◇171 串刺しの罠
当初の予定だと、大岩が転がってくるネタでした。
でも止めました。
大岩だと色んな工程を踏むのが面倒なので、分かりやすいネタを拝借。
私達は開いた壁の奥へ向かった。
眩い輝きは床から放たれている。
そのせいか、天井を見ていれば目が痛くなくて済んだ。
「どこまで続いてるのかな?」
「さぁな」
「さぁなって、つまらないこと言わないでよ」
Nightはあまり考えていなかった。
否、思考を広げ過ぎていて、私達の会話が適当になる。
「実際、何処まで続いているのでしょうか?」
「そうよね。真っ直ぐな道過ぎない?」
壁の奥にあったのはただの道。しかも一本道。
おまけに最初は幅が広かったのに、ドンドン狭くなる。
まるで誘われているようで、私達は警戒する。
「うん、仕掛けは無いみたいだな」
「こんな所にあっても困るわよ」
「そうだよね。でもさっきみたいな例があるから」
実際、最初の部屋は意地悪だった。
壁にスイッチが仕掛けてあるなんて、本当に何が待っているか分からない。
もしかすると、私達はとんでもないダンジョンに来ているのでは? と今更ながら思う。
「とは言え、気になるものがあるな」
「気になるもの?」
「壁自体が古い粘土製のレンガを積んで建造されている。だが、レンガの配置に絶妙な隙間があるな。まるで規則性がない」
Nightは太陽の古代遺跡を観察していた。
その結果、少しだけ妙なことに気が付く。
狭い通路を見つめ、何故かレンガ同士に絶妙なムラがあった。
敢えて隙間が空けられているのか、規則性が取れていない。
「別に気にすることじゃないわよ」
「確かに、当時の名残だと思えば容易いな」
あくまでも設定の話をしている。
太陽の古代遺跡は相当昔に建造された。
この世界の歴史だと、隠された建造物として、歴史の陰に隠れている。
何となくそんな設定が浮かび上がった。
「だが、レンガの表面が気になるな」
「表面? ちょっとキラキラしてる?」
「コーティングされて、鏡面反射を出しているな」
鏡面反射が何かは分からない。
けれどコーティングされていて、鏡の様に光っている。
キラキラ輝いていて、とても綺麗だった。
「とは言え、コレがなんの意味をなしているのかはもう少し情報が……」
「欲しいよね」
「そうだな。そのためにも、早くこの先に行く必要がある」
Nightの推測には情報が必要。
まだ充分じゃないせいか、満足のいく答えに辿り着けない。
だからこの先を見据えようとする中、Nightは口を開く。
「あっ」
「うわぁ、どうしたのNight。急に止まらないでよ」
何故かNightは視線が何かを見つけた。
ピタリと立ち止まったせいで、私は鼻先をぶつけかけた。
「なにか見えて来たぞ」
「「見えて来たって?」ってー?」
Nightは視線の先を凝視する。
私とフェルノはNightの肩口から奥を覗く。
一本道のせいで二人分しか先が見えないけど、流石に私も分かった。
「あっ、光が飽和してる?」
「そうだな。つまりこの先に広い空間がある訳だ」
「「広い空間って!?」ですか?」
光が飽和、つまり拡散していた。
光の発生源はあの水晶で、床に掘られた溝を走っている。
つまり床から放たれる光が原因なら、部屋全体を明るくするのも床から。
天井の方に光が広がっているから、間違いなくそれなりの空間があった。
「行くぞ。次の部屋だ」
「イェーイ。それじゃあ……」
「フェルノさん、走ると危ないですよ」
「分かってるってー」
雷斬はフェルノを制止させた。
ベルが代わりにフェルノの腕を掴む。
ここで走られたら危ない。バッタンキューンになっちゃうから、ナイス判断。
私達は一歩一歩、ゆっくり次の部屋に向かおうとした……が。
「よっと」
「よっとって?」
「それっ!(カチッ!)」
Nightが不可解な動きをした。
私はツッコミを入れたけど、フェルノが通った瞬間床が沈んだ。
カチッと嫌な音が響くと、スイッチが作動するみたいに感じた。
「カチッ? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私はつい叫んでしまった。
突然のことで気が動転する。
それもその筈で、壁から突然鋭い棘が突き出してきた。
グサッ! グサッ! グサッ!
何本もの黒い鉄の棘が突き出す。
狭い通路なので当然逃げ道もない。
左右から均等に放たれると、私達は喰らって……いなかった。
「ふぅ。やはり隙間はこのためにあったのか」
「感心してる場合―?」
Nightはしゃがんでいた。鉄の棘は壁から突き出ているけれど、床からは出ていない。
元々小さいのもあるけれど、Nightに限っては最小の高さに位置取る。
そのおかげで、棘を無事に回避した。
一方のフェルノはスキルを発動。種族スキル、【吸炎竜化】で棘を全部受け止める。
生身だと無理だったけど、竜の姿になったら全然違う。
硬い鱗で受け止めると、平然とした顔をする。
「本当、よくやるわね」
「そうですね。躱すのが大変でした」
ベルと雷斬はまた異次元だった。
それもその筈、二人にしかできない技を披露する。
「ふぅ。小さな竜巻を作れてよかったわ」
まずベルは言葉通り、小さな竜巻を作っていた。
風圧を利用して、棘が飛び出さないようにしている。
そのおかげもあり、目の前には棘が出ているけれど、自分の周りだけは安全だった。
「そうですね。私も瞬時に下がることが叶い、助かりました」
雷斬は電気を放っている。おまけにずっと後ろに下がっている。
棘が出た瞬間、一気に体を後ろに飛ばした。
棘の速度を超える速度で回避すると、一本も振れない位置まで戻っている。
「あはは、みんな凄いねー。ところでアキラー」
「プギュゥ」
「スライム可愛いねー」
私は喋れなかった。だからずっと心の声だった。
あくまで感想は誰にも伝わらない。
何せ【キメラハント】+【半液状化】で無理矢理躱したんだ。
「アキラ、お前のソレが一番効率がいいだろ」
「プギュゥ(効率の話じゃないよ!)」
「なに言ってるのか分からないな。まあいいか」
「(よくないよ!)」
全然よくない。本当はあまり使いたくなかった。
【幽体化】でもよかったけれど、咄嗟だったからこっちを使った。
こっちしか思いつかなかった私は、スライム状態で這う。
「とりあえず棘が消えるのを待つぞ」
「消えるのー?」
「誰かさんがスイッチを踏んだせいだからな。時間が経てば戻るだろ」
Nightはフェルノに野次を飛ばす。
こうなったのはフェルノのせい。
それは百%真実で、疑い様がない。
「フェルノ、ちゃんと周りは見なさいよ」
「はーい。次は気を付けるよー」
何だか物腰が軽い。絶対に解っていない親友に私は不満を抱く。
だけど仕方が無い。あんなの気が付かなかった。
ホッと撫でる胸もない中、私はスライムになって跳ねた。
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