◇164 VS森カラス
このカラス、もっと出番増やしてもいいな。
私達は林の中を突き進んだ。
今の所、襲われるようなことは無い。
だけどNightもベルも怪しんでいる。やっぱりこの林には何かあるらしい。
「ねぇねぇ、モンスターが襲って来ないよー」
「そうだな」
「そうだなってー。ねぇねぇアキラー」
「私に言わないでよ。戦わない方がいいでしょ?」
フェルノはつまらなそうだった。
だけど私は戦わずに済んでよかったと思う。
ここまで無事にこれただけ幸いで、ザッと三十分は歩き続けていた。
「むぅーん。つまんないのーだ」
「つまらなくはないと思いますが」
「雷斬もたたかいたいでしょー」
「いえ、私は……皆さん、止まってください」
突然雷斬が差し止めた。
私達はピタリと足を止める。
一体何? 挙動不審な態度を取る。
「どうしたの、雷斬?」
「雷斬、気が付いたのね」
「はい。この森の違和感にようやく気が付きました」
雷斬とベルは情報を共有する。
もちろん私とフェルノは末端さえ掴めない。
一体何? 何度もそればかりが浮かんだ。
「二人共、なにかあったの?」
「アキラ、お前なら気が付ける筈だ」
「気が付ける筈って、私を買い被らないでよ……ん?」
Nightにも促される。何の話だろうと模索する。
ポカンとしてしまい、冷静な思考を持つ。
すると嫌な気配が感じられた。ずっと見つめられている気がする。
「あれー、チクチクするねー」
「うん。コレって視線だよね?」
「そうだな。あそこか!」
Nightは自動拳銃を撃った。
ぶっ放した先は、まさかの木の上。
何か居る。いや、居て当然だ。ここは林の中で、隠れられる場所は無限大だ。
「カァー!」
Nightが撃った先で何かが飛び立つ。
真っ黒で影の様。上手く木の葉を纏って身を隠そうとする。
しかしこっちにはベルも居る。タダで逃がす筈がない。
「逃がす訳ないでしょ!」
有言実行。弓を構えて素早く射る。
パシュン! と空気を貫くと、矢が一直線に襲う。
葉っぱの中を掠めると、一羽の鳥が姿を現わす。如何見てもカラスだ。
「か、カラス!?」
「タダのカラスじゃないぞ。アレはフォレストクロウだ」
Nightの知識が炸裂。知らない情報を教えてくれる。
如何やらあのカラスの名前はフォレストクロウらしい。
ここは森じゃなくて林なツッコミはさておき、暴れる様に飛ぶカラスは敵じゃない。
「あのカラス、弱そうだねー」
「甘く見るなよ。フォレストクロウはこの林の目だ」
「「目?」」
明らかに不気味な言葉だ。
私達は瞬きをすると、フェルノと一緒に固まる。
フォレストクロウの動きを見ると、Nightとベルに煽られている。
バン! パシュン! 弾と矢が空を切る。
このまま落としてくれればいいのに。
そう思ったけれど、何故かフォレストクロウには当たらない。
「ちょっと、なんで当たらないのよ!」
「キレるなベル」
「キレてないわよ」
「だろうな」
ベルのことを完全に手玉に取るNight。
遊んでしまうと、本気でキレそうになる。
けれどNightは気が付いている。私達は既にフォレストクロウの支配域の中に居た。
「もしかして、私達は見られてる?」
「そうだな。どうやら一羽じゃないらしい」
単純な話だ。フォレストクロウは一羽ではない。
そもそもカラスは自然と群れ成す。
仮に群れじゃないとして、フォレストクロウは一羽だけ潜んでいる訳ないのだ。
「ええ、まさかさー。他にもいるってこと?」
「だろうな。だから当たらない」
Nightは拳銃をホルスターに納める。
このままやっても当たることは無い。
何故なら“見られている”。つまり、攻撃はいくらやっても当たらない。
「他のフォレストクロウを探すぞ」
「そんなの見つかる?」
「見つけないと、ベルはともかく、私の攻撃は当たらない」
Nightは近接戦で自分が役に立たないことを知っている。
ベルはともかくと言うように、ベルなら何とかなる。
フォレストクロウを倒す方法。無茶だけど、近接戦しかないらしい。
「近接ってこと?」
「そう言う訳でもない。とにかく、視野の共有先を探すんだ」
「視野の共有先って……」
そんなもの言われても仕方が無い。私に解る筈もない、
何せ四方八方は隠れられそうな木が並んでいる。
何処から見られていても不思議ではない。
だけど一つだけ気掛かりもあった。
フォレストクロウが得られる視野は幾つなのか。
仮に一つだけだとして、こんな無防備な私達を見ているとする。
「それじゃあ、前のフォレストクロウの視野を補うってことかな?」
「補うか……それならば」
Nightは私の雑言を聞き逃さない。
何故か思考に組み込まれてしまうと、私は止めようとする。
だけどそれよりも速く、Nightは答えを導き出した。
「アキラ、後ろだ!」
「後ろ?」
突然Nightは叫んだ。
咄嗟に振り返った私は、木の上に居る黒い影が気になる。
フォレストクロウがこちらを見ている。
私達は監視されていた。そう、フォレストクロウの目は一つではない。
最初からフォレストクロウは見ていた。
一羽では補いきれなくても複数で。
フォレストクロウには、視界を共有して視野を広げる能力が備わっているらしい。
「って、そんなの有り!?」
「有りも無しもない。とっとと叩くぞ」
「叩くって、私じゃ……」
木の上に陣取るフォレストクロウ。流石に私じゃ届かない。
如何しようと悩む中、突然真っ赤な炎がフォレストクロウを強襲した。
「おりゃぁ!」
「ふぇ、フェルノ!?」
かち上げるように腕を突き上げる。
いつの間にか【吸炎竜化】を発動させると、真っ赤な炎を味方に付けた。
勢いそのまま地面を蹴ると、木の幹を踏み台にして、フォレストクロウを襲う。
拳が届かなくても、強烈な熱がフォレストクロウの動きを鈍らせた。
「えへへ、やっとモンスターに出遭えたもんねー。戦うぞ!」
単純にフェルノは遊んでいた。
フォレストクロウはそれどころではなく、非常にテンパってた。
羽をバサバサさせ、急いで逃げようとするけれど、炎が羽に引火して、体が勝手に燃える。
「カァーカァーカァーカァー!」
完全に飛び方を忘れていた。
体を木の幹に叩きつけながら、不安定な飛び方を披露。
それに釣られるように、ベルが相手をするフォレストクロウも様子がおかしくなる。
「カカァー? カッ! カァー!」
視界を共有しているせいで、同じ景色が否応なく見せられる、
二つの異なる景色に酔ってしまったらしい。
不安定な飛び方にこっちもなると、ベルの格好の的だ。
「なによ、こんなの射抜いてくださいって、言ってるようなものじゃない」
「そうだな。撃ち抜くか」
Nightもベルも容赦はしない。この隙を狙うと、拳銃と弓を構えた。
堂々と弾丸を矢を放つ。どちらもフォレストクロウを捉える。
バン! とパシュン! が同時に響くと、二羽のフォレストクロウは地面に落ちた。
「倒せたのかな?」
「そうだな。とりあえず、これで視線は無くなるだろう」
フォレストクロウを同時に倒した。
得体のしれない視線は感じられなくなると、とりあえず監視は無くなる。
私達は一応フォレストクロウ二羽分の脅威を退けた。
「えー、もうお終い?」
「お終いとはいかないだろ。急ぐぞ、これ以上フォレストクロウの視野に巻き込まれても面倒だ」
「そうですね。次は仕掛けてくるかもしれません」
今まではフォレストクロウが消極的だった。
だけどフォレストクロウを見つけて倒した私達が次は標的かもしれない。
急いでこの場を離れると、古代遺跡へ向かった。
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