◇172 鏡の台座
現れたのは、広い部屋に、ポツンと置かれた鏡。
「ここが次の部屋か」
やって来たのは新しい部屋。
罠を潜り抜けた先で待っていたのは、まあ広い部屋。
少なくともここは八畳はある。最初の部屋と同じくらいだ。
後、真ん中に変なものが置いてあった。
「ねぇ、見てよ。アレ」
「古い鏡だな」
何故か部屋の真ん中に鏡が置いてあった。
しかもただの鏡じゃない。
ターンテーブル式になっていて、台座と一体化している。
そのおかげか、クルクル回転しそうだった。
「コレが次の謎か」
「そうみたいだよ……ねぇ見てよ。ここに変なマークが書かれてる」
「マーク? 三分の二?」
台座を真剣に見てみると、変な文字が刻まれていた。
2/3とわざとのように掘られている。
しかも随分と新しくて、なんとなくだけど、変な想像をした。
「もしかしてコレ……」
「目印だな」
「やっぱり。多分だけど、オブジェクトに目印を付けたままにして……」
「それ以上言うな、野暮になる」
確かに野暮な話だとは思う。
だけどここに来てわざとらしく手を抜いている。
2/3ってことは、コレは三つの謎の内、二つ目ってこと。
つまり、この鏡の謎を解けってことかもしれない。
「どうしますか、この鏡、動かしてみますか?」
「そうだな。頼めるか?」
雷斬は、Nightに言われて鏡を動かす。
ターンテーブルを回せば方向が変わる。鏡自体を動かせば角度が変わる。
色んな意味で謎を深くするものだった。
「変わりませんね?」
「そうね。適当に動かしてもダメみたいね」
雷斬とベルはあてずっぽうで動かしてみた。
だけど何にも起きてくれない。
当然のことで、きっと謎が待っている。
「うーん。あっ、アキラ!」
「どうしたの、フェルノ?」
「あったよー、石碑みたいなの」
フェルノは部屋の中に隠されていた石碑を見つけた。
ひたすら壁を触っていると、隠されていたものが出て来た。
最初部屋に入った際、石碑が無くて、何故か鏡付きの台座しかなかったけれど、まさか壁の中に隠してあったなんて思わなかった。
「何処にあったの?」
「ここだよ」
「ここって……シミ?」
フェルノが指差したのは、壁の下の方。
ネジとかは付いていないけれど、壁の一部が取り外せるように、わざとパネルになっている。
指を引っ掛ける凹凸があり、引っ掛けると簡単に剥がせた。
おまけに目印として黒いシミが付いている。
四隅を丁寧に象っていて、ここですよって言ってる。
私は親切過ぎた運営に感謝する。
「黒いシミだな……カビではないか」
「Night、触ったらダメだよ!」
「そうだな。利用できるカビもあるが、体に害があるものも多い。早計だったか」
Nightも見つけた石碑を見ようとした。
その前に壁に付いた黒いシミが気になる。
凝視していたが自然と手が前に出ると、黒いシミを指で撫でた。
もちろん私は急いで引き剥がす。
流石にカビなんて触らない方が絶対にいい。
Nightもそれが分かった上でカビを触り、手を放すと、らしくない態度を見せた。
本当に早計過ぎて私はおかしなNightに首を捻る。
「まあ、手袋は着用していたが」
「い、いつの間に?」
「今だ」
けれどそんな心配は要らなかった。
いつの間にか手にはとっても薄い透明な手袋をはめている。
カビを直接触ることは無く、シミだと確認すると、私の心配をよそに石碑へ視線を移す。
「なるほど。次はコレか」
私達は石碑を見つめた。
するといつもの通りメッセージが浮かび上がる。
そこには〔太陽の古代遺跡の謎2:星の試練〕と銘打っていた。
「星の試練?」
「2ってことは、まだ続くってことかなー?」
「そうだろうな。それで、肝心の謎は……」
Nightは映し出されたメッセージを読んでみる。
文字数的にも最初の謎と同じくらい。
完全に合わせて来ていて、作りも同じ、つまり担当者が同じってことだ。
「示すのは鏡の調べ。二つの扉の奥、かの刻より刻まれし古の図が彩る。
答えは宙の彼方に今もある。暗闇が支配する世界で星々は踊る。
見出すは異なる図形。それを用い、月満ちたる光を通せ。さすれば鏡、光来の道を行きて、真実を誘うであろう……か」
Nightはとりあえず口に出して読んでみた。
最初の謎と同じで、ヒントはたくさんある筈。
だけど今度も難しそうで、早速Nightに訊ねた。
「……えっと、どういうこと?」
私も一応流し見した。だけどよく分からない。
間違いなく、あの鏡を使うのは確定。
だけどそれ以前に、“二つの”が何を示しているのかピンと来ない。
「ねぇ、この二つのってなに?」
私は意を決してNightに訊ねる。
するとNightは周りを見回す。
この部屋に置いてあるのは台座に固定された鏡が一つだけ。
他には鏡は無いし、ましてや二つの扉がない。この部屋には、扉っぽい物は何もなかった。
「むぅーん、二つの扉ってなに?」
「そんなもの無いよね?」
「どうだろうな」
「「ん?」」
見た所扉らしきものはない。
私達がここに来たのも、通路を通っただけ。
確かに壁が開いたから、アレを扉って思い込めば扉だけど、二つも無い。
「どうだろうなってー?」
「扉は隠されている可能性がある」
「隠されてる? 何処に隠されているの?」
私はズバズバとまだ分からないことを聞き続ける。
するとNightは立ち上がり、部屋の中を見回す。
妙に広い部屋の中。とは言え物はない。気になることが山積みだ。
「この部屋の何処かにヒントがあるかもしれない。それを見つけない限り、この先には行けないだろうな」
「この謎を解かないとダメだもんね」
「そうだ。少なくとも、一日で見つかる山とは思えないな……少し情報を洗うか」
Nightの中で方針が決まったらしい。
私達はそれに従うことにする。
だってそれが一番手っ取り早そうで、確実な道だった。
「それで、まずはなにをするの?」
「とりあえず、二つの扉を探す必要があるな」
「そうだね。みんな、扉を探すことになったんだけど……あれ?」
ふと視線を前に向けた。
これからこの二つの扉らしきものを探すことに決めていた。
けれど雷斬とベルの様子がおかしい。何故か壁をコツンコツン叩いている。
「どうしたの、二人共?」
私は二人に訊ねる。
もしかしたら何か見つけたのかも。
前にお母さんが行ってた。壁を叩いて、音が返って来なかったら、そこは空洞。つまり何かあるんだって。
「もしかしてなにか見つけたのー?」
「えーっと、どうでしょうか?」
「そうね。なにかありそうだけど、音が広がり過ぎている……いうより、ねぇ?」
雷斬もベルも歯切れが悪かった。
だけど少なくとも壁の奥に何かあるのは確実。
これは二つの扉の謎もすぐに解けるかも? 私は少しだけ喜ぶと、二人の手伝いに向かった。
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