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【リメイク版】VRMMOのキメラさん〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!?  作者: 水定ゆう
1ー2:幽幻の居城の冒険

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◇17 ソウラの贈り物

ついに、ついに、ついに!

 私が店内に入ると、そこはまるでバーだった。

 正直、頭の中にしかないイメージだけど、バーカウンターがドンと設置されている。

 それ以外にはテーブルは一切無く、あるのは木の棚と乱雑に置かれた木の箱だけ。

 中には色々入っているようだけど、勝手に触ると怒られそうなので、絶対に触らないことにした。


「ここがDeep Sky? ソウラさんは……」

「あっ、アキラ。よく来てくれたわね、待っていたわよ」

「ソウラさん! って、バーカウンターの向こうにいる!?」


 キョロキョロ周囲を見回した。

 挙動不審な態度だったせいか、声を掛けられてしまった。


 ふと視線を声の方に向ける。そこには案の定、ソウラさんの姿があった。

 自分のアバターと同じ瞳と髪色をした青いエプロンを着けている。

 如何もこのお店の定員さんみたいで、私は呆気に取られた。


「あの、もしかしてここってソウラさんのお店ですか?」

「もしかしなくてもそうよ。でも一つ違うのは、私達のってことね」

「私達?」


 もしかして他にも誰か居るのかな?

 私は見えない人影を見つけ出そうと周囲を見返す。

 けれどそこには誰も居ない。ましてや私の態度がおかしかったのか、ソウラさんは笑っていた。


「今はここには(・・・・)いないわよ(・・・・・)。それより、アキラ。ここに来てくれたってことは、灰色の爪が手に入ったのよね?」

「は、はい! 一つだけですけど」

「充分よ。 あっ、品質がかなり良いわね」


 私はインベントリの中から灰色の爪を取り出す。

 ソウラさんに手渡すと、ソウラさんは目を見開く。

 如何やら灰色の爪の品質? 分からないけど、良かったらしい。

 私はホッと胸を撫で下ろすと、ソウラさんは口走った。


「よく手に入ったわね。大変だったでしょ?」

「は、はい。蹴られました」

「蹴られたの!? それは大変だったわね。どれくらいの数倒したの?」

「一匹です」

「……ん?」

「一匹です。強かったんですけど、タイミングが上手く合って倒せました」


 本当にあれは紙一重だった。

 【キメラハント】で【甲蟲】が手に入っていなかったらと思うと、心底ゾッとする。

 思い出すだけで、後頭部が痒くなると、私はついつい頭の後ろに手を伸ばしていた。


「たった一匹? 運がいいのね」

「えっ、私の“運”のパラメータ、そんなに高くないですよ?」

「それじゃあリアルラックなのね。驚いたわ。灰色の爪はグレーウルフの落とすドロップアイテムの中でも、レアの部類だから、連戦必至なのに。やっぱりアキラに頼んで正解だったわ。これは私も、アレを出すしかないわね」


 何だか私、凄いことしちゃったみたいな雰囲気が漂っていた。

 正直、CU初心者の私には、全くそんな感じはしない。

 灰色の爪なんてアイテム何に使うのか。それこそ落ちてくれたのが凄いのか。そのレベルで定かじゃなかった。


「まあいっか……ってソウラさん?」


 ふと外していた視線を戻すと、何やらソウラさんはカウンターの更に奥に消える。

 聞き逃していなかった“アレ”でも取りに行くのかな。

 お酒は飲めないから要らないんだよね。私は未成年だからバーと縁が無い。

 もしも飲めもしないお酒を渡されたら困っちゃうので、警戒していたけれど、戻って来たソウラさんの手には酒瓶は無かった。


「本当は贈りたくないんだけどね」

「本人目の前にしてそれ言っちゃいますか!?」

「それだけ貴重なものなのよ。でもアキラにならピッタリだと思うからいいわ」


 何言ってるんだろう、この人。

 私はソウラさんの話が読めなかったのでポカンとすると、両手で大事そうに抱えている物の正体に気が付いた。


「服ですか? はっ!」


 私はインベントリの中からジャケットを取り出す。

 ソウラさんに借りていたもので、返しそびれる前に返しておく。

 丁寧に畳んで返却しようとすると、まずはソウラさんから話し出してしまった。


「はいこれ。アキラに似合うと思うわよ」

「えっと、その前にこのジャケット返さないと」

「そのジャケットもかなり良い物だけど、この服の方が凄いわよ」

「そんなこと言われても……私にはどっちも大切で……それにその服のこともよく知らない……桜の刺繍?」


 ソウラさんが持っていた服は上下のセットだった。

 完全にコーディネートが決まっていて、そこに別の服を挟む隙間は無い。

 これを着ろと言っているようで、私はゴクリと喉を鳴らす。

 白の上に桜の刺繍や薄桜色のラインが取られている。完全にフワフワ系の服で、私に似合う気がしなかった。


「ええ、そうよ。この服はね、プレイヤーが仕立てたもので、〈朝桜シリーズ〉って呼ばれているの。とっても貴重な代物で、この世界に二つと無いのよ」

「えっ、そんなもの尚更貰えませんよ!」


 私は断固として受け取りを拒否する。

 そんな貴重な物、物の価値が何も分かっていない私が持っていても意味が無い。

 コレクターがコレクションするのが普通だけと思うけど、その反面、服は着ないと服じゃない気がしてしまう。


「貰う? 違うわよ、これは贈るの」

「贈る?」

「灰色の爪を採って来てくれた報酬ってことよ。それなら後ろめたさは無いでしょ?」

「そう言われても、価値が……」

「アキラ、物の価値は人それぞれなのよ。それに贈り辛いのなら、そのジャケットと交換でもいいわ。ほら、クーリングオフみたいなものよ」

「……全然違うと思います」

「ええ、そうよ。全然違うわ。でも分かりやすいでしょ?」


 ソウラさんは何故だか如何してもその服を私に着て欲しいらしい。

 正直、似合わないと思う。だけど来てみたくはある。

 私は色んな感情に板挟みにされちゃったけど、流石に断る訳にもいかなかった。


「分かりました。ソウラさん、ありがとうございます」

「こちらこそよ。またお願いするわね」

「ま、またですか?」

「ええ。それが繋がりよ。アキラのリアルラックはパラメータでも反映されないみたいだから、私としては心強いわ。是非、お願いするわね」


 もの凄く嫌な予感がしてしまった。まるで“呪い”のように私の心を縛り付ける。

 表情が歪み、笑顔を浮かべられなくなると、受け取った服の重さを感じる。

 こう近くで見ると可愛い。特にこのピンクと桜の刺繍の細かさが凄い。

 そう楽観的になるのと同時に、ソウラさんの圧に押し負けてしまった自分が居た。これからも面倒事が増えそうで、身が引き締まる想いだよ。


「早速着てみる?」

「今ここでですか!?」

「今ここでよ。私、その服を着ているアキラが見てみたいわ。是非、後学の参考にさせて」

「……あ、あの、外しかしいので、あまり見ないでください」

「分かったわ。それじゃあ着替え終わるまで、後ろを向いておくわね」


 ソウラは踵を返して、背中を向ける。

 振り返った後も凛としていて、背筋がピンと伸びている。


 対して私は服を着ないといけなくなった。

 私は好感して貰った服を着てみると、あまりの着心地の良さとフィット感に驚いてしまう。


「そ、ソウラさん、この服凄いです!」

「どう凄いの?」

「えっと、その……分かんないです!」


 私が着てみた服はとにかく凄かった。

 肌触りが良くて、全然蒸れたりしない。

 余裕がしっかりと取れているのに、スタイルが見事に引き締まる。

 本当にこの服、カジュアル向けなの? フォーマル向けじゃないのかなと錯覚してしまう程だった。


「全体像を見るとなかなかね。アキラ、その服には防炎・防水・防電耐性と防御力強化に加えて、ステータス向上の効果と耐久率強化が付与されているみたいよ」

「な、なんですか、その盛り過ぎ設定!?」

「そうね。実際盛り過ぎよね。でも、やっぱり似合うわ」


 ソウラさんの目がうっとりしていた。

 それだけ私に似合っているのかな? 正直自分ではよく分からない。


 白の下地シャツの上に桜の刺繍が施されたジャケットを着ている。

 ショートパンツの上に、ハーフスカートを履いていた。

 しかも前が開けるようになっていて、ヒラヒラと桜の花びらの様に舞う。

 おまけに脚元はスニーカーみたいだけど、そうじゃない謎の靴。なのにとっても歩きやすくて、私は驚愕の連続だった。


「凄い、なんだか凄い。それだけは分かる」


 私はクルクルと回転してみた。

 一切はだけることが無い。それだけじゃなくて全然疲れない。

 きっと私のステータスは飛躍的に上がってる筈。なんだか成り行きで良い装備品を手に入れたなと思い、私は満足していた。


——新しいアイテムを獲得しました——

——〈朝桜シリーズ〉一式を獲得しました——

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― 新着の感想 ―
早速着てみる?」 「今ここでですか!?」 「今ここでよ。私、その服を着ているアキラが見てみたいわ。是非、後学の参考にさせて」 「……あ、あの、外しかしいので、あまり見ないでください」 「分かったわ。そ…
[一言] 桜撮ってた女の人が作ってそうやな
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