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◇182 星座と絆

こういうの好き。

 歪みの中に突入した。

 頭がグワングワンなるし、視界がグネグネする。

 気持ち悪い感じはしないけど、変な感じはして、凄く不安になった。


「ううっ……おっ!?」


 けれどそれも一瞬の話だった。

 しばらくすると歪みは消え、私は頭も視界もハッキリする。

 平坦な地面を理解すると、スッと瞼を開く。


「ここは……えっ!?」


 私は驚いてしまった。気が付くと、私は登山道には居なかった。

 明らかに空気が薄い。おまけに景色も違う。

 完全に開けており、私は首をキョロキョロさせた。


「ここって……」

「どうやら頂上のようだな」


 隣から声が聞こえて来た。

 私は安心すると、視線を向けた。

 そこに立っていたのはNightだ。


「Night!?」

「アキラ、どうやら私達は、無事に辿り着いたらしいぞ」

「辿り着いたって?」


 一体何処に辿り着いたのかな?

 私はNightの言葉にハッとなる。

 ここは星見山の頂上。つまり目的地って訳だ。


「あの歪みは所謂近道だったらしい」

「近道?」

「そうだ。条件は恐らく、シャドーウルフが関係しているんだろうな……とは言え、明確な理由にはならないか」


 あの歪みは近道だったらしい。

 原因はシャドーウルフが関係している。

 だけどそれ以上のことは分からなくて、とりあえず言えるのは、私達は日の出までに頂上に辿り着けたってことだ。


「ってことは……うわぁぁぁぁぁ!?」

「凄い光景だな」


 私はつい叫んでしまった。頭上を見上げれば、そこにあるのは満天の星空。

 真っ暗闇を明るく照らす、幾つもの星達。

 凄まじい光量で輝きを見せる一等星を中心に、赤や黄色・白と幾つもの点が浮かんでいる。


「凄いね、綺麗な星空だね」

「感想が薄いな」

「それしかでないよ。ロマンチックなこと、期待しないで」


 誰もがロマンチックな詩的な表現ができる訳ない。

 大抵は「うわぁ」とか「おお」くらいだと思う。

 人間、本当に感動した時は言葉が出なくなる。まさにそれで、私はゲームの世界の星空に酔っていた。


「だがしかし、これだけハッキリと見えるとな」

「うん」

「周りにネオンの灯りが無いからだな。おまけに山の頂上だ。空気が澄んでいる証拠だ」


 現実世界、都会の空はこんなに綺麗じゃない。

 ネオンの灯りや多少の煙が邪魔をしている。

 だから感動できるんだ。これだけハッキリとした星空、美しいって思える。


「ねぇ、Night。この世界にも星座ってあるの?」

「もちろんあるぞ。例えばあの星とあの星を繋げてみろ」


 私は星座の話題を出した。天体図のこともあるけれど、少しだけ興味があった。

 すると調べておいてくれたのか、Nightは得意気に話し出す。


「あの白いのと青いの?」

「そうだ。それから周囲の星を束ねれば……なにに見える?」


 なにに見えるって言われても全然分からない。

 私はポカンとしてしまい、とりあえず頭の中で形を作る。

 すると鳥っぽい嘴が頭の中に浮かんだ。もしかしてって思い、口に出す。


「鳥座?」

「欲しいな。正解はコカトリス座だ」

「……はっ?」


 私は本気でポカンとしてしまった。

 全くと言っていい程理解ができない。

 コカトリスってあのコカトリス? 創作上の生物のことだ。

 確かにここはゲームの中だけど、知らないモンスターの名前を出されても伝わらなかった。


「他にはどんなのがあるの?」

「そうだな。あっちを見てみろ」

「あっち?」


 指で差した方向を目で追い掛ける。

 赤く輝いている星がある。

 それから周りの星を繋げると、ある星座の名前を出した。


「アレは棍棒座だ」

「こ、んぼう、座?」

「そうだ。その下にあるのがサイクロプス座だな」


 その下にある星達を繋ぎ合わせた。

 一際大きな星座を作ると、Nightはそう答える。


「えっと、揶揄ってないよね?」

「そんなつまらないことするか」

「それじゃあ本当なんだ……」


 私は表情が渋くなった。

 眉根を寄せてしまうと、話を変えようと思う。

 こうしている間にも星空は動いている。

 だから早めに本題に入る必要があった。


「そういえば、本命は?」

「分かっている。今探しているんだが……アレか?」


 私達は天体図に描かれていた星を探していた。

 だけどなかなか見つからないから、目も首も痛くなる。

 途中首を休めたりした私達は再度挑戦した。


 すると顔色を歪めると、Nightはようやく見つけた。

 私も目で追って、ようやく見つけられる。

 とんでもなく視認性の悪い星だった。


「アレっぽいね。ってことは、反対側の壁にあった天体図は……うん、アレみたいだね!」

「そうだな。特徴的な黒い星が浮かんでいるか」


 太陽の古代遺跡。中央の部屋の左右の部屋。そこには黒いシミが壁にあった。

 わざとの様に付いていて、カビでさえなかった。

 つまり意味があるってことで、天体図にはしたけど、まさか本当に黒で表現してるとは思わなかった。だって、星空の中、薄っすらとだけど黒い星が浮いている。


「黒い星って、なんだか不気味だね」

「ここはゲームの中だぞ。気にするな」

「それ言ったらお終いだけど……そうだね」


 “黒い星”なんてちょっと不気味だ。

 何かあるんじゃないかなって思っちゃう。

 だけどここはゲームの中。そう妥協すると、それでお終いだ。


「とは言えこれで見つけたぞ。あの星形……それから月の位置」


 問題は月の位置関係だ。

 ジッと月の位置を把握すると、Nightは頭の中で記憶する。

 「覚えたな」と言い、私にも目配せするけど、そんなの無理だった。


「綺麗な半月だね」

「そうだな。……アキラ、フェルノはいつ合宿から戻るんだ?」

「えっと、三日くらいかな?」

「そうか。三日月でも足りるだろうか?」


 遠くの月は、今は半月。数日後にフェルノがログインできるから、その時には三日月。

 Nightは危惧していた。顔色が悪くなるので、私は一応励ます?


「多分大丈夫だよ。ねっ」

「はぁ、そうだな。信じてみるしかないか」


 Nightにしては珍しい。お祈り時間(タイム)に入っていた。

 だけど太陽の古代遺跡は現実にリンクしてる。

 月明かりが光源なら、三日月で足りるか心配になるのも分かる。


「ねぇNight。時間がないなら、フェルノは置いて……」

「そんなことしたら、後でなに言われるか分からないだろ」

「まぁ、そうだけど」


 試しにフェルノを放置することを提案してみた。

 時間がないならそれも仕方が無いこと。

 きっとフェルノも受け入れてくれると思った。

 もちろん私は嫌だけど、Nightも同意するから意外になった。


「それに、ここまでやったんだ。全員で勝つぞ」

「Night……珍しいね」

「珍しいだと? パーティー戦は利点と欠点がハッキリしている。だが私達は継ぎ接ぎだ。一つが欠けると大きな損失になる。だから数をできるだけ増やす。それが力になる。それだけの話だ」


 Nightが凄い熱い話をしていた。

 何だか嬉しい。つまり、私達のことを信じてくれている証だ。

 にこやかな笑みを浮かべると、私は嬉しくなった。


「Night……」

「なんだ。文句でもあるのか?」

「文句なんか無いよ」


 文句なんかある訳なかった。

 寧ろ嬉しいくらいで、絆を感じられた気がする。

 私は勝手に喜んでしまうと、Nightにもの凄い顔をされた。

 それでも気持ちは高揚していて、私達は星空を見ていた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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