◇170 羅針が示す先
この先に待ち構えているのは、面倒臭い謎?
「ダメだな」
Nightは変化が起きないので諦めた。
流石に私達も同感で、げんなり肩を落とす。
ここまでやったのにまだ足りないなんて、ヒントが少なすぎるよ。
「まだ足りないってことかな?」
「だがヒントらしき文献はもう読み問いだぞ」
Night曰く、石碑に書かれていた言葉は全て試したらしい。
いつの間にって思うけど、きっとNightが言うんだ。間違いない。
私達は落胆したまま部屋の中を回ると、溜息が聞こえた。
「はぁ。結局時間泥棒だったわね」
「そうだな」
「そうだなって、諦め早くない?」
ベルが溜息を吐息として漏らす。
それに呼応してか、Nightも諦めムードだ。
流石によくない流れ。そう思ったのか、ベル本人が訂正させる。
「なにを期待しているんだ?」
「別に期待はしてないわよ」
「足搔くのが見たいのか?」
「そうでもないわよ。ねぇ、この部屋にヒントとか他にないのかしら?」
もはや諦めているNightに密かに期待をした。
だけど期待も虚しくて、足搔く姿を見たくなった。
なんてNightは思考放棄すると、ベルは周囲を見回す。
「他にですか?」
「そうよ。あんな碑文だけでお終いって、流石に無くない?」
「それはそうかもしれませんね。知識を必要としますので」
「でしょ? ってフェルノ、なにしてるのよ!」
ベルと雷斬は石碑に書かれていた所謂碑文の内容を言及した。
確かに専門的な知識が必要そうではあった。
だけどそれが無いと絶対に解けないなんて意地悪過ぎる。
きっとなにかあるのでは? と遺跡内部を疑うと、フェルノは早速探し回る。
「うーん、なんにもないよ?」
「そんな筈ないでしょ? きっと何処かに……」
フェルノの集中力が切れた。
三十秒で終わってしまうとベルは叱る。
もっと隅々まで探すよう言い付けると、自分も探し始めた。
もちろん私達も手分けをして遺跡内部を、唯一入れた部屋の中を見回す。
「本当に無いわね」
「そうですね。ですが仕掛けが隠されていれば面白いですよね」
「うん。ダンジョンって感じがするよね」
「ここはダンジョンだがな」
それからしばらく探したけれど、なかなか見つからない。
隠してあるとすれば遺跡の中だとは思うけど、見つからないと流石に焦る。
私達はそれでも楽しんで仕掛けの在処を探るが、マジレスしてしまうNightにツッコミを入れるのはベルだった。
「もう、そんなんじゃ面白くないでしょ?」
「それはそうだが」
「はぁ。大体家の照明みたいなんだから、何処かにスイッチでも(カチッ!)」
ベルの指……いや、肘が壁を押した。
何処を押したとかは分からない。
それでも変な甲高い音が聞こえ、私達は立ち止まる。
「「「ん?」」」
「今の音は……」
明らかに何かを押したのは確実。
作動するものがあるのか、まさか罠が発動でもしたのか。
私達は警戒して周りを見回すと、突然ピカーンと水晶が点滅を始め、青白い光が眩しく放たれた。
「うわぁ!」
「ま、眩しい……」
「突然光り始めただと?」
水晶は突然光り始めた。
さっきカチッ! の音が聞こえたけれど、それに合わせたのかな?
私達は目元を覆うと、突然の眩しい光から目を守る。
「ううっ、一体なにが起きて……えっ?」
マヌケな声を私は出した。
突然床の溝に光が流れた。
如何やら水晶から放たれた光が、ウネウネロードを通って、部屋全体を明るく照らす。
もちろん、コレになんの意味があるのかは分からないけれど、その答えはすぐに導き出された。
「一体なにがどうなっているんだ」
「見てよみんな。壁の方!」
私は全員の視線を集める。
溝を通る光を追うと、そのさきには扉の対面の壁。
そこに向けて光が集まって行く。
「なにが起こるのでしょうか?」
「分からないよ。でも、なんだかいい感じがする」
私の直感が冴え渡った。
ドクンドクンと胸が強く打たれる。
意識を切り替えなくても、集まった光には意味がある筈だ。
すると突然のことだった。溝を進んだ光が壁に照射。
奥へと透過してしまうと、突然埃が舞う。
壁全体が軋み始めると、ガタガタガタガタとけたたましい騒音を立てた。
「な、なんだ!?」
「ちょっと、壁が軋んでるわよ」
「そうですね。皆さん、少し離れましょう」
「あはは、なんだかワクワクするねー」
みんなそれぞれ別角度から見守った。
Nightとベルは表情を顰め、雷斬は心配し、フェルノは楽しんでいる。
かくいう私も楽しんでいて、自然と期待する。
(なにがあるのかな? それに、なんで突然……)
私は立ち止まって考えてしまった。
そんな私の腕を雷斬が引くと、一度後ろに下がる。
安全圏、すぐさま太陽の古代遺跡から外に出られそうな位置まで下がると、壁が軋みを上げ乍らゆっくり下がって行く。
「見て、壁が下がって行くわよ」
「アレは……隠し扉かなにかか?」
「扉って言うより、隠し壁?」
「隠しては無いですが、確かにその可能性はありますね」
壁が完全に下がり終えると、対面の壁が完全に消える。
代わりにこの先へ行けるようになっていた。
目がチカチカするくらい眩しいけれど、謎は一つ解いたっぽい?
「止まった?」
「そうらしいな……にしても」
壁の軋みは止まった。ガタガタと震えていた歪な音もない。
私達は一応無事で、少しだけ足を前に出す。
目の前にあった壁が消え、代わりに先へ行くための道が切り開かれる。
「まさかとは思うが、壁にスイッチが隠されていたのか?」
「そうっぽいわね」
「ぽいって……でもよかったね。謎が解けて」
如何やら壁にスイッチが隠してあったらしい。
何だか私達のギルドホームと仕組みが同じだ。
本当はツッコむ所なんだろうけど、二回目はちょっとね。
淡白になってしまった私達は、家電みたいなシステムにクスッと笑った。
「まあそんなことはさておき……」
Nightが空気を切り替える。
シンとした茶化す空気が変わり、私は壁の奥を見つめた。
突然軋み始めた時はビックリしたけど、まだビックリは止まらない。
「ねぇ、壁の奥が光ってるよ?」
「うんうん。光ってるねー」
視界の先が眩しい。白亜色に輝いている。
その原因は床に彫られた溝を光が通っているせい。
如何やら羅針の効果で、そのおかげか壁の奥が光り出した。
「全然見えないけど、大丈夫かしら?」
「分かりませんが。少なくとも羅針はこの先を示しているようですね」
ベルと雷斬の言う通り、視界の先は全く見えない。
壁の奥が光り過ぎていて、目を凝らすこともできない。
額に皺を寄せてしまうも、羅針がこの先を示しているのは確かだ。
「どうするの、Night?」
「決まっているだろ。行くしか道はない」
「だよね」
私は一応Nightに訊ねる。決めるのは多分私だけど思うけど、Nightは周囲を確認。
チラチラZを描いて視線を動かすと、「ふん」と鼻息を上げる。
答えはもう決まっている。否、こたなんて存在しない。やることは一つだ。
私達は確認だけでもと思って、壁の奥へと進むことを選んだ。
「よし、行くぞ」
Nightは先を進む。警戒しても仕方が無い。
きっと全て見えているに決まっている。
私達もNightの背中を追い掛ける。
「待ってよ、Night」
私達も開いた壁の向こうへ向かった。
眩い輝きによって、先は全く見えない。
それでもこの先に新しい謎が待っていると期待して、私達は進んだ。
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