◇183 月明かりの道筋
謎を解きましょう。
五日後。私達は再び集まった。
もちろん集合場所は、太陽の古代遺跡。
ついに第二の謎を解き明かす時が来た。
「それで、Night。謎は解けたのよね?」
「ああ」
ベルはNightに訊ねた。
もちろん、淡白な返答をするNightだけど、ちゃんと解き明かしてる。
だって私が見て来たから。間違いなく、答えを導き出せる。
「とりあえず中央の部屋に着いたけど……」
「これからどうするのー?」
私とフェルノは中央の部屋にやって来て、そう言った。
中央の部屋には鏡付きの台座があるだけ。
左右には別に二つ部屋がある。同じように鏡付きの台座が設置されていて、その奥の壁には黒いシミの天体図が描かれている。
「Nightさん、これからどうされるんですか?」
「決まっているだろ。月明かりが出るのを待つぞ」
二つの部屋の天井は、天窓になっていた。
そこから射し込む月明かり。これがもの凄く大事。
私達は、それぞれ部屋に移動すると、Nightの指示を仰いだ。
「それで、どうすればいいの?」
「いいか。天体図に描かれているのは星の位置関係。そしてその位置は、頭上の天窓を通してみることができる」
「「「えっ?」」」
私達は驚いた。天窓の真下に立つと、そこから夜空が浮かぶ。
天窓を通せば、天体図の星が見える。そう言うと、Nightも移動する。
天窓の真下に立ったNightも、自分の目で確認し、改めて納得した。
「ほらな」
「ほらなって言われても……うーん」
「分かんないよー」
私は一度見ているから分かるけど、みんなには伝わってない。
特にフェルノはムッとした顔をしている。
普段から星を見ていないと、どれがどの星かなんて、判る筈ない。
「分からなくても問題は無い」
「問題無いんだ」
「だから私の指示に従え。いいな」
「いいなって……命令口調だなー」
何だかちょっと嫌な気分になる。
Nightは言葉遣いが鋭い。だから敵を作る。
もっと柔らかくフニャフニャにすればいいのに。
そう思うけど、これはこれで、Nightの魅力だ。
「はいはい。分かりましたよ、Night様~」
「その敬称、止めろ。世鴉だけで充分だ」
本気でNightはウザそうにしていた。
ジロッと睨み付けられると、私達は訂正する。
「ごめんなさいね。それで、この鏡をどうすればいいのよ?」
「一旦角度を合わせるぞ。私の指示に従ってくれ」
Nightも少しだけ丸い言葉を使ってくれた。
そのくらいで丁度いいのに。
私はそう思うと、指示に従って、鏡の角度を変える。
「右の部屋と左の部屋。それぞれ違う星座を映し出していた」
「星座?」
「そうだ。天体図に描かれていたシミの正体は星。そしてそこから導き出されるのは、一つの星座だ」
左右の部屋に天体図はあった。
だけど微妙に違っていて、それを鑑み垂らし。
導き出された答えは単純で、それぞれ一つの星座を指していた。
「それが二つ。つまり異なる星座。なにか整合性が取れないか考えてはみたが、やはり星座だった」
「星座がなにか関係あるのー?」
Nightは色々と推測した結果、一番シンプルな答えに辿り着いた。
それが星座の関係性。それが見事にハマっていたらしい。
「あるに決まっている。右の部屋は丸座。左の部屋は半円座。どちらも今の時期にしか見られない、特別な星座だ」
「「「……えっ?」」」
あまりにも雑な名前の星座だった。
“丸座”に“半円座”。運営さん如何したのかな?
もしかして疲れちゃったのかなって、心配になった。
もちろんそれだけじゃない。
私達はNightの後半の言葉も聞き逃さない。
“今の時期しか見られない”。その言葉の破壊力は、脳を抉った。
「待ってよ。なにその適当な名前。後、今の時期だけって?」
「つまり、この時期を逃せば、この遺跡の攻略はできなかった訳だ」
「うわぁ、マジで危なかったわね」
「ギリギリでしたね」
季節限定で攻略が可能になるダンジョン。
それは何処のオンラインゲームにもあるらしい。
だから別に不思議なことじゃないけど、本当にギリギリ。今探索しなかったら、ずっと迷宮入りだったかもしれない。
「だが、そのギリギリのおかげで、成せることもある」
確かに、ギリギリだったからこそ、ここまでやって来れた。
私はあながち間違ってなかった行動に感心する。
だけど大変なのはここからで、私達はNightに委ねた。
「まずは角度を合わせるぞ。天窓のメモリをヒントに……ストップ」
「はい!」
天窓をジッと見ていたNight。
タイミングを合わせ、私は角度を調整し終えた。
これで本当にいいのかな? 不安になる角度だ。
「こっちもだな。ゆっくりと……角度はそれでいい。後は台座の方向だが……」
「こんなもん?」
「そうだな。これで充分だ」
雷斬とベルの方も、上手く角度を調整した。
ミリ単位の誤差も許されない。
けれどNightが完璧に調整したから、多分合ってる筈だ。
「それで、これでどうするのよ?」
「後は壁を閉じるぞ」
「壁を閉じる?」
壁って、あのシャッターの壁のことだよね?
私はあの開いた穴を使うのは分かった。
だけど、これで上手く行くのか、まだ半信半疑だ。
「本当に上手く行くの?」
「不安か?」
「不安だよ。だってタイミングを間違えたら……」
「私が間違えると思うか?」
「思わないけど……」
「それなら気にすることは無い。既に計算済みだ」
一介ミスをしたら、また明日に出直し。
取り返しがつかないのは確実で、私は不安になった。
けれどNightは完璧だと豪語する。確かにNightが間違える訳ない。
全員でNightを信じると、シャッターの壁を下ろした。
「これで上手くいくの?」
「さぁな」
「さぁなって……さっきまでと言ってることが違うじゃない」
ここに来て、あまりにも中途半端な、ましてや肯定でも否定でもない返答。
ベルはツッコミを入れると、Nightは仕方は無いと言う。
「仕方が無いだろ。計算はしてきたが、ここからは賭けだ」
「賭け?」
「天候を味方に付けるしかないんだ。こればかりは、私でも無理だ」
Nightは賭けに乗っていた。
正直珍しいなって思った。
だけど天候が相手だと、流石に仕方が無い。
「Nightならなんとかなりそうだけど……」
「できなくはないが、道具が足りないな」
「そっか。今時道具さえあればね……」
ここはゲームの中だ。もの凄くファンタジーな世界に合っているけど、天候を変えるのは大変だ。
今時現実だと、道具さえあれば装置さえ用意していれば、簡単に天候も操作できる。
それくらいゲームのしかもファンタジーゲームの中でくらい、簡単にできてもいいのにと思った。
「あの壁の穴から月明かりが入るんだよね?」
「そうだな。それが目的なんだが……上手く行くか」
「行って欲しいよね」
壁には穴が開いている。
間違いなく、あの穴から光が走る。
真ん中の部屋の鏡付きの台座に当たればいいんだけど、それが賭けだった。
「なんとかって欲しいな。ううん、なるよね」
私はそう言った。言い切った。
すると壁に空いた穴の奥、ボワッと白い光が浮かぶ。
充満した煙みたいで、私は首を捻ってしまうと、急に壁に空いた穴から、光の線が迸った。
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