◇185 三つ目の謎は月の試練
“月の試練”、分かります?
私達は、ついに三つ目の試練に挑む。
ここまで、“太陽”→“星”と来ていた。
この流れで、最後にやって来るのは、アレしかない。
「月の試練」
ここまでの流れで推測できた。
太陽→星→月。この三つが一番綺麗。
そう思っていると、背後が明るくなる。
「眩しいっ」
「見てよ、最初の石碑が光ってるよー」
振り返ると一番最初の石碑。それが突然光り出した。
もしかして声に反応しちゃった?
そう思って近付いてみると、〔太陽の古代遺跡の謎3:月の試練〕と表示されている。
「やっぱり」
「試練の内容はどうだ?」
Nightは試練の内容が気になっていた。
私は代表して声に出すと、いつもと同じ書き方だった。
「結ぶのは光の線。三重輪の無数の線が交差する。太陽と星の光が導き出すのは深淵。溝に問い掛け、一つの連なる線を描き。眩き世界に、螺旋の道を示す。さすれば黒鉄の巨兵は蘇るであろう……だってさ」
「同じ感じだねー」
「そうだな……」
ここまでの試練の内容は似ている。
今回も一見複雑そうだけど、きっと簡単なんだろうな。
全然答え分からないけど……まぁ、なんとなく使うものは分かるけどさ。
「後は……」
「床の溝だよね? なにか意味があると思うんだけど……」
「分かんなーい」
試練の内容はこれだけ。後気になるのは、床に掘られた溝。
最初の謎に帰着するなら、きっとこれも関係がある。
だけどウネウネしていて、波のように無数の溝が掘られていて意味が分からない。
私もフェルノもお手上げな中、Nightは腕を組んでいたが、それを解いた。
「ここに来て一番簡単だな」
Nightは難しい試練にも、容易く挑んでいた。
まるで試練が試練ではないみたい。
それこそ、Nightにとっては、遊びも同然な勢いで、解き明かしてみせる。
「簡単なの?」
「えー、なんだか難しそうだよー?」
私とフェルノはピンと来ていなかった。
とは言え、何をするかは分かっている。
床の窪み。その溝が幾つもの円を描いている。
「単純な話。これは絵合わせだ」
「「絵合わせ?」」
何処にも絵は無いけれど、Nightには見えてるらしい。
怖い。それとも想像力で補ってるの?
訳が分からない中、Nightは床にしゃがんだ。
「いいか。この溝は、一つ一つが回転するリールになっている」
Nightはそう言うと、実際にやってみせてくれた。
溝に指を合わせて、クルンと右回転。
すると床の中央だけが回り出し、溝の形状が変わった。
「あれ? もしかして回転盤」
「そうだな。二つ目の試練と同じ謎だ」
ここに来ての、謎の使い回し。
まさか同じものをヒントとして使うとは思わなかった。
だけどその方がコストを削減できる。おまけに、統一感も出て来る。
だからこれはこれで有りだった。
「今回の試練。確か文言にはこう書かれていたな。一つの連なる線を描き……と」
Nightは、今一度石碑に表示された試練の内容を復唱する。
確かにその部分は最後の方に書かれている。
“一つの連なる線”……それを描けばいいんだけど、私はまさかと思った。
—結ぶのは光の線
—三重輪の無数の線が交差する
—太陽と星の光が導き出すのは深淵
—溝に問い掛け、一つの連なる線を描き
—眩き世界に、螺旋の道を示せ
—さすれば黒鉄の巨兵は蘇るであろう
って書いてあった。つまり、溝に問い掛けること。それから一つの連なる線を描くこと。どっちも共通して言えるのは、必要なことって訳だ。
つまり、この溝を回すこと。そうすれば、無数の線が交差して、一つの連なる線を描けるって訳だ。
「それでNight。連なる線って?」
「簡単だ。ここに掘られた溝、それを一つに繋いでやればいい」
「そんなことできるのー?」
「できるに決まっている。言ってしまえば、単なるパズル。金庫の開錠とやることは変わらない」
あまりにもNightが頼もしかった。
いつも以上に大活躍なNightに全て任せる。
それが一番早いと思うと、本当に早かった。
まさしく爆速で謎を解き明かしてしまうと、床に掘られていた溝の一部が、一本の連なる線になっていた。
「コレが答えだ」
「「凄っ」いねー」
Nightが如何やって解いたのかは分からない。
ただクルクル回していたみたいだけど、きっと相当頭の中で考えている。
一回ミスったら迷宮入りは必至で、私もフェルノも真面目に凄いと思った。
「さて、これでなにが起こるのか……ん?」
Nightは解き明かした謎を目の前にしていた。
眩い光の線が一本生まれる。きっとこれで何か起こる。
そう思って期待したけど、何にも起きない。
私はしばらく待ってみたけど、何も起きなくて声を出す。
「なにも起きないね」
「いや、そんな筈はない。……まさか」
「まさかって?」
Nightは常に先を言っていた。
一人で分かったようなふりすると、私達は置いて行かれる。
だけどこれにはNightも唖然とするしかない。
「フェルノ、この“蓋”を開けてみろ」
「「蓋?」」
「いいからやれ」
Nightは突飛なことを言った。
何処に蓋があるのか分からない。
だけど指を指しているのは、先程Nightが解き明かした試練。
床の溝の形は丁度回転盤と同じく、円になっている。まさかこれが蓋なのかな?
「せーのっ……うわぁ!?」
「本当に、蓋だった?」
フェルノは蓋を持ち上げた。
まさか本当に蓋だったなんて、信じられなかった。
って言うか、これってマンホール? あまりにも大きいけど。
「マンホール?」
「の蓋みたいなものな。そしてその下には……」
「排水管……じゃないよね。なにこれ!?」
私はマンホールの下を覗き込んだ。
現実なら、ここには配水管が曲げられている。
その空間が広がる筈が、全然違っていた。
何処までも深い暗闇。そこへ通じるように、螺旋階段が伸びていた。
「螺旋階段……なるほど。螺旋とは階段のことか。ベタだな」
「ベタなんだ―」
正直、何がベタでベタじゃないのか分からなかった。
だけど“螺旋”がこの階段のことを示しているのなら、三つ目の試練はいつも以上に感嘆に解けた。本当に三つの中で一番簡単で苦労しなかった。
「Night、どうするの? この先に行ってみる?」
「そうだな。とりあえず全員集合するか。もう蓋も開けたんだ。二人が光源を供給しなくても、閉じることは無いだろ」
ここまでずっと二人で頑張ってくれていた。
だけどもうその必要は無い。
雷斬とベルを呼ぶことにすると、ゴトン! と鈍くて重い音が響く。
「それじゃあ私、呼んで来るねー」
「お願い、フェルノ」
フェルノはマンホールの蓋をポイッと捨てた。
それから光の通路を走っていく。
雷斬とベルを呼びに行ってくれたみたいで、私とNightは残った。
「ねぇNight、この先にはなにがあるのかな?」
「さぁな」
「さぁなって、もう少し想像力を養ってよ」
私は自分で聞いておきながら、悪態を付いてしまった。
Nightはジロッと見て来るけど、私は気にしない。
だって自分も悪いって、最初に気が付いていたから。
「そうだな……少なくとも、なにかあるだろ」
「なにかって?」
「さぁな。黒鉄の巨兵。その正体は鬼か蛇か……どちらにせよ、行くしかないんだろうな」
Nightはスッと立ち上がった。
螺旋階段の先の深淵。それが何か分からない。
それでも私達は行くしか無くて、鬼でも蛇でも戦うしかなかった。
ここまで来た以上、それが一番カッコいいと私は感じた。
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