◇160 謎の歯車
結局コレなんですよ。
リメイク前の展開より加速させないとヤバいかも。
「結局、なにもして来ないね」
「そうだな」
タンクライノスが落とし穴に落ちてしばらく。
一応警戒しつつも、十分は既に経っている。
もしかすると私達が近付いて来るのを待っているのかもしれない。
近付いて来た所にドカンと一発。
なんて嫌なことを考えてしまうけど、流石に確認もしないのはダメだよね?
「もう大丈夫かな?」
「私は問題無いと思いますよ」
「私もだ。さて、見に行ってみるか」
重たい腰を上げ、Nightは先頭を切る。
私達もその後を続くと、やはり警戒する。
砲弾が花火みたいに撃ち込まれたら如何しよう。
そんな想像をする中、落とし穴を覗き込んだNightは「なるほどな」と呟く。
「どうしたの、Night。なにかあったの?」
「見てみろ」
「見てみろって……あれ?」
Nightに言われて落とし穴の中を覗き込む。
段差を利用して覗き込んでみると、目を見開く。
瞼を押し上げるのも当然で、何にもなかった。
「いませんね、タンクライノス」
「そうね、姿が消えた?」
「ってことは倒したってことだー。あれ? でも、経験値が入ってないよ?」
落とし穴の中にはタンクライノスの姿が無かった。
残骸の一つも無いから完全に消失している。
つまりは私達が倒したってこと。だけど経験値は入ってないから如何してだろう?
「当り前だ。別に私達は戦った訳じゃない」
「「「あっ!」」」
「あくまでもタンクライノスと追いかけっこをしていただけだ」
確かに私達は戦っていなかった。
確かにベルや雷斬は多少戦った……って言うか小細工を使ったかもしれない。
だけど直接的に戦った訳じゃないから、誰にも経験値らしきものが入っていなかった。
「ってことは、意味ないってこと?」
「そうだな」
「そんなー」
もう落胆するしかない。
私は声を上げてしまうと、そんなに疲れてないけど、ペタンと座る。
Nightも不満があるのか、ムッとした顔をしていて、膝が震えていた。
「はっ、結局成果はタンクライノスを討伐しただけか」
「そうね。まあ、それが依頼だったんでしょ?」
「結果オーライだねー」
「うん。でも、なにか……」
私はふと段差から下の落とし穴を見つめた。
するとピカンと何かが光る。
私の勘違いかな? 小さな光だけど、私は目を擦る。
「どうしたんだ?」
「今、なにか光ったような気がして」
「光った?」
「勘違いじゃないの?」
「そうだと思うんだけど……Night?」
私の勘違いかもしれない。
だけどちょっとだけ気になる。
そんな私の顔を見たのか、Nightは無言でインベントリを開く。
「下りてみるか?」
「えっ!?」
「ここまで来たんだ。物は試し、できることは全部やるぞ」
そう言うと、縄梯子を取り出したNight。
落とし穴の中に梯子を下ろすと、安全を確認してから下りる。
成果が出なくて腹立たしいのか、もはや自棄に見える。
そんなNightを放ってはおけず、全員巻き込まれる形で手伝う。
「どうだ、そっちにあるか?」
「うーん、こっちじゃないかなー?」
「こちらもですね」
「ダメね。さっきの光、なんだったのかしら?」
みんなで落とし穴の中に入った。
縄梯子を使って安全に辿り着く。
それから光っていたものの正体を見つけようと必死になる。
だけどなかなか見つからない。
私以外は全員空振り。
これじゃあ私も見つからない。木のせいかと思った矢先だった。
「あっ、あったよ!」
私は何か落ちている物を見つけた。
陽の光に触れると、キラリ光る。
拾い上げると、私の声に気が付いてみんな寄る。
私達は揃いも揃って拾ったものを見つめた。
「コレは歯車か?」
「歯車……なんで?」
「そんなこと、私に訊かれても知るか」
「だよね、ごめんなさい」
私達が見つけたのは歯車が一つ。
タンクライノスの残骸にしてはあまりにも綺麗。
コレだけ取り残されるのも不自然な話で、納得もできない。
私は首を捻ってしまう。
「どうしてこの歯車だけが残されていたのでしょうか?」
「分からないな」
「分からないって、Nightは天才でしょ? 心当たりとかないの?」
「ある訳がないだろ」
雷斬とベルの質問を軽くあしらう。
Nightは決してなんでも解ける訳じゃない。
そのせいか、今回は全く浮かんで来ない。
「それじゃあどうするのー?」
「仕方ないな。どうするもなにも、答えは決まっている」
「決まってるー?」
「適任者の元に向かう。情報を貰いに行くぞ、それくらいの権利はある筈だ」
Nightの顔が決まっていた。
如何やら情報をくれそうな所を知っているらしい。
腕利きの情報屋かな? 私はそんな期待をするが、もっと身近なことに勘付いていた。
「ってことなんですけど」
「と、言われましても……」
私は歯車を持ち帰り、タンクライノス討伐を報告。
無事に討伐して危険は無くなり、ギルドpも貰えたからお互いにwin-win。
けれどここからが大変だった。
「あの、その……」
ミーNaさんは困ってしまった。
私達は謎の歯車の形をしたアイテムを手に入れた。
それをミーNaさんに見て貰うことにしたけれど、ポカンとした顔をする。
「なにか知らないか?」
「そう言われましても、私のも心当たりがまるで無くてですね」
ミーNaさんは本気で困っていた。
何せまるでピンと来ていない。
謎のアイテムを渡されても、頭の中の知識でも、今ギルド会館に集まった情報でも足りないらしい。
つまりこの歯車が何の目的で作られた何かさえ分かってない。
もしかしたらタンクライノスのただの残骸。
そうとしか考えられないので、私は手詰まりになる。
「その模様はどうだ?」
「模様ですか?」
「そんなのあったっけー?」
「あっただろ。見てないのか?」
そんなの私も知らない。
フェルノが標的にされてよかった。
私なら何も言い返せなかったと、冷汗を掻いてしまう。
だけど歯車に模様なんて何かある筈。
一体どんな模様だっけ?
一番見ている筈なのに、全く記憶にない。
「本当ですね。この太陽の模様は一体?」
「太陽?」
「意味は無いのか?」
「まだ情報が無いので」
ミーNaさんは適切な返しをする。
ちょっとイラっとするけど認めるしかない。
情報の一つもない以上、もはや謎としか解決できない。
「分からない」
「そうだな。恐らくは歯車を使う機会のある場所が何処かにある筈だ」
「何処かにって、漠然としているのね?」
確かにいつのもNightらしくは無かった。
Nightならもっと賢く解決する筈だ。
だけど情報が一切無いせい、それとも隠蔽されているとか?
色んな憶測を飛び交わせると、余計に分からなくなった。
「私なら手近な所に遺跡かなにかを配置するが、そんな情報は無いのか?」
「残念ながら、ありませんね」
「無いのか……残念だ」
完全に手詰まり。一回休み。
これ以上は間が持たない。
おまけにミーNaさんは忙しいから、拘束もできない。
「一回で直そうよ、Night」
「そうだな。それしかないか」
結局は諦めることも大事だ。
特に今回はこれでお終い。
多分時間経過で何かヒントを貰える系かもしれない。
「あの、歯車は一度お返ししますね」
「うん。ありがとう。できればなにか分かったら……」
「はい。真っ先に情報をお伝えしますね」
一度歯車は返してもらう。
私はインベントリに仕舞うと、ミーNaさんに情報提供を頼んだ。
とりあえず職権乱用にはならない程度に抑えると、私達は一度ギルド会館を後にする。
結局はタンクライノスを倒しただけ。
もちろんまともに倒した訳じゃない。
万事解決……とまではいかない中、私達は不完燃焼でギルド会館を立ち去った。
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