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◇159 落とし穴までまっしぐら?

シンプルなオチ。だけどヤバいことしたって自覚、多分アキラにはあるはず。

 私とNightはとにかく走った。

 タンクライノスが砲身を使って、砲弾を撃って来ないだけマシ。

 そう思ってしまうほど幸運な中、Nightは倒れてしまいそうになる。


「はぁはぁ……もう、ダメ、か」

「ちょっと待ってよ、Night。うわぁ!?」


 Nightが倒れそうになる。

 私は引っ張られてしまうと、転んでしまいそうになる。


「って、私は転ばない!」


 私は体幹を使って何とか耐える。

 そのままNightを引き寄せると、頑張って走る。

 もうフラフラなNightを私は無理して走らせるも、限界を迎えていた。


「ああ……もう、ダメ、だ」

「ダメって、ううっ」


 確かにこれだと無理が出る。

 私もめげそうになる中、ふと腕が軽くなる。

 一体何故? そんなの助けが入ったからに決まっている。


「アーキラ。私が代わるね」

「えっ? フェルノ?」


 愉快な笑い声が聞こえた。

 隣を見ればフェルノの姿がある。

 いつの間にNightを引き寄せると、そのまま抱き抱えて走っていた。


「どうしてここに?」

「爆発音が聞こえたから来ちゃったんだー。でさ、逃げればいいんだよね?」


 確かにあの爆発は目立つ。

 それに釣られるのも分かるけど、水から棄権に飛び込むなんて……

 実にフェルノらしい判断で、私は助かった。


「うん。落とし穴まで行ける?」

「落とし穴までかー」

「頼むぞ、フェルノ。お前が頼りだ」

「あはは、抱えられてるNightが言っても……」


 まるで説得力がない。欠片も無い。

 何せ抱きかかえられている姿が余りにも情けない。

 だからまるで響かなかったが、フェルノは走ることを、この危機感を楽しむ。


「まあ、行くしかないもんねー。GO!」


 フェルノはNightを抱えながらなのにもの凄く速かった。

 逆に私が置いて行かれそうになる。

 これは困るかも。ちょっとだけスピードを上げた。


「待ってよ、フェルノ」

「速いねー、流石はアキラー」

「お前、どれだけ力を隠していたんだ」

「隠してなんか無いよ」


 別に私は凄くなんかない。

 今はただ走ってフェルノに追いついただけ。

 それ以上じゃないから、私は精一杯だった。


「でも、これでも追って来るんだよね?」

「だろうな」


 タンクライノスはしぶとい。

 私達がいくら走って逃げても大したことは無い。

 タンクライノスの馬力にすぐ追い付かれる。


「もう、後ちょっとなのにー」

「仕方が無いだろ。今できることは……ん!?」


 確かに後五十メートル程。

 それがやけに遠く感じてしまう。

 そんな中、タンクライノスが牙を剥く。

 飾りの様だった砲身を、私達に向けた。

 

「マズい。今砲身を向けられれば……」

「撃ってくるってこと!?」


 なんでこのタイミングなの? 絶対に今じゃない。

 パニくる私だけど、砲身を向けられて怖い。

 何時砲弾を撃たれるか分からず、足が竦んでしまいそうになった。


 このまま止まってしまう? ダメ、そんなことしたら追い付かれる。

 撃たれる前にペチャンコだ。

 そんな風に考えてしまうも、急に“風”が背中を押す。


「凄い、体が軽い」

「抵抗が無くなった? 何故だ?」

「それは私にも分からないけど」

「とにかくいいじゃんかー。もっと速く走れそー」


 フェルノは楽観的だった。

 だけど今は丁度良い。

 体が気持ち良くて、私達は走る。

 一方でタンクライノスは苦戦する。


「なんか、タンクライノスの動きが悪くない?」

「そうだな。抵抗を受けているのか?」

「「抵抗?」」


 一体何の抵抗だろう?

 もしかして私達と同じで“風”かな?

 それならこんなことができるの、一人しかいない。

 私達は助かると、ニヤッと笑みを浮かべる。


「ベルだよ、きっとベル」

「だろうな。このまま駆け抜けるぞ」

「OK。ベル、ありがとねー」


 私とフェルノは走った。

 すると流石は荒野だ。

 地面が凸凹していて、段差が目の前に立ちはだかる。

 もちろん小さいから全然躱せる。


「気を付けてフェルノ、そこ段差あるから」

「OK」


 私とフェルノは地面の段差をヒョイと避けた。

 体が軽いおかげか全然苦じゃない。

 だけどタンクライスは苦しそうで、無理やり前進した。


「よし、見えたぞ。このまま左右に分かれて攪乱……」


 Nightが指示を出した。

 確かに急に方向転換したらタンクライスも付いて来れない。

 そんな期待を胸に躱そうとするが、それよりも速く、雷が空気を裂く。


 パシュン!


 何かが飛んで来た。

 私達の真後ろ、如何やらタンクライノスらしい。

 一体何? 気になってチラリ振り返ると、キャタピラが破損して、機動力を削がれていた。


「あれ、タンクライノスが!?」

「うっそ」


 嘘じゃない。キャタピラに何か突き刺さっている。

 そのせいで上手く回転できない。

 何故かウィリー状態になってしまうと、そのまま段差にぶつかった。

 キャタピラがちょっとした段差に嵌ってしまうと、そのまま私達に向かって、宙に向かって身を投げ出す。


 バッコーーーーー------ン!


 とてつもないことが起こった。

 信じられないことが目の前、否、真上に起こる。

 タンクライノスが回転しながら空を飛んだんだ。


「ええっ!?」

「なにが起こってるのー?」


 私もフェルノもタジタジだ。

 全く理解ができない。

 ただ直前にキャタピラが破損して、ちょっとした岩の段差に躓いたのは多分関係がある筈だ。


「どうなってるの、これ?」

「私に訊かれても分からないな。少なくとも、気流が渦を成して……まさかな」


 Nightは勘付いていた。

 けれど俄かには信じがたかった。

 けれど間違いなくタンクライノスは空を飛び、クルクル回転しながら落下する。

 所詮は五メートルくらい。だけど巨体なタンクライノスが地面に真っ逆さまに堕ちるとなると、威力は桁違いだ。


「ラガラガラガラガァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 悲鳴にも聞こえる断末魔が上がった。

 頭を下にしてタンクライノスは落っこちる。

 その先に待っていたのは段差。私達が掘った落とし穴が待っている。


「嘘でしょ、そんな偶然」

「偶然ではありませんよ」


 突然聞こえて来た声。

 ふと振り返るとベルと雷斬の姿がある。

 だけど何故かベルは顔の仮面を付けていて、その手には弓が握られていた。


「べ、ベルだよね?」

「はい、そうですよ」

「どうしたの、その仮面とその口調」


 私は如何しても気になって訊ねる。

 するとベルは弓を仕舞い、仮面を外す。

 空気が変わり、雰囲気や言葉遣いがいつもに戻る。


「ふぅ。全く、調子狂うこと言わないでよ」

「あっ、いつものベルに戻った」

「うっ……本当、調子が崩れるわね」


 ベルは何故か溜息を漏らした。

 だけど嬉しそうに笑みを浮かべている。

 矛盾しているけど、それでいいんだよね?


「それでベル、雷斬、二人してなにやったんだ?」


 Nightがベルと雷斬に訊ねた。

 するとベルは腰に手を当て、鼻を高くする。


「ふふん、決まっているでしょ? 私が浮かせたのよ」

「浮かせた?」

「正確には私の種族スキル、【雷鳴】を使い、ベルの【風招き】に合わせたんです」

「そのおかげで、気流がちょっとした旋風を起こして、タンクライノスを吹き飛ばしたのよ」


 とんでもないファンタジーだった。

 ベルの種族スキル、【風招き】を使った。

 風を呼び寄せることで、私達の体に空気の抵抗が無いようにして、逆にタンクライノスには重く与えた。そのおかげで同速じゃなくなった。


 おまけに気流を二人の力で乱した。

 旋風が下から巻き上げて、タンクライノスを吹き飛ばす。

 段差に躓いたのが運の尽きで、そのままタンクライノスは吹き飛ばされたんだ。


 ちょっとファンタジー。だけどちょっとサイエンス。

 どっちも上手く混ざっている。

 面白い。面白いんだけど、空気が悪い?


「それと雷斬。ほとんど自分の手柄みたいにしないでよ」

「そんなことはありませんよ。私はただ、気流を乱しただけです」

「キャタピラを壊した癖に……」


 確かに動きを鈍らせたのはベルの功績。

 だけどキャタピラを根本で破壊したのは雷斬。

 どっちの活躍でもあるんだけど、ベルは不満を持っていた。

 だけど雷斬は大人な対応をする。


「それは結果的に上手く行っただけですよ、ベル」

「ふん。気に入らない……とか言えないわよね。はぁ、どうNight。これで納得した?」

「一応はな」


 私は全然納得できない。

 そんな異次元なことができるなんておかしい。

 普通に考えればそうなんだけど、フェルノはそんなこと全く気にしなかった。


「あはは、面白いねー」

「面白いで済ませちゃうんだ」

「だって本当でしょー?」

「そうかも……ね」


 とりあえず今は危機が去ったことだけ考えればいい。

 落とし穴に落ちたタンクライノスは、キャタピラも壊されて上がって来れない。

 ましてや砲身の向きも下。砲弾も撃てないんじゃ、打つ手は無しだった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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