでよ。私だって、なんとも……」


 私だっても分からなかった。

 けれど何だか引っ掛かる。

 視線を飛ばしてしまうと、沈黙が流れ、突然像が軋んだ。


「やっぱり……」


 私は目を伏せた。ただの気のせいだった。

 トボトボなって肩を落とすと、その時だった。

 再びガガガと異様な音を立て、額越しに世界に赤が侵略を開始する。


「えっ!?」


 突然ピカンと光った。真っ赤な世界が暗闇を消す。

 地下空間を一瞬にして染め上げると、嫌な音が鈍く響く。


ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


 けたたましい轟音が聞こえた。

 私達は素早く気が付くと、突然真っ赤な光が、私達を襲った。


「うわぁ、眩しい!?」

「なによ、急に、眩しいわね」


 赤い光の原因は、目の前の巨兵。

 置物になっていた黒鉄の巨兵が突然動き出したから、赤い光が放たれた。


「まさか、今の轟音って?」

「きっと動いたんだよー。あはは、面白くなって来たー」

「なにがだ。全然面白くないだろ」


 フェルノだけが喜んでいた。

 だけど私達は全然面白くもないし、嬉しくもない。

 寧ろ轟音によって、本格的に黒鉄の巨兵が動き出す合図になっていた。

 何だか嫌な予感がする。これは私の勘だった。


「まさか、動くの?」

「当り前よ。分かってるわよね?」

「皆さん、気を引き締めてくださいね」


 ベルの言葉を雷斬が繋いだ。

 各々が武器を手にすると、黒鉄の巨兵の動きに合わせる。

 一体どんな攻撃をしてくるのか。

 突然立ち上がり、軋む轟音を立てる中、鋭い拳を繰り出した。


「うっ!?」


 雷斬は重力に捧げられ、全身に鋭い拳が走った。

 衝撃が伝わり、何とか刀で受け止めようとするけれど、上手く行かない。

 そのまま体を吹き飛ばされると、後ろに吹き飛ばされていた。


「「「えっ?」」」


 一瞬何が起きたのか分からなかった。

 私達は放心状態になり、時間に取り残された。

 ただ一瞬の時が、無限に加速した。全てを理解している。けれどできない。

 それだけの破壊力が、私達の脳裏を過ぎ去った。


 まさか雷斬がやられるなんて。

 あんなの喰らったら勝てる訳がない。

 私達の顔から血の気が引くも、背後から雷斬の息遣いが聞こえた。


「くっ……あっ、はぁはぁはぁはぁ、重たいですね」

「「「雷斬」さん!?」」


 雷斬はHPが半分以上削られていた。

 相当な痛みとダメージが走っている筈。

 それでも何とか耐えて見せると、あまりの凄さに“さん”付けしちゃった。


「大丈夫、雷斬!?」


 私は絶対に大丈夫じゃないけど心配して声を掛ける。

 刀を杖のように地面に突き立てた雷斬は顔を上げた。

 疲れているけれど、何とか無事を伝える。


「はい。ですが、皆さん気を付けてください。この像は強いですよ」


 それは痛い程今分かった。

 油断なんて絶対にしちゃダメだ。

 私達は気を引き締めるも、赤い単眼はギラギラと、私達を見つめていた。

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