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◇181 登山道が歪んでます

 私達はシャドーウルフを追い払った。

 別に追い払う必要は無いんだけどな。

 複雑な気持ちになってしまうと、不意に気になった。


「ところでNight、それは?」


 私は、Nightに訊ねた。

 手に持っている物が気になったからだ。


「コレか?」

「そうだよ。なんだかランタンにしては、細長い気も……」


 ランタンは一つしか持って来ていない。

 私はシャドーウルフに戦いを挑む前、Nightに預けた。

 灯り役をお願いしたんだけど、いつの間にか、ランタン以外のものを手にしていた。

 流石にビックリしたけど、それはもしかして?


「ああ、懐中電灯だ」

「やっぱり!」


 ここに来ての懐中電灯。やっぱりとしか言えない。

 だって、Nightの固有スキル、【ライフ・オブ・メイク】は最強クラス。

 この世界の存在を脅かすような、ファンタジー世界を逸脱するような凶悪スキルだった。


「なんで懐中電灯?」

「こっちの方が明るいだろ」

「明るいけど……」


 確かに明るい。ランタンの何倍も明るい。

 だけど懐中電灯に近付くと、もの凄く熱い。

 凄まじい熱量を誇っていて、私は素早く避けた。


「熱っ!?」

「当り前だ。この懐中電灯は白熱電球だぞ」

「白熱電球……?」


 そんなのあったっけ? 今の時代、そんなものを使っているとは思わなかった。

 だから私はポカンとすると、Nightは懐中電灯を握った。


「コイツはランタンを作る時に試しに作ってみたものだ」

「試しに作ったの?」

「ああ。材料は一応用意していたからな……」

「材料って」


 Nightの固有スキル、【ライフ・オブ・メイク】はHPを削ってアイテムを生み出す。

 だけど難しい物とか、複雑なものは、HPを削るだけでは足りないこともある。

 だから、実際にソレっぽい物を用意して代用することもあるけど……まさか、懐中電灯なんて文明を持ち込むなんて思わなかった。


「懐中電灯……確かにこの灯りなら、シャドーウルフも逃げ出すとは思うけど……」

「まあ、一つ問題があるがな」

「問題?」


 これだけ明るかったら、シャドーウルフも逃げちゃう。

 何だか本当に可愛そうなことをした気分になる。

 だけどこの懐中電灯、問題を抱えているらしい。


「あっ、チカチカし始めた?」

「これが問題だ。コイツは、長時間の使用ができない」

「えっ……」


 懐中電灯の灯りが突然チカチカし始めた。

 ドンドン光量が弱まって行くと、今にも消えてしまいそう。

 まさかの長時間使用できない仕様だった。


「どうして? スイッチ切ればいいんじゃないの?」

「コイツにスイッチは無い」

「スイッチが無い?」


 懐中電灯って、スイッチが付いているイメージだった。

 だけどNightが作った懐中電灯には何故かスイッチが搭載されていない。

 如何してなのか? と首を捻ると、Nightは答えてくれた。


「まずコイツにはバッテリーが無い」

「えっ?」

「おまけにスイッチが無いから、一度使ったら終わり」

「終わり?」

「つまり、使い捨て懐中電灯だ」

「そんなのないよ!」


 新しい造語が生まれた瞬間だった。

 使い捨てカメラではなく、使い捨て懐中電灯。

 あまりにも勿体ない。おまけに欠陥だらけ。そんな物を試しに作るなんて……Nightらしくない。


「Night、もっと完璧なものを作らないの?」

「それは理想論だ。この世界に完璧など存在しない」

「そうだけど……」


 レスポンスはそれで終わった。

 だって私も分かる。この世界に完璧なんてものは存在しない。

 全部バラバラで不完全だから回ってる。完璧を目指すことはできて、完璧になることなんて、絶対にできないんだから。


「なんとなく分かったよ」

「そうか。それならさっさと行くぞ」

「さっさと?」

「そうだ。後ろを見てみろ」


 何故かNightは急かした。

 確かにここで立ち尽くして話していたら、陽が昇っちゃう。

 急かされるのも分かったから、急ごうとするも、Nightの言葉が気になった。


「後ろ? うわぁ!」


 振り返ってみた。何があるのかと思った。

 すると視界の先、星見山の登山道が消えていた。

 代わりにあったのは、ドンドン歪んでいく景色だった。


「な、な、な、なにが起きてるの? 世界が歪んでるんだけど」

「私も分からない。だから、お前と会話をして最中から、凄く違和感を感じたぞ」

「だよね。ごめんね」


 私は謝ってしまった。別に謝ることでも無いけど。

 とは言え、会話中ずっと世界が歪み続けたら頭がおかしくなりそう。

 私はNightの気持ちを汲むと、コクリと縦に振る。


「ちなみにだけど、これ、どうするの?」

「どうもこうもないだろ。本当はすぐさま逃げるべきだが……」

「逃げられないよね?」


 私もNightも逃げる気満々だった。

 本当はそうしたいのは山々で、得策だ。

 だけど今回ばかりはそうもいかない。


 残念だけどこの先に行かないといけない。

 別に美に試してもいいけど、Night的にそれはダメ。

 何せ今日の空と明日の空は違うんだから。


「とりあえず、試してみるか」

「試すって?」


 Nightは何かやってみるらしい。

 下手なことして飲みこなれたくないよ、私は。

 消極的になると、Nightはしゃがみ込んだ。


「ほいっ」


 Nightは地面に落ちていた石ころを拾った。

 それを目の前の歪みに投げ付ける。

 シュルルーと空気を切ると、投げ込んだ石ころは落ちない。


「あれ?」

「地面に落ちないか」


 私の目がおかしくなったのかな?

 一瞬不安になるけど、Nightは確信を持つ。

 ニヤッと笑みを浮かべると、私の顔を見た。


「アキラ、行くぞ」

「行くって、歪みの中に?」

「当り前だ。あの歪みの正体は判ったぞ」


 Nightには歪みの正体が判っていた。

 私もNightの顔色を見てある程度察する。

 多分だけど、“転移装置(ポータル)”だよね?


「瞬間移動するってこと?」

「そこはテレポートでいいだろ」

「そうだけど……行くの?」

「当り前だ。回り道をする暇もないからな」


 無駄な会話のやり取りをしたけど、これも面白かった。

 それはそうと、転移装置を潜ることになるが、一応回り道の手もある。

とは言え、寧ろ回り道が危険な気がした。

 周囲を見れば森で、シャドーウルフ以上に厄介なモンスターが潜んでいるかもしれない。

 だから暇はあるけど、そんなヤバいことしたくなかった。


「暇はあるんだけど……分かったよ」

「よし。それじゃあ行くぞ」

「あっ、待ってよ!」


 私は先を行くNightを追い掛ける。

 こんな時のNightはとっても堂々としている。

 背中を追い掛け、私とNightは宛先知らずの転移装置を潜ると、何処か別の場所に移動した。

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