◇176 星が教えてくれる筈?
別日に再トライ。
「私が気になっているのは、この天窓とシミだな」
「天窓とシミー?」
Nightは気掛かりを思った。
まずは天窓。何故にメモリが振られているのか。
明らかに不自然そのもので、私達は首を捻る。
「何故天窓にメモリが振られているのか。恐らくは、なにかしら位置関係を示しているんだろうな」
「位置関係?」
「一体なんのこと言ってるのよ」
ベルはNightの言葉に反応した。
私も天窓を見上げると、太陽のビカビカ赤く照り付ける日に慄く。
流石に眩しい。それだけじゃなくて、メモリを覆い隠そうとしていた。
「アキラ、下手に凝視するなよ。目が焼けるぞ」
「先に言ってよ」
「つまりこういうことだ」
「どういうこと?」
余計に分からなくなってしまった。
私はポカンとしてしまうと、Nightは更に言葉を挟む。
「つまりこの天窓のメモリは、なにか目標物の位置を示している。その指標にしろってことだろうな」
「指標って、太陽の?」
「いや、それはもう試した。限りなく可能性は低いだろうな」
Nightの読みの中に太陽は無かった。
実際、太陽を利用する方法は、既に試し済み。
そのどれもが悉く失敗、否、外れだ。
つまりこれ以上試しても意味が無い。
私も何故か同感で、別のものを気に掛ける。
そう、太陽は今回の試練には関係が無いんだ。
「それじゃあなにが関係してるのよ?」
「そうだな。例えば……」
「「星だな」だね!」
何となくだけどそんな気がした。
今回の試練に太陽は関係ない。
だけど天窓ってことは、ソレっぽい物の筈。
そんな気がしてしまい、つい私とNightは言葉を発する。
「「ん?」」
私とNightは互いに顔を合わせた。
お互いに同じ言葉を言い放つとは思ってなかった。
いや、私の方が意外に思われているみたいで、視線が痛い。
「ちょっと、Nightはともかくとしてー」
「なーんで、アキラも知ってるのー?」
ベルとフェルノに顰められた。
私も如何してだろうと、考える。
ただ頭の中に浮かんだ言葉をスッと取り出しただけ。
それだけなのに、Nightも見つめないで欲しいな。
「アキラ、お前も気が付いたのか?」
「そんなに期待しないでよ。私はただ……」
「ただ?」
「なんとなくそんな気がしただけだよ」
もの凄く期待した顔をされる。
だけど私は何かに気が付いた訳じゃない。
タダの勘。それ以上でも以下でも無かった。
「はぁ。単なる勘か」
「あはは、アキラの勘は当たるよー? 強運だよー?」
「意味が分からないな。まあそれはさておき、その勘を確証に変えてやる」
凄く落胆されてしまった。おまけにフェルノに妙なフォローをされてしまう。
そのせいか、完全にスルーされてしまうと、Nightは話を振り直す。
「目の前の壁。黒いシミがたくさん付いているな」
「そうですね。なにか意味があるのでしょうか?」
「まず間違いなくな」
中央の扉を境に、左右の二つの部屋。
そこには黒カビではなく、黒いシミが付いている。
わざとのように大きさも異なっていて、私は気になってしまう。
「意味があるって、どんな意味よ?」
「コレは天体図だ」
「「「天体図?」」」
ベルはNightに物申した。
しかしNightは簡単にあしらってしまう。
天体図なんてよく分からないものの名前を口にされると、私達は全員首を捻った。
「そうだ。天体図は知っているな?」
「……知らないけど」
「簡単に言えば、天体を平面的な図に表したものだ。主に星座を平面的な図に起こしたものが一般的だな」
正直知っていることを前提にしないで欲しい。
目を細めてしまうと、Nightは分かりやすく教えてくれる。
天体……つまり惑星や小さな星達を、平面の図に起こしたもの。
それを聞いて、頭の中で何か思い出された。
「星座早見盤?」
「そうとも言う」
私は小学校の頃、理科の授業で使った道具を思い出した。
今の時代、電子のものが一般的。
だけど私の通っていた小学校や、お母さんは現物を持っていた。
クルクル回して遊んでいた記憶が思い出される。
「天体図ですか?」
「そうだ。そして天窓のメモリ。恐らくは、星の位置を指定しているんだろうな」
「「「星の位置?」」」
天窓に付いた怪しいメモリの正体。それは星の位置を示している。
恐らく湾曲しており、曲面を持っているのも意味がある。
空が平行じゃないからこそ、わざと歪めているんだ。より一層、角度を明確にするために。
「そんなの難しくない?」
「難しいな。おまけに光源も限定的だ」
ここまで聞いて難易度は過去最高。
おまけにNightは光源が無いことを明らかにする。
確かに太陽以外の強力な光源が必要になる。
「そうだよ。光源ってなにを使うの?」
「お前、夜間に太陽並みに輝く物体があるのを知らないのか?」
「えっ?」
「惑星ではないが、天体ではある。ここまで言えば分かるだろ?」
Nightは太陽以外の光源を教えてくれた。
だけど直接的ではなく、ヒントを出してくれる。
そんなの要らないのにと内心では思いつつも、もの凄いヒントの数々に雷斬が気付く。
「もしかして、月でしょうか?」
「正解だ。恐らく太陽の光よりも月の光を求めているんだろうな」
「月の光って……もしかして、だから星の位置なの?」
太陽の光の代わりに月の光を求めている。
何だかロマンチックな感じがして、私はソッと手を合わせた。
太陽の古代遺跡が月明かりを受けるなんて、それはそれで華がある。
だけどそれはそれとしてだ……
「む、難しそう……」
「そうだな。だがやるしかない」
あまりにも難易度が高かった。知識がないとそもそもヒントの意味もない。
私は絶句してしまうと、Nightは強情だ。
ここまで来た以上引き返せないのだが、そこでベルは咳を一つする。
「(コホン)ちょっといいかしら?」
「なんだ」
「Nightの言い分的に、必要なのは星の位置と月明かりってことよね?」
「そうだな」
ベルは今分かっていること、必要なことを二つに分けた。
一つは星の位置。もう一つは月明かり。
このダンジョン周辺が固定の時間軸で進むのなら、月が出ている時間も限られる。
それに合わせて星の出ている時間も限られるのなら、急いだ方がいい。
「それで、このシミが天体図って言いたいのよね?」
「そうだな」
「それじゃあこのシミはなによ。なんの星座よ? 結局それが分からないと、先には進めないでしょ?」
ベルの言う通り、そこが最大の問題だと思う。
Nightの推測が例え正しかったとしても、目の前のシミが、何の星座か分からない。
天体図だとしても、全く分からないなら意味が無かった。
「そうだな。どうやら現実の星座ではなさそうだ」
「そこまで分かるの?」
「知識さえあれば誰だって分かるだろ」
「えーっと……えっ?」
つまりそれは、知識がないと分からないってことじゃないのかな?
Night自身は、全然バカにしている感じはない。
けれど、私達にとっては知識がないのでピンと来ない。
「誰だって分かる訳ではないと思いますが?」
「分かっている。だからこそ、このシミが何処の、なんの天体図か、その答えを見つけないと、ベルの言う通り、先には進めないだろうな」
「「「……」」」
つまり、私達ができることはもう無いってことだ。
この先はNightしか進めない。下手に私達が進行したら、絶対に道に迷う。
そんな気がしてしまうと、後はNightに任せることにした。
「それじゃあどうしたらいいの?」
「一旦解散だな」
「解散?」
「今日はもうできることがない。後は私が調べておくから、全員今日はログアウトだ」
Nightは解散を宣言した。
正直今日はもう何もできない。
私達は役に立てないので諦めると、ここはNightの意見に乗るしかなかった。
「えっと、いいの?」
「それしかないだろ。全員解散だ、いいな」
「……分かったわ」
「うん、それじゃあみんな今日は解散しよっか」
正直Nightに負担を掛け過ぎる。何だか申し訳ない気持ちになった。
だけどNight自身が任せていいのなら、ここは従うしかない。
私とベルは互いに顔を合わせると、一旦ログアウトすることになった。
とりあえずそれしかできないので、私達の太陽の遺跡探検は、初日が終了した。
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