◇18 烈火より先に遊んでしまった(てへっ)
いよいよまともなダンジョンに行きます。
「えー! 明輝もCU遊び始めたのー!?」
「うん。烈火の家から帰った後、色々あって……」
「色々ー?」
「うん、色々」
私と烈火は一緒にお昼ご飯を食べていた。
私は自分で作って来たお弁当。
中身は作り置きしていた総菜の残りがほとんど。
烈火は購買で買って来たパン。後は近くのコンビニで売っていたお弁当。
割引シールが張ってあって、賞味期限は昨日になっている。
多分、夜中に買って来たものだと思う。
「いいなー、私が予約購入した分、まだ届かなくてー」
「私も偶然だったから」
「偶然かー。明輝って、そう言うの連続するよねー」
「そ、そうかな?」
「一回当たりに入ったら、しばらくの間ずーっとそうでしょ? ハズレなんて引いたことが無いって顔してるー」
「そ、そんなこと無いよ?」
私はいつも良いことがあると、烈火にこう言われる。
「明輝は運がいいからなー」って。
だけどそれって偶々な気がする。だから私はなんとかして訂正した。
「ほら、烈火も運良いでしょ?」
「まあ、そこそこはー? でも明輝って異常でしょ」
「異常者扱い?」
「宝くじ、外れたことある?」
「……無いけど。絶対五等は貰えるから」
「副引き、ポケットティッシュ以外は?」
「ポケットティッシュが当たった後は、その色々あって……」
「はぁ、リアルラックの神?」
何故だろう。烈火に呆れられてしまった。
しかも溜息まで付かれてしまった。
視線が徐々に外れて行くと、烈火は目の前のパンをガブリと頬張る。
「明輝って、いつもそうなんだよねー」
「ううっ、ごめん」
「まあ、いいんだけどねー。あむっ」
「本当にごめんね」
私は必死に謝っていた。
もちろん謝る必要なんて無いのに、癖で謝ってしまっていた。
だけど烈火も分かってくれていた。背中をポンと叩くと、ニコッと笑みを浮かべる。
「それでそれで、CUってどんなとこ? やっぱり楽しい?」
「うん、楽しいよ。逸れに凄くリアル」
「やっぱそうなんだー。流石はエルエスタ・コーポレーション。アジア最大の企業だねー」
烈火は勉強嫌いな筈なのに、こういうことには詳しかった。
きっと調べたに違いない。
よく見ると、烈火が食べているパンの袋やお弁当のパッケージにもエルエスタ・コーポレーションのマークが入っている。これだけ色んな所に付いていれば、嫌でも目に留まってしまうんだ。
「烈火はCUに来たらなにしたい?」
「ん、私? 私はねー。バトりたい!」
「ば、バトルなの? やっぱり戦いたいんだ」
烈火は戦闘好きだった。戦闘狂って訳じゃないけど、ゲームは大抵アクション。
しかも対人格闘ゲームがほとんどで、一人でNPC相手に戦っている。
部活もテニス部で、シングルス専門。中学の時は全中三連覇しちゃうくらいだもん、体を動かすのがとにかく好きな親友だった。
「あっ、烈火。大会はどうするの?」
「大会? はっ!?」
「そうだよ、なんで忘れてたんだろう。もう少しで大会だよ?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! せっかく遊べると思ったのにー。まあ、こっちも楽しいんだけどさー、はぁ、再来週かな」
烈火がCUに来るのがまた遠のいた。
落ち込む烈火の肩を私はソッと撫でる。
「ドンマイ」。今はそれしか言葉が出なかった。
「烈火、CUに来たら、一緒に遊ぼ」
「ん? もっちろん。そのつもりだよー」
「よかった。私、ずっと一人で戦ってるから……」
「えっ!? 明輝って凄いね、本当に凄い」
「ん? なに言ってるのか分からないけど……」
烈火はキョトンとした顔をした。
何だか私、変なことしちゃったみたい。
だけど何をしたのか私には分からないから、何にもピンと来なかった。
「それじゃあ楽しみに待ってるね」
「うん! 優勝トロフィー獲ったらすぐ行くよー。っと、明輝さー、ちょーっと面白い噂があるんだー」
「噂?」
烈火は思い出したようにスマホを取り出す。
何か調べ始めると私の前に検索した掲示板を見せた。
「なにこれ、掲示板?」
「そうそう。CUのスレが立ってるんだけどー、たまーに見ると面白いよ。っと、会ったあった、これ!」
77:ピンクグラス
—みんなさ、シャンベリーって知ってる?
78:匿名希望
>シャンベリー?
79:見習い剣士77人目
>なにそれ?
80:ぷでぃんしゅ
>新しいベリー?
81:特許昨日
>それな
82:ピンクグラス
—謎のダンジョンだって
83:ピンクグラス
—平日の真夜中にしか出ないらしい
84:ピンクグラス
—しかも行ける奴はランダムだとさ
85:ピンクグラス
—攻略勢もパスしたらしいぜ
86:見習い剣士77人目
>www
87:ぷでぃんしゅ
>意味ねぇ
88:特許昨日
>無駄情報
89:福岡に研修行ってましたw
>どのみち行けないっての
「だってさ」
「だってさって言われても……これがどうかしたの?」
「明輝、興味無いんだー。シャンベリーなんて面白そうじゃない?」
「そうかな?」
正直、心は全く踊らなかった。
“シャンベリー”なんて言われても、全くピンと来ない。
今日二度目なので、私は首を捻ると、烈火はスマホを突き付ける。
「行ってみたら?」
「えっ、行くの、私が? 深夜だよ」
「明輝、深夜も強いでしょ?」
「意味が分からないんだけど」
一体何を持って言ってるのか、私には理解ができない。
眉根を寄せ、眉毛をピクピクさせてしまう。
困惑している私一人置いて、烈火は凄く楽しそう。
ニヤニヤと笑みを浮かべると、「ドヤッ!」と言いたげな顔をしているので、私は本気で困ってしまった。
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